リオン、二度目の学園生活へ
リオンは、椅子に深く腰掛けながらエドモンドの執務室でため息をついた。
机の上には、入学手続きの書類が無造作に積まれている。
エドモンドは腕を組み、リオンの表情を見て苦笑した。
「で?どうだった?」
リオンは肩をすくめ、昨日の出来事を思い出しながら答えた。
「ああ、お前の言っていた事がよーく分かったよ」
一晩経って、ようやくハルトの言動の意味を整理できたが、その内容はどうしようもないほど浅はかだった。
リオンは再びため息をつく。
「確かに、政治的な野心はないんだろうな。ただ、別の欲望にまみれていたぞ」
エドモンドは眉をひそめる。「別の欲望?」
「要するに、女神からもらったギフトで活躍して、皆からチヤホヤされて、女にもてたい。そんな感じだ」
エドモンドは拳を握りしめると、勢いよく机を叩いた。
「あの、クソ女神〜!ただ、条件が当てはまればいいってもんじゃないだろ!」
リオンは冷静に腕を組みながら、「お前が怒るのも分かるが、女神がまともな選定基準を持っているとでも?」と淡々と言った。
「ぐぬぬ……」エドモンドは歯ぎしりしながら天を仰ぐ。
「まあ、戦場に出る気があるだけ、最近の召喚者よりはマシ……なのか?」とリオンはぼそっと呟く。
エドモンドは「戦場に出るのはいいが、あいつは戦場を舞台にした英雄ごっこをやりたいだけだろう」と毒づいた。
リオンも同意せざるを得なかった。
「確かに。自分の強さを誇示して、モテることしか考えてない。まだ何も成し遂げてないのに、もすでに自分が英雄か何かだと思ってる節があるな」
「実際、ギフトの内容だけ見れば強力なものなのだが……」エドモンドは書類をめくりながらぼやいた。
「それなんだけどな、ハルトはこのギフトがそういう物かちゃんと理解できているのか?」
「わからん。ただ、ギフトの詳細は女神からちゃんと説明はしているはずだぞ」
「まあ、そうなんだろうが……」
ただ、実際にハルトと出会って感じたリオンの印象としては、ハルトが話をちゃんと理解して、このギフトを選んだのか不安でしょうがなかった。
「他の勇者候補は大丈夫なのか?」
エドモンドは顎に手を当て、少し考える素振りを見せる。
「少ししか話していないから、確実なことは言えん。しかし、話した限りは、まともな印象だった」
リオンは思わずホッと息をついた。
もし五人全員がハルトと同じような奴だったら、とてもじゃないが面倒を見きれない。
「とりあえず、入学式の前日の適性検査前に、5人全員の顔合わせをしておけ」
「了解」リオンは頷いた。陽翔以外の勇者候補がどんな連中なのか、今のところ想像もつかない。
エドモンドはさらに続ける。
「学園には、お前たちの事情を知った協力者もいる。そいつらにも会っておけ」
「協力者?」
「会えばわかるさ」
「なんだよ、すごく不安になるんだが……」
「お前のよく知る人物だ」
エドモンドは書類を片付けながら、ふとリオンを見てニヤリと笑った。こいつがこんな表情をするののは珍しい。
「それより、お前はこれから学園入学にあたって、一番知らせなきゃいけない人がいるんじゃないのか?」
「……」
リオンの表情が一瞬で曇った。
エドモンドが言っているのは、娘のリリーのことだ。
「ああ……そうだな……」リオンは額に手を当てた。
ハルトの相手をするよりも、この問題の方が遥かに気が重い。
「お前が娘に学園に入学することをどう伝えるのか、俺は興味あるな」エドモンドは面白そうに言う。
「俺も知りたいよ……どうやったらうまくいくのか……」
リオンは、これから迎えるであろう娘の怒りを想像して、ますます頭が痛くなった。