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ダンジョン攻略授業 最終日 その後2

 事件から、一週間後。

 ダンジョン攻略授業、総合成績一位。

 リオンたちは、学園の食堂でささやかな祝勝会を開いていた。

 「改めて!」

 陽翔がグラスを掲げる。

 「ダンジョン攻略授業、総合成績一位、おめでとう!それと、カイルの退院もな!」

 「う、うん……ありがとう、陽翔くん」

 カイルは照れたように笑う。

 祝勝会が一週間たってからなのは、重傷を負ったカイルが退院に時間がかかったためだ。

 「一位だぜ!一位!やっぱ、俺スゲー!」

 「全部、自分の手柄みたいに言うな」

 「そうですよ。みんなが力を合わせった結果なのです。皆に感謝を」

 

 「わかってるよ、しかしさ」

 陽翔が首を傾げた。

 「あれだけの怪我だぜ? よく一週間で退院できたよな」

 「うん、僕も正直、驚いたよ」

 カイルは苦笑しながら言う。

 「まさか、王国の最高治癒術師のフィオナ・アルカディア様が、直接治療してくれるなんて……」

 リオンは一瞬だけ視線を逸らした。

 

 「でもさ」

 リーナが首を傾げる。

 「フィオナ様って、王国でも滅多に前線に出ない人でしょ?ニュースになるような事件だったとはいえ、一学生の治療に来るのって、ちょっと不自然じゃない?学園が正式に要請したのかな?」

 「い、いや……」

 リオンは曖昧に笑い、視線を泳がせる。

 「なんか、『たまたま王立病院に用事があった』とか言ってたけど……」

 (――大嘘だ)

 脳裏に、必死な声が蘇る。

 『お願いです! 治療をさせてください!そうでないと、レイラ様に殺されます!!』

 リオンは、内心でため息をついた。

 本当はレイラが見舞いに来たかったらしい。だが、王直属の近衛騎士団、王国第一騎士キングス・ナイトとして多忙すぎた。

 その代わりに――

 「病院に行って、リオンくんを全力で治せ」と全力で、圧をかけたらしい。

 (……彼女だって暇じゃないだろうに……にすまん、フィオナ……)


 「フフ……」

 穏やかで、どこか誇らしげな声が続く。

 「フィオナ様は慈悲深いお人ですからね。困っている人を見捨ててはおけなかったのでしょう。さすが、飛び級でルーヴェリア王立大学に入学し、最年少で王室の治癒術師になった才女。わたくしたちシスターのあこがれの的です」

 「すごい人なんだね……」

 カイルが素直に感心する。

 (イヤ、単なる治癒オタクだよ……)

 フィオナの事をよく知るリオンは心の中で突っ込む。

 「そいえば、僕だけじゃなくて、リオンくんやシエラさんとセリナさんも、フィオナ様に診てもらってたよね?」


 まるで、診療記録をなぞるように、落ち着いた声が続いた。

 「ええ、リオンさんのお怪我は、軽くはないとはいえ、一般的な治癒魔法で治るものでしたが、シエラさんとセリナさんに関しましては、カイルさんとは違った意味で重傷でしたからね」

 「そんなにヤバかったの……?」

 リーナが心配そうに聞く。

 「はい」

 静かに頷いた声。

 「獣化ビースト・オーバーと、バーサクモードの併用は肉体への負荷は、見た目以上ですから、筋繊維は悲鳴を上げ、骨格も歪んでいて普通なら、数ヶ月は前線復帰できない状態とお聞きしましたわ」

 「そんなに……」

 リーナが息を呑む。

 「そして、セリナさん」

 今度はセリナに声をかける。

 「魔眼の使用による、極度の魔力の枯渇に加えて、精神と視覚への反動……正直、よく意識を保っていましたね」

 「当然だ」

 セリナは胸に手を当て、ふっと笑う。

 「我が眼は、まだ“代償”を支払う段階ではない」

 「……無理は、しないでください」

 どこか切実な響き。

 「次に同じ使い方をすれば、視力か……あるいは、別のものを失います」

 セリナは一瞬、沈黙し、それから、静かに頷いた。

 「忠告、胸に刻んでおく」


 「しかし、それでも、わたくしは皆さんが無事に生還できた事を心から嬉しく思っています。さあ、女神セリス様に感謝の祈りを」

 「そうだな、セリス様に感謝を……って……」

 一瞬、テーブルの空気が止まる。

 「どうした?」

 急に固まった陽翔にリオンが怪訝な顔を向ける。

 「なんで、セラフがこの席にいるんだよおおおおおお!!」

 陽翔が叫ぶ。

 その瞬間、リオン、リーナ、カイル、セリナ、シエラが、顔を見合わせた。

 「イヤ……突っ込むの、遅!」

  リーナが即座に言う。

 「最初から、いたよ」

 カイルも首を傾げる。

 「い、いや!」

 陽翔が必死に弁解する。

 「そうなんだけど!なんか脳が拒絶してたというか!いなかったことにしたかったんだよ!」

 「失礼ですね」

 セラフは、穏やかに言った。

 「わたくしは最初から、ここにいました」

 「イヤだからなんでだよ!この祝勝会は俺たち陽翔チームの祝勝会だろ!?」

 「何、しれっと自分のチームみたいに言ってんのよ」

 リーナがジト目で陽翔を睨む。

 

 「僕が呼んだ」

 「なんでだよ!!」

 陽翔が叫ぶ。

 「どうせお前のことだ。また調子に乗って、他のクラスに迷惑をかけるだろ」

 「何決めつけてんだよ!もう、しねえっての!」

  陽翔は、机を叩きそうな勢いで反論する。

 「実際、この一週間、何もしてねえだろ!?ちゃんと大人しくしてたじゃねえか!」

 「それは、カイルがまだ入院してたからだろ?」

 「……え?」

 リオンは、指を一本立てた。


 「さすがのお前でも、仲間が重傷で寝込んでいる間は自粛する。だが、こうしてカイルが退院して、祝勝会まで開いた今、テンションが上がらないはずがない」

 「ちょっと待て!それ、完全に偏見だろ!?」

 「統計だ」

 「どこにそんな統計があるんだよ!」

 「今までさんざん、お前の馬鹿な言動を見てきた僕なりの統計だ」

 「おい!俺だって少しは成長して、今回の最後のダンジョン攻略授業だって活躍しただろ?」

 「確かにな。毎日の特訓のおかげで、戦闘技術は成長してきた。それが結果に表れたのが、今回のダンジョン攻略だろう」

 「だったら……」

 「それでも、普段のお前の生活態度を信用はできない」

 「なんでだよ!?」

 「お前が、他のクラスの生徒に、今回の黒淵の獣蛇アビス・バジリスクの討伐について自慢している、という目撃証言をいくつか聞いている」

 「……!」


 仲間たちと、セラフの冷たい視線が刺さる。

 「ち、違うんだって!あれは聞かれたから答えただけだ!自分から教室に行って自慢しに行ったことは一度もねえ!」

 「それでも、聞かれるたびに、だんだんと自分がいかに活躍したかという誇張が増えていっている、という証言も得ている」

 「どこで得てるんだよその証言!お前の情報網どうなってんだ!?」

 ちなみにリオンのその情報網は、学園にいる教会で面倒を見ていたアレクやその他の聖騎士見習いたちである。


 「そういうわけだ。しばらくはセラフにお前のことを監視してもらう。放課後の特訓も、引き続き付き合ってもらう」

 「鬼か!お前は!」

 その時、穏やかな声が割って入った。

 「まあまあ、安心してください、陽翔さん。監視といっても、束縛ではありませんよ。“見守り”ですわ」

 「……見守り?」

 「はい」

 にこやかに、微笑んで。

 「女神セリス様の御名のもと、あなたの健全な学園生活を、静かに、丁寧に、正しく導くだけです」

 「……言い方を変えただけで、余計怖えんだけど」

 「怖がる必要はありません。正しい行いをしていれば、何も問題は起きませんから」

 リオンが、肩をすくめる。

 「つまりそういうことだ。問題を起こさなければ、何もされない」

 「……逆に、何か問題を起こしたら?」

 陽翔が、嫌な予感を込めて聞く。

 セラフは、微笑んだまま黒い鞭を取り出した。

 「即座に、是正します」

 一瞬の沈黙。


 「……なあ」

 陽翔は、ゆっくりと振り返る。

 「これ、祝勝会だよな?」

 「そうだよ?」

 リーナがあっさり言う。

 「ついでに、ハルトの更生プログラム開始記念日でもあるけど」

 「聞いてねえ!!」

 食堂に、陽翔の悲鳴がこだました。


 




 


 

 


 

 

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