表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/80

模擬戦前夜

 ──模擬戦前夜

 リオンは夜の学園の中庭で、一人の少年と向き合っていた。

 蓮、建前上は“特例入学枠”の一年生。

 だが、その実態は、この世界を救う可能性を託された“勇者候補”の一人。

 そんな彼が、明日の模擬戦で上級生と戦うことになっている。

 勝っても負けても、騒がしくなるのは避けられない。


 「……リオンさん」

 「ん?」

 「明日の模擬戦、全力で戦わせてもらいます。場合によっては、ギフトを使うかもしれません」

 静かな夜風の中に、少年の決意が混じる。

 リオンは少しだけ目を細め、黙って相手を見つめた。

 「……本気なんだな」

 蓮は頷いた。

 「この戦いだけは……どうしても負けたくない」

  ふと遠くを見るような目になり、蓮は短く息をついた。 助けられなかった“あの日”の後悔が、今も胸の奥に残っているのだろう。


 「……助けられなかった人がいました。 だから俺は、この世界で今度こそ、誰かを救いたいと思って来ました。 でも、今のままじゃ、それも“口だけ”で終わってしまいます。強くなければ、何も守れないし、誰の力にもなれない。だから……この戦いで証明したいんです。俺がここにいる理由をちゃんと、自分の力で」

 「だが、そのギフトは……強力すぎる。目立てば、勇者候補だと疑われる可能性もある」

 「……分かってます。でも、それでもやります」

 蓮の言葉に迷いはなかった。


 「……本来なら監視官として、止めるべきなんだろうな。でも、そういう真っ直ぐな奴を、僕は止められないよ」

 リオンは夜空を見上げ、息を吐く。

 頭に浮かんだのは、かつて自分が剣を振るったあの日々、怒り、悔しさ、孤独……力を求めたのは、誰かのためではなく自分のため。

 「僕が昔、剣を握ったのは、お前みたいな正義感からじゃなかった。ただ、周囲を見返したかっただけだ。だから、お前の方がよっぽど立派だ。……止める資格なんて、僕にはない」

 誰かの力になりたいという、青年の純粋な言葉は、リオンには、まぶしくて、少し羨ましかった。


 「生徒会には、お前を保護してもらうよう頼んである。後、いざとなったら、教会にも話を通すつもりだ。……エドに相談する羽目になるだろうけどな」

 「エド?」

 「ほら、お前が女神さまから召喚された時に、ハゲたオヤジがいただろう?……あいつ、怒るだろうな。怒ると説教が長いんだよ」

 冗談めかしてそう付け加えると、蓮の顔にもわずかに笑みが浮かんだ。

 そうして、夜は更けていく。 そして、模擬戦の幕が、静かに上がろうとしていた。


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ