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リオンの帰宅

 エドモンドが女神に振り回され、荒れ果てた女神専用部屋を片付け終えた頃、リオンは肉体的にも精神的にもぐったりと疲れ果ていた。ようやく帰宅し、玄関のドアを開けた瞬間

 「ただい・・・」

 「おかえり!リオンくん!」

 「ぶっ・・・」


 突如、大柄な影が飛び込んできた。次の瞬間、豊満な胸がリオンの顔面を覆い尽くす。今日、二度目の巨乳アタックだ。だが、リオンは慣れた様子で、特に反応することもなく冷静に呟いた。

 「ああ、レイラさん、帰っていたんだね。」

 彼女の名前は、レイラ・エレオノーラ・フォン・ブライトバーン、イヤ、今はブライトバーン家から形式上は勘当という事になっているので、リオンの苗字であるオルティアを名乗っている。


 燃えるような赤髪と、闘志を宿した真紅の瞳。

 長身でしなやかな筋肉を持ち、その体には女性らしい柔らかさも残る。中でも、目を引くのは豊かな胸元。戦場では剛腕の女騎士として恐れられる一方、家では情熱的でストレートな性格を隠そうともしない。


 王国の上級貴族、武闘派として名高いブライトバーン侯爵家の末っ子として生まれたレイラ。

 三人の兄たちは皆、軍や戦略機関に身を置き、王国の防衛を担っている。そんな武人一家の中で、唯一の長女でありながら、最も戦場に適応したのが彼女だった。


 現在は、形式上は勘当されているものの、その実力と功績により、王直属の近衛騎士団に所属し、さらに『王国第一騎士キングス・ナイト』の座を獲得している。

 戦場では、炎をまとったかのような赤髪と、敵軍を圧倒するその強さから「紅蓮の覇王姫クリムゾン・エンプレス」と恐れられ、王国最強とも目されている。

――しかし。


 そんな伝説的な戦士が、今この瞬間、家ではこうだ。

 「あ~ん、3日ぶりのリオンくんだ!」

 「そうだね、でも、御飯を作らなきゃいけないから、そろそろいいかな?」

 「いいじゃないか、3日も会えなかったんだから、もうちょっと抱きしめさせて」

 レイラは抱きしめる力を強くする。

 「いだだだっ!強いってば!」

 戦場で巨大なバスターソードやバトルアックスを軽々と振るう彼女の腕力で抱きしめられれば、それは体が小柄なリオンにとって、まるでベアハッグのようなものだ。


 「ああ、すまないリオンくん、ただ、3日ぶりでリオンくんへの愛があふれてしまって、ん~ちゅ、ちゅ、ちゅ」

 「ちょ、やめ、やめて、落ち着いて・・・・」

 リオンの顔に熱烈なキスをするレイラ

 「ねえ、玄関で何してるの?」

 そこにとある人物が、冷たい目でそのやり取りを見ていた。

 「あー!リリーもおかえり!」

 彼女の名はリリー・オルティア、リオンとレイラの一人娘だ。

 中等学院の生徒で、学院から帰ってきたらしい。

 外見はレイラそっくりで、若き日のレイラを知っているリオンからすれば、その時と瓜二つだった。

 レイラはリオンより2歳年上で30歳を超えているが、肉体的にも見た目も若々しく、姉妹とよく間違われる。最近では、姉妹と年の離れた弟などと間違われることもあり、リオンはとても悲しい気持ちになることもある。


 「何って、夫婦の愛を確かめ合っていたんじゃないか!さあ!リリーも一緒に家族の愛を確かめ合おう!」

 レイラは腕を広げて、3人で抱擁しようしようとリリーを誘う。しかし、とうのリリーは顔を真っ赤にし

 「するわけないでしょ!ママもパパもバッカじゃないの!?」

 「待て!パパはバカじゃない!」

 「いや、パパも十分おかしいから!」

 

 リオンの悲痛な叫びは届かず。さっさと自分の部屋に行ってしまった。

 レイラの腕の中でがっくりうなだれるリオン

 「あー、レイラさん、思春期の娘の前でこういうのはあまりよくないよ。それにね、僕たちも結婚して15年もたつんだ。そろそろ、もう少し落ち着いた夫婦関係になってもいいんじゃないかな?」

 「ん?どういう事だ?意味が分からない」

 レイラは本気で意味が分かっていないらしい

 「イヤ、普通はね、結婚して特に子供が出来て、長い日を共に過ごせば、お互い良い距離感を保った夫婦になるらしいよ」

 リオンはやんわりと説得してみる、しかし、レイラは意に介した様子はない。


 「ふふ、リオンくん確かに世間では子供が出来たら、旦那の事などどうでもよくなるなどと、言われているらしい。しかし!そんなものは嘘だ!イヤ、しょせんその程度の愛なのだ!私はリリーが生まれた後、リオンくんの愛がより深まったと感じた!そしてそれはリリーが成長するごとにより深まっていく!そう!私とリオンくんの間にある愛は、まさに究極の愛なのだ!」

 こぶしを握り高らかに宣言するレイラ。

 (レイラさん……それは、愛じゃなくて……母性だよ……)


 心の中でそう呟きながら、リオンはあえて口には出さなかった。言ったところで、彼女にはきっと通じない。

 けれど――不思議と、悪い気はしなかった。

 (……重い。相変わらず愛が重すぎる。でも……)

 レイラの横顔をちらりと見る。真っ直ぐで、不器用で、けれど全力で自分を愛してくれるその姿に、心の奥がじんわりと温かくなる。

 (……こういう人じゃなきゃ、僕は結婚できなかったんだろうな。)

 リオンは小さく息をつき、ふっと微笑んだ。


 「……まぁ、悪くないよ。究極の愛ってやつも。」

 レイラは一瞬驚いたように目を丸くし、それから満面の笑みを浮かべた。

 「だろ!?」

 再び飛びついてくるレイラの勢いに、リオンは反射的に身構えたが、もう遅い。豊満な胸に再び押し潰されながら、彼は小さく溜息をついた。


 (……やっぱり重い。でも……まぁ、これでいいか。)


 

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