28.女子会と女子会の裏側
ローテッド国の女騎士を招いての女子会は、紗綾のいる神殿の、広い応接室で開かれている。
「みんなで女子会開く事になったんだ〜」とフクフォルトに自慢すると、彼の開発したたくさんのスナック菓子やコーラを差し入れてくれた。
今や親友になったフクフォルトは、紗綾のローテッド国生活の中で何かと気を配ってくれている。
スナック菓子をつまみながらの女子会トークは、今まさに盛り上がりを見せていた。
今のテーマは、『理想の男子について』だ。
『騎士団内の恋愛事情が聞けるかも』と紗綾は、コーラを持つ手に力が入りながら、ぶっちゃけトークに参加していた。
「え、騎士団内の騎士なんて対象外ですよ」
「あいつら本当にガサツでムカつくんですよ」
「剣の訓練も容赦なく打ってきますし、あいつらは女騎士も男だと思ってるようなヤツらですから」
「特にデリ!誰かあいつに気遣いという言葉を教えてやってほしいです」
「やっぱり剣を持たない人の方が、素敵な人多いですよね。守ってあげたくなるような、可愛い人って素敵です」
「分かる!」「分かる!」
キャアッと一斉に声が上がって女騎士達が盛り上がる。
「そうなんだ〜。デリさんは騎士団内のアイドルだと思ってたよ」
意外な反応に、『あんなにイケメンで優しい子なのにね』と思いながら、紗綾は相槌を打つ。
「それはないですよ。デリも騎士団の外ではモテるかもしれませが、騎士団内では全然です」
キッパリと言い切られるデリは、騎士団内ではたくましい女騎士に押されているようで不憫だが、たくましい女騎士は素敵だ。
ローテッド国では、女騎士でも男の騎士と同等に扱われるので、女子も強くいられるのだろう。
フクフォルトの女騎士推奨への素晴らしい仕事ぶりが、ここでも見られていた。
「ルイさんとランさんとユリさんは?うちの聖騎士さんは、みんな内気なところがあるし優しいよね。みんな気になる子とかいないの?」
紗綾はさりげなくセイクリド国の騎士団内の恋愛事情もリサーチする事を忘れない。
「内気……?いえ、同じような感じじゃないですか?」
「うちの騎士団もみんなも、ガサツで気が利かなくて、自己中な者が多いですよね」
「まだマシなのはガクさんくらいじゃないですか?」
――意外と辛口評価だった。
もしかしたら優しい三人は、ローテッド国の女騎士に話を合わせたのかもしれない。
さすが紗綾の憧れる女騎士だ。空気の読める、気遣いが半端ないルイ達は紗綾の誇りでもある。
「そっか〜。紳士なのはロイさんとガクさんくらいか〜」と紗綾は頷いておいた。
お菓子の補充に部屋を出たランに、手伝いを申し出たローテッド国のモモが、並んで歩きながらふうとため息をつく。
「心配だわ……。サーヤ様の『良い人』認定のハードルが低すぎて、簡単に騙されてしまいそうで不安だわ。
デリが純粋で心配、って話してる時点で心配だわ。あいつほど勝手な奴はいないのに。
腕を失くしたのも、自分を過信して仲間が止めるのも聞かずに、無謀な行動をしたからなのよ。馬鹿すぎて、恋人に振られても当然なのよ。
サーヤ様はデリが私達に剣の稽古をつけているって誤解してるけど、あれ「サーヤ様に取り次いで欲しいなど、俺を倒せるくらいの腕を持ってから言え」とかほざいてたからなのよ。
同じ調子でサーヤ様の出迎えも、他の騎士にさせないんだから。
埒が明かないからガクさんに相談したんだけど、正解だったわ。ロイさんもデリと似た空気持ってるし」
「そうですよね。ロイさんもうちの騎士さえ近づけさせないですからね。ガクさんが、ロイさんの隙を見て取り持ってくれてますが、サーヤ様は「みんな内気だからあまり話してこないね」と話してるんですよ。
そもそも魔物駆除をするような身分のない騎士に、内気な者も優しい者もいるわけないですからね。
貴族が色のない者を嫌うのも、それだけの事をしてる者が多いからなんですけどね……。色のない者は、貴族に嫌がらせをするのを生き甲斐とする者も多いですから」
ランもふうとため息をついて、紗綾の前では話せない事をぶちまける。
「フクフォルト王子のこの差し入れも、『自分がついてる』っていう騎士達への牽制だよね。
王子が慈悲深いなんて見た目だけだ、って誰もが知ってる事なのに。これだけ王子の事業が成功してるのも、他国へのえげつない政策の賜物だという話よ。
人の本質に気がつかないで、「みんな優しいよね」と信じるサーヤ様が心配だわ……」
「サーヤ様が「ガクさん、私の食べ切れなかったご飯食べてくれるなんて、本当に良い人だよね。あの時にガクさんの剣にも光が乗せれるだろうなって思ったもん」ってルイに話してるのを聞いた時から心配なんですよ。そんなので信用して聖剣作るなんて……って。
ガクさんは確かにまだマシな人ではあると思うんですけど、それでも「どうか」と思うような事してますよ」
「心配だわ……」と言い合いながらお菓子を抱えて歩いていると、窓から男達が剣を交えている姿が見えた。
遠目でも見える、あの輝く剣を振りかざしているのはロイだろう。体格と腕からして、相手はデリに違いない。
激しく打ち合う二人に、現場は殺伐としているのだろうなと見てとれた。
「きっとあの様子を見てもサーヤ様は、「男子会盛り上がってて楽しそうだね」とか言うんでしょうね」
「心配だわ……」
二人の女騎士は、聖女の称号失くしても聖女らしいサーヤを思って、戦う男達を見ながら心配になっていた。




