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夢で呼ぶ彼 〜消えた過去から呼びかける人  作者: 白井夢子


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27.騎士団間交流


ガクがローテッド国の女騎士に囲まれていた。


いつものようにデリの騎士団の食堂で聖水ドリンクを作り終わった紗綾は、そんなガクに気づいて「では帰りましょうか」と声をかけてきたロイに「シッ!」と人差し指を立てる。



これは今日の女子会での報告案件だ。

今日のテーマは、『ガクさんがローテッド国の女騎士にモテている件について』に決まりだ。見逃すわけにはいかない。


紗綾の横にはロイの他にデリも立っているというのに、今日選ばれたのはガクだった。


「サーヤ様?うちの女騎士の事は気にせず、ガクさんに声をかけてもらって大丈夫ですよ。よければ私から注意しましょうか?」


横に立つデリに声をかけられて、『本当にこの子は良い子だよ』と思いながら教えてあげる。


「声をかけちゃダメだよ。これ今日の女子会の報告案件なんだから。ちゃんと見守っておかないと」


「女子会ですか?」とデリに聞き返される。


「そうだよ。毎日寝る前に、うちの女騎士さんが私の部屋に集まってくれるんだ。毎日テーマを決めておしゃべりしたり、ゲームしたりして遊んでるの」


「それは……羨ましい会ですね。どんなゲームをしたりするのですか?」


デリが本当に羨ましそうに尋ねるので、ちょっと教えてあげる事にする。


「最近は神聖力ボールの卓球大会とかかな。テーブルをはさんでボールを打ち合うの。ボールはこれだよ」



「これだよ」と言いながら、紗綾は集めた聖力をピンポン玉サイズにキュッと丸めて見せた。

キラキラと輝くピンポン玉は、テーブルの上に当てても音はしないし、物を壊す事もない。夜でも静かに遊ぶ事が出来るのだ。


彩綾は食堂に置いてあった、軽くて小さいトレーを二つ取って、一つをデリに渡してテーブルの反対側に回った。


「私が最初に打つから、デリさんは一回バウンドしてから打ち返してみてね。いくよ――はい!」


トレーでポーンとボールを打つと、戸惑いながらもデリがポーンとトレーで打ち返してくれる。

今度はビシッと力強く打ち返すと、また優しく紗綾の前にポーンと打ち返してくれる。

もっと力を込めてビシッと返すと、また優しく返してくれる。


さすがだ。デリの騎士道精神が卓球にまで現れている。女子への親切が半端ない。

紗綾は手加減なくビシッ、ビシッとボールを返していたが、トレーを持つ手が疲れてくるとボールはスッと姿を消した。


「……あーあ、消えちゃった。このボールは疲れると消えちゃうんだ。ボールが消えた時もゲームは終了っていうルールにしてるから、デリさんの勝ちだね」


嬉しそうに笑うデリに「おめでとう」と声をかけていると、ガクが紗綾のところにやってきた。


「ガクさん、みんなとゆっくり話してていいんだよ。デリさんと遊んでただけだから」


聖水を作り終わった事に気がついて戻ってきたのかも、と紗綾はガクに声をかけた。


「いえ、たいした話はしていませんよ。こちらの騎士団の女性騎士が、サーヤ様と話がしたいと言うので、何の用件か聞いていただけです」



「女騎士さん達が?何の話?」


『もしかしたら「うちのデリに色目を使わないで」とか言われるかも。今もみんなのいる前で遊んじゃったし』とドキドキしながら聞き返す。


「ただ話がしたいだけのようですよ。サーヤ様がよく「女子会案件だ」って話す言葉が気になるようですね。ここの女性騎士ともその女子会を開いてほしいそうです」

「え!!」


ローテッド国の女騎士達との女子会。 

それはたくさんの美人女騎士に囲まれておしゃべりする会だ。


『すごく嬉しい……』と感動に震える。


カアッと顔が熱くなると、ガクの伝言に紗綾が気を悪くした訳ではない事に安心したのか、遠巻きにこちらを見ていた女騎士達が近づいて声をかけてきた。



「いつも聖水をありがとうございます、サーヤ様。私はモモと申します。あの、いつもお忙しくされているとは思いますが、お時間がある時でいいので、私達ともお話をする機会を作ってもらえないでしょうか」


緊張しながらも紗綾に向ける目に好意が溢れていて、紗綾はその目を見た瞬間に女騎士に好感を持った。

『私も仲良くなりたいな』と女騎士を見つめると、紗綾を庇うようにデリが前に立って、女騎士に厳しく言い放った。



「お前達、お忙しいサーヤ様に失礼だ。いつもダメだと言ってるのだろう?」


「はあ?デリがいつまでたってもサーヤ様に伝えてくれないからじゃない!デリの方がサーヤ様につきまとっててこっちは迷惑してるのよ!」

「そうよ!デリが大きくて、サーヤ様が隠れて見えないでしょう?もっと離れなさいよ!」

「食堂の付き添いだってデリの必要はないでしょう?」

「そうよ!付き添いは交代制にしなさいよ!」



デリが目の前を塞ぐので女騎士達の姿は見えないが、聞こえてくるデリに向ける声は厳しい。

その口調に『女子達に責められる男子』の構造があった。デリへの熱は全く感じられない。


どうやらデリはこの騎士団のアイドルではなかったようだ。


やいやいと女子達に責められるデリは、皆にいじられる愛されキャラなんだろう。賑やかで元気な女騎士達が楽しそうで、紗綾も彼女達に話しかけたくなった。


そんな紗綾の気持ちを読んだのか、ロイがスッと紗綾に近づいてきて、小さな声で諭された。


「サーヤ様。私達の護衛なく他の者に会う事はおやめください。フクフォルト王子からも「サーヤ様は騙されやすそうだから、必ず目を離さないように」と注意されています」


「フォル様が?フォル様の方が騙されやすそうなのにね。でもそうだね、フォル様もそう言ってくれてるなら守らないとね。

じゃあこっちにお招きしよう。ルイさんとランさんとユリさんも一緒ならいいでしょう?」



紗綾のお願いに、渋々といった様子でロイが頷いた。

ガクを見ると、ガクも「まあ……それなら」と言ってくれている。


紗綾達の会話に気づき、女騎士達がこちらを緊張した様子で見ていた。


「モモさん、みなさん。私のいる神殿になりますが、よかったら遊びに来てください。私の友達の女騎士さんも紹介しますね」


紗綾の言葉にキャアッと歓声が上がり、明るい笑い声に早速女子会が楽しみになってくる。



「サーヤ様。私も一緒に伺ってよろしいでしょうか」とデリに声をかけられて、「いいよ。フォル様が用意してくれた神殿広いし、みんなでおいでよ」と言葉を返す。


「サーヤ様!女子会でしょう?!」とロイに怒られだが、しっかりと説明した。


「女子は女子会開くから、ロイさん達は男子で男子会開きなよ。魔物駆除もよく一緒に行くんだからさ。一緒に遊んで仲良くなりなよ」


「「男子会……」」


ロイとガクとデリに呟かれて、「そうだよ」と紗綾は頷いた。





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