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夢で呼ぶ彼 〜消えた過去から呼びかける人  作者: 白井夢子


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19.転移者と転生者


フクフォルトと二人だけで聖堂に入り、置いたテーブルに向かい合って座ると、フクフォルトが口を開いた。


「僕とサーヤちゃんは、たくさんの秘密を共有してたんだよ。

僕さ、転生者なんだ。サーヤちゃんはこの世界に呼ばれた転移者だけど、僕はローテッド国の王子として、この世界で生まれ変わった転生者なんだ。僕も日本人だったんだよ。

だからサーヤちゃんの感覚は分かるんだ。薄茶色の髪に差別はないだろうし、「濃い髪色は高貴な者」って感覚が全然ない事も、この世界の人がイケメンと美人揃いだって感じてる事もね。

それから女騎士が尊いって思ってるって事も。

―――良いよねぇ。自分を守ってくれる女騎士。僕の前世の憧れだったんだ〜。

あ、これ内緒だよ。僕の転生も内緒だけど、女騎士の話は、サーヤちゃんと僕だけのオタク話だったんだから。「懐が深い王子と聖女ってイメージを崩さないで、女騎士を推奨しようね」って約束してたんだからね。記憶がなくなってても、そこはキッチリお願いするよ」



フクフォルトが、設定を詰め込みすぎている話をし出した。


彼は前世日本人で、女騎士に憧れていたらしい。

聖女サーヤはフクフォルトと、女騎士オタク同士として気が合っていたようだ。


「え……。私なんかすごい事聞いちゃってるよね。でもなんか分かる気がする。そんな可愛い髪色してるのに、私と同じ感じがするなぁって思ってたし。

あ、フクフォルト様は王子様でしたね。すみません。なんか友達と話してるみたいに思ってしまいまして」


「え〜敬語なんていいよ〜。寂しい事言わないでよ〜。それに『長くて呼びにくいから』って、前はフォル様って呼んでくれてたじゃん。

それよりさ。サーヤちゃん、世界の浄化始めたんでしょう?先に騎士団内で縁がある土地から浄化してるって聞いたけど、それ終わったらうちに来てよ。

うちのローテッド国も、土地の穢れが広がっちゃって大変なんだ。ほら、サーヤちゃんのために開発したポテチの産地のじゃがいもも全滅しそうなんだよ」


「ポテチ?」

「厚切りポテチが好きって話してたじゃん。ポテチは僕がすでに開発してたけど、サーヤちゃん「これじゃない」って、「薄塩味のギザギザの厚切りタイプの作ってよ」ってリクエストするから作ったのに〜。

それも忘れちゃうなんて酷くない?塩の種類までたくさんダメ出ししてきたのにさ〜。

も〜ちょっとこれ食べて思い出してよ」


話しながらフクフォルトが、持っていたカバンの中からポテチの袋を取り出した。

早速袋を開けて食べてみる。


「うわ……!これだよ!このポテチ最高!元の世界よりより厚切りでバリバリしてるじゃん!塩もいい感じだし。

これ作ったんだ!フクフォルト王子様、すごいじゃん!ポテチ食べたかったんだ〜」


「でしょう?苦労したんだから。僕、前世で食べた色んなジャンクなものが忘れられなくてさ。お金持ちの国の王子に生まれ変わったし、金に任せて好きだったもの再現してるんだ。

コーラだってあの味だし、フライドチキンだってあの味だよ!サーヤちゃんなら、あの味分かってくれるでしょう?

ねえ、食べにおいでよ。いつくらいにこっちに来れそう?」


「みんなの故郷の浄化は、今日終わったよ。

でもライオネル王子様と教皇エーヴェイル様の手紙に、「浄化の順番をもっと貴族にも配慮してほしい」って遠回しに書かれててさ。そろそろ貴族の土地も浄化しないと、この神殿の騎士さんに迷惑かけちゃうと思うんだ。

世界の浄化が終わったら、私は元の世界に帰れるけど、みんなはこの世界で生きていく人達だからね。ある程度貴族の希望も聞いとかないと」


「え!騎士団の者達の縁の地の浄化は終わったんだ!じゃあ今日にでも出発出来るじゃん!

―――そんな目で見ないでよサーヤちゃん!

ライオネル王子とかエーヴェイル教皇とか、セイクリド国の貴族の事は任せておいて。僕の国強いから、絶対文句は言わせないし。

僕の国も色のない者には差別はあるけど―――え!そんな目で見ないでよ〜。差別は世界的なものなんだよ〜。僕王子だし、色々あるんだよ〜。

サーヤちゃんの仲間だったら、もちろん差別なく歓迎するよ!なんなら僕の国の色のない騎士団の者達も使ってよ。

色のない者達が世界を救ったら、世間も見る目を変えなくちゃいけなくなるでしょう?彼等の人権の向上が期待できるよ。その辺はサポートするからさ〜。

それにサーヤちゃんの騎士団の女の子にも、格好いい騎士服をデザインしてプレゼントするよ!」


「え!ウェンディさんが着てるみたいな服……?」


ついさっき会ったウェンディは、煌びやかな騎士服をまとっていた。

美人×騎士×華やかな騎士服。

――いい。尊い。同性でありながらも、格好良くてドキドキしてしまった。


ルイとランとユリのようなシンプルな騎士服でももちろん格好はいいが、出来ればもっと良い服を着せてあげたい。

騎士と言っても、みんな女の子だ。綺麗な服を支給してあげる事が出来ればみんな喜ぶだろうし、喜んでくれたら紗綾だって嬉しい。

とても魅力的な提案だった。



「簡素な服を着てても女騎士の尊さは変わらないけど、でもやっぱり衣装は大事だよね。

サーヤちゃんの服って神様デザインでしょう?少し似た感じで『どこかお揃い風』っていうのはどう?

もちろん女の子の騎士服だけじゃなくて、格好いいメンズ騎士服も支給するよ。サーヤちゃんの仲間のロイとガクって、超実力者らしいね。彼らの力に見合った、相応しい服を用意してあげてもいいんじゃない?

ローテッド国の僕の城の近くに、サーヤちゃんが騎士団の子達と一緒に住める場所を用意してあげるし、毎日豪華な食事付きを約束するよ!

このセイクリド国の貴族は、サーヤちゃんを悪く言ってるし、騎士団の子達も必要以上に低く見てるでしょう?

この国にはもう一人の聖女もいるじゃん。この国の事くらいは彼女に任せときなよ。貴族の事は僕が全部なんとかするからさ。ローテッド国においでよ。

もっと一緒にジャンクな食べ物開発しようよ〜」



フクフォルトの提案は、とても魅力的だ。

紗綾達の状況も、正確に言い当てている。


紗綾がこの国を優先して浄化したところで、「身分の低い者をもっと先に優先していた」と悪く言われる事はあっても、感謝される事もないだろう。

『セイクレド国の貴族をなんとかしてくれるなら、先にローテッド国を浄化してもいいかも』と思えた。



「うーん。そうだね、悪くないかも。でも一応ロイさん達にも話してから決めようかな。土地の浄化はみんなでしてるものだから、勝手に決められないんだ。

名前を呼んだら扉の向こうまで聞こえるかな?

ロイさーん、ガクさーん」


紗綾が扉に向かって呼びかけると、バン!と扉が開いて二人が飛び込んできた。

急ぎすぎだろう。



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