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夢で呼ぶ彼 〜消えた過去から呼びかける人  作者: 白井夢子


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10.良いとこどりの力


「えっ」


神の声が届いた気がして思わず声を上げると、「どうかされましたか?」とルイに心配そうに顔を覗かれた。

覗き込まれて見えた顔が美人すぎて眩しい。


「ルイさん。神様が今、教えてくれたんだ。荷物をこの神殿に送ってくれたって。聖女グッズと私の生活必需品をまとめて祭壇に置いてくれたみたい。みんなで見に行こうよ」


紗綾は元気に立ち上がって、ロイとガクとルイを誘った。


「もっと動きやすい服も用意してくれたって。昨日送ってくれたこの服は綺麗なデザインだけど、手の甲まである長袖の服だし、白だから汚れが目立っちゃうしね。さっきソース付けちゃった」


エヘヘと紗綾がソースの付いた袖を見せると、「洗いますから、先に着替えましょう」とルイも急いで立ち上がる。

優しいルイに好感しかない。






祭壇に向かうと、神が教えてくれた通りに荷物が置かれていた。

可愛い服が並べられているのを見つけて、思わず駆け寄ってしまう。


すぐに服を汚す者だと思われたのか、七分袖と膝下丈のワンピースになった。

正装というより「ちょっとしたお出かけ着」といった感じで、肌触りの良い生地に、キラキラ光る白い糸で繊細な柄の刺繍が入っている。全て白基調だけど、どの服も少しずつデザインが違っていて、着る服を選ぶ楽しさがある。


一着を手に取って前に当ててみると、サイズもピッタリだし紗綾に合ったデザインで、テンション爆上がりだ。

ルイのような美人は服を選ばないかもしれないが、紗綾は服を選ばなくてはいけない側の人だ。似合うデザインの服を用意してくれた神様に感謝しかない。


「神様、本当にありがとうございます。神様の服、デザインが神がかってますよね。全部すごく可愛いです。

世界の浄化はこの服を着て頑張りますね」


神にお礼を伝えて、ロイ達にも「すぐに着替えて戻るから待っててね」と、紗綾はご機嫌でルイと部屋に向かった。







「聖女サーヤ様。先にお伝えしたい事があります」


聖堂に戻ってくるとロイに声をかけられた。


「ライオネル王子様がこちらに向かっているので待つように、と先ぶれが入りました。レイノックス様とウォレント様もご一緒だそうです」


「そうなんだ。なんだろう?聖女の力を伸ばす練習とかかな?

もう浄化に出ても問題無さそうだけど――あ。話してなかったね。私、昨日の夢で神様に会って、記憶の一部を戻してもらったんだ」


「記憶が戻られたのですか!?」


驚いた三人に説明する。


「全部の記憶じゃないけどね。聖女サーヤが身につけた神聖力の扱い方だけを思い出させてもらったの。たがら祭壇に置いてある神器の使い方は分かると思うよ。多分あれ、前に私が使っていた物じゃないかな。

もしライオネル王子様が聖女の力を伸ばすために来るんだったら、訓練はお断りしたいな。会うの気が重いな……。

ねえ、あのさ。みんなも一緒に側にいてくれる?

身分で話しかけたり出来ないのかもしれないけど、いてくれるだけでいいからさ」



この世界は身分がハッキリした世界だ。


大神殿でライオネルはロイの事を、「通常なら聖女に声をかける事も許されないほどの者」と言っていた。

紗綾の側にいてくれても、彼等は物申す事さえ許されないだろうけど、側にいてくれるだけで心強い。


そう思っての頼みだったが、ガクに申し訳なさそうに謝られた。


「――すみません。俺とルイは同席も出来ないんです。聖女サーヤ様と同席できるのは、浄化時の護衛に認められたロイだけになります。

俺達が昨日まで大神殿に貴族と同席できたのは、聖女サーヤ様の呼び出しという特別な理由があったからで、本来俺達は、貴族との同席など許されない身なんです」


「徹底してるね……」



感心してしまうほどの徹底ぶりだ。

だけど「浄化時の護衛に認められた者」が同席できるというならば、二人が認められるようにすればいいだけだ。

聖女の力が戻った今は、どうすればいいかが分かる。


紗綾は祭壇に置かれた神器の前に立って、小さな水晶玉を選んで手に取った。

大神殿で使った大きな水晶を、手のひらサイズ版にしたような水晶は、紗綾の手にとても馴染む物だ。


「こうすればいいんじゃないかな」


手の中にある水晶の使い方が分かる気がした。

聖力を集めるのはイメージだ。

手に持つ水晶に、聖力を渡したい人への気持ちを集めればいい。



ロイはお城に行きたくなかった紗綾をこの神殿に呼んでくれた人だ。王子の不興を買う事も覚悟しての事だったに違いない。それに彼の妹のルイまでも護衛につけてくれた。

聖女サーヤの短い期間の護衛だっただけで、話した事もない仲だったらしいのに、本当に親切にしてくれている。

そんなロイには、貴族にも下に見られないほどの聖力を渡したいと強く願った。


願うほどに聖力が水晶に吸収されていき、強い光を放っていく。



「――眩しっ!ロイさん専用の聖力集めてみたよ。昨日の剣に追い聖力してみよう」


眩しくて目を細めてしまうくらいの聖力が水晶に集まり、その全てを剣に落とすと、光を吸収した剣に神聖な力がまとわれるのを感じた。


「剣が……」と呆然と呟くロイも、剣に何かを感じるようだ。


剣を鞘に収めるために、ロイが静かに剣を動かすと、剣身からキラキラと聖力の残像が残った。




「綺麗な剣になったね!ガクさんとルイさんにも、同じ剣が作れると思うんだ。ちょっと待ってね」


紗綾は嬉しくなって、ガクとルイそれぞれへの思いも順番に集めていく。


夢に現れたのがガクが先だったとしても、「丁寧なイケメン×夢=運気の上昇」の方式で、紗綾はきっとガクにも一目で好感を持っただろう。

ガクはロイと共に、以前聖女サーヤにも丁寧に接してくれていたに違いない。

それに彼は紗綾が食べ切れなかった朝ごはんもスマートに引き取ってくれた。親切すぎて感謝しかない。


ルイは、紗綾の憧れのクール系美人女騎士だ。

それに今朝ベッドで子供みたいに遊んでいた事をサラッと流してくれたし、良い香りのするお風呂も用意してくれたし、ソースで汚したワンピースも綺麗にしてくれた。

優しいルイは、紗綾にとってすでに信用できる人になっている。



それぞれへの思いを集めに集めて、ギュウギュウと水晶の中に聖力を押し込んでいき、また眩しいほどの輝きを剣に落とした。

すると思った通りに二人の剣にも光が乗って、それぞれが力を持った剣になる。


「やっぱり!出来ると思ったんだ〜。ガクさんとルイさんの剣もキラキラ剣だね!」


ルイに少し剣を振ってもらうと、キラキラ〜と光が舞い、「ルイさんにピッタリ!」と納得の仕上がりに紗綾は嬉しくなって笑いかけた。


「これで一緒にいられるよね。――あのさ、本当に付いていてくれるだけでいいからね」


不興を買って権力で護衛を外されては困るので、三人に念押しすると、ロイとガクに頭を下げられた。


「何も出来ない身で本当に申し訳ありません」


謝る二人に「それは違うよ」と言葉を返す。


「それは謝る事じゃないよ。無理に誘ってるのは私だし。本当に一緒にいてくれるだけで心強いんだ」




一度信頼関係が切れた相手と会うのは、記憶がないといっても少し気が重い。

『今日こそ、この口に気をつけなくちゃ』と紗綾は気を引き締めた。






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