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ポワレ(悲恋設定)




 柴犬のポワレが鳴いている。寂しげに、くぅん、くぅんと、喉から声を啜り上げるように。







「飽きた」

 喫茶店に入って席に座るまでのあいだ、私が恋人だと思っていた(さとる)の口から出てきたのは、空気を重くする短い言葉。

 積もった感情を集約しているに違いないと思うけれど、同僚になった年を含めた三年間を吟味したうえでの感想か、友人で居たほうが長く付き合えたという結論なのか、訊こうにも声が出てこない。

 私はタピオカミルクティーが入った冷たいグラスに両手を添える。なんでこんな物、頼んでしまったんだろう。ミスマッチだ。

 咥えている赤と白の可愛いストライプ柄のストローをぐにゅりと噛み潰し、既に口内に入っていたタピオカを一粒舌で転がしながら、少し苛立った視線で見つめ返す。

「じゃあな」

 智は自分が注文したカプチーノの分だけ小銭を置き、これ以上、何も話すことがないのか席を立って、目尻に涙を溜める私の視界からあっさり消えた。

 入店して二十分弱のあいだに彼が発した言葉は、注文を聞きに来た店員さんへの「カプチーノをひとつ」で始まり、次に、

「別れたい」

「飽きた」

「じゃあな」

 の、三つだけ。

 何処が悪くて嫌になったか、引き止めて聞けば良かった。別れを切り出された原因が読めない。飽きたって、私は犬かよ。

 外に繋がってるドアに付けられてる鈴が、からんからと鳴って、智の退店を知らせる。そこで私はなぜか、弱々しく気落ちした様子でくぅんと鳴く、柴犬のポワレを不意に思い出した。

 ポワレは日曜日の朝出会う、ご近所さんの飼い犬だ。私が両手でわしゃわしゃ顔を撫で回すとご機嫌になって尻尾をぱたぱた振り、じゃあねと手を振って帰るときは寂しげに鳴く。毎回だ。


 私が智をどれほど好きだったか。振り返ってみると目頭が熱くなる。

 好きではなく、甘えることができる場所が欲しかったのだ。



--- 終 ---

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