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空いた隙間

「あの声は何?」

由香の声に混ざって、あと複数人の声が聞こえた気がした。男の声、女の声。様々な声が同時に起きてと言ってきた。そうか。いないのか。由香も、拓哉も哉汰も。ここにはいない。そうか。6年ほどたっていたなんて。今何歳だ?高校生で記憶があるときは18歳。ということは。24歳か。だいぶ経っちゃったな。

会いたい。もう1回、会いたいよ。由香。もう、どうしようもないよ。ねえ!

「はぁ」

ひとまず頭の中を整理したい。由香が死んだ。拓哉と哉汰は、、、分かんない。生きているのか。どこ住んでいるのか。結婚してるのか。子どもがいるのか。何もかも全部分かんない。2人に会ってみたい。まずは両親に会わなければ。

「お食事、用意できましたよ。」

そういわれて外に出る。病院の匂い。ああ、私、壊れたんだ。由香がいなくなって。耐えきれなくて。わがままだな。惨めだな。自分でそう思ってわ

笑った。

「藤本さん。私の両親に会うことはできますか?」

食堂に向かう際、ダメ元でそう聞いてみた。

「ああ。正常状態に戻りましたしね。少し聞いてみましょう。」

え?マジで?結構すんなりいけるんだ。そう思いながら心のなかでガッツポーズをする。今でも信じられない。自分が自傷行為をしていたなんて。それだけ精神状態が不安定だったんだな。そう思った。


「栢野さん。親御さんの他にも会いたいという人がいるようなのですが、大丈夫ですか?」

食事終わりにそう聞かれた。

他にも会いたい人?もしかすると拓哉や哉汰かもしれない。

「はい、大丈夫です」

「では、突然なんですが、今日の14時頃にお伺いするとのことでよろしいですか?」

「はい」

来た時でいいや。その時に状況整理しよう。


「こちらです。」

午後2時頃、お父さんとお母さん、そして由香のお母さんが面会室に入ってきた。

私を見るなり、

「私の娘のせいでごめんなさいね」

とあやまってきた。何が悪いのか分からなかった。そもそも、私が我慢できないのが悪いんだよ?何で謝るの?

なんて返したらいいかわからななくて固まったままだとお母さんが話しかけてきた。

「美由。由香ちゃんが亡くなってからあなたおかしくなったのよ。由香ちゃんのお母さんにも気を使わせちゃったわ。お父さんも切りつけるし、大変だったのよ。」

いやだ。いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、いやだ。責めないで。謝らないで。おかしくなる。頭が整理しきれてない。冷や汗が出る。キンキンの水風呂に思いっきり突っ込みたくなった。いろんな感情が混ざる。悲しい。淋しい。虚しい。悔しい。憎い。身体中から滝汗が出る。お父さんが口を開いた。

「美由....美由は何がしたい?」

はっとなって前を向く。そこには、真剣な眼差しの父がいた。私はこう答えた。

「.........思い出したい。何もかも、覚えてない。あの日から、何も。」

お父さんはそうかと言って黙った。それからしばらくして、口を開いた。全部、全部ウソ無く話してくれた。倒れて病院に入院している時、家での時、ここに来てからのとき。何もかも。藤本さんが傷つけないようになるべくソフトに話を仕上げていたことが分かった。過去の自分は、自分で思っているより、ひどかった。残酷だった。精神状態が不安定すぎで、手に負えなかったという。

面会が終わり、病室に戻った。

「あぁそっかぁ~。バカだな。私」

一人でつぶやく。あのトラック運転手は一体どこで何をしているのか。捕まったということは、面会ができるのか?そう思い、調べてみたら、最大で30年の拘禁刑、過失運転致死罪がつく場合、執行猶予というものもあるらしい。とりあえず、話を聞いてみたい。

あとから聞いた由香母の話によると、ライトが付いていなかったらしい。問いただしたいことは色々ある。でもまずは、拓海と哉太に会うことから始めよう。


ー次の日の朝ー

藤本さんに話しかける。

「私の携帯電話はどこにありますか?高校時代の友達と連絡を取りたいのですが。」

藤本さんは、私の両親に連絡すると言ってその場を離れた。

あの声の正体がなんなのか、その答えが想像を絶するものになることは、今の美由は考えもしないことであろう。

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