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―由香の病室―

由香が昏睡状態になってから、数ヶ月がたった。どうやら轢き逃げ犯は捕まったらしいが、あれから振り返ってみると、私が悪いのでは、と感じてきた。そもそも、私が温泉に誘わなければこんなことにはならなかったのかもしれない。

普通に出した声のはずが、すごくガラガラだった。視界がぼやけてきた。頬に水が流れる。喉が詰まって息がしづらい。

「……ごめんね…」

普通に出した声のはずが、すごくガラガラだった。


私はあれから数ヶ月して、やっと泣くことができた


―教室―

由香がいなくなってから、拓巳は不登校になった。私も、学校にはたまに来るぐらいに気落ちしていた。哉汰も、浮かない顔して笑ってた。目の奥に光がなかった。今、この教室を見て思う。

私達は4人で1つだったんだなと。あれから3人になって、何ヶ月も2人と話していない。話しかけづらい。今日の放課後、拓巳の家に行ってみることにした。

「こんにちは」

返事は返ってこない。

「おじゃまします」

中に入ると、拓巳1人だけみたいだった。拓巳はもう完全に病んでいた。私に気づいても、目も合わせようとしない。

「今から由香のお見舞いに行こうよ」

「……」

「ねえ!」

「………ら……く……る……」

「何いってんの?」

「…たら……く……る…け」

「はっきり言って!」

「行ったら迷惑になるだけだろ!!!」

あまりにも大きな怒声に足がすくんだが、このままではいけない。

「由香が死んだらどうするの!?ほっとけって言うの?!」

こんなにも声が出るなんて初めて知った。拓巳も、目を丸くしてこっちを見ていた。それから目を背けて 行くよ、とだけ言ってから私についてきた。

由香の病室に着くと、拓巳は見たくない、とでもいうように下を向いた。

「私今日、予定あるから先に帰ってる。」

拓巳は返事すらしなかった。固まって、何にもしなかった。おそらくだけれど、由香の命はそう長くない、と由香のお母さんから聞いていた。今はかろうじて生きている。でも、いつ死ぬか分からない。回復の見込みは今のところ無いらしい。しかし、死ぬ見込みも無いのだ。つまりは、由香の体に全てを任せる、ということになる。辛かった。もうすぐ死ぬかもしれない友達の前で、平然と生きている私が憎かった。それ以上に、由香のことなんてどうでもいい、と言っているような何にも知らない大勢のクラスメイトの方が断然憎かった。本当に、色の無い世界になった。まるで動画を止めた時の沈黙と同じじゃないか。そう思った。

―美由の家―

由香は、うちの西の縁側のところの景色が好きだと言っていた。いっそ描いてみたいとも言っていた。哉汰はお見舞いには行っているみたいで、私がお見舞いに行くと、いつも綺麗な花が添えられていた。高校1年からずっと4人一緒だったのに......今まで幸せだった事が嘘みたい。いきなり暗闇に突き落とされた気分。もう嫌だ。私のせいでこうなったのだから。本当にもう、死にたい。ピロン!携帯がなった。誰かからメッセージがきたみたいだった。ロックを開けてメッセージを見る。衝撃的だった。家を飛び出した。あんなメッセージを見たら誰だって衝撃的だろう。普段敬語でメッセージを送る由香の母親だ。

由香母▶早く病室に来て

由香に何かあったのだろうか?それとも、死んでしまうのだろうか?それとも....

頭の中がグルグルだった。転んで血が出ているのも気にせず、ただ真っ直ぐに病院へ向かった。


ー病室ー

ガラガラ

「あっ、きっきました。えっと、、」

由香の病室に入ってなんて言えばいいか分からなかった。由香のお母さんがびっくりしたような、悲しそうな、色々な感情が混ざっている目でこちらを見てきた。そして数秒固まってから言った

「由香ちゃん!?血、血が出てるけど。」

大した怪我じゃない、そう思って傷口を見たら、

「........え、やば」

思った10倍傷の範囲が広かった。血も止まることなく出ていた。正直、このあとの記憶はあまりなかった。でも、なぜか自分が倒れたことだけわかった。気づいたら、ベッドに横たわっていた。

「あまり無理しないでね。」

由香のお母さんは、少しの戸惑いと、ホッとしたような顔をして笑っていた。

このあとに、由香の状態を聞いた。どうやら、少しだけ、心拍数が遅くなったのだとか。今、どんどん遅くなっているらしい。亡くなるのも時間の問題だ。すぐに2人を呼んだ。哉汰は来てくれたが、拓巳は来てくれなかった。パチンコに行っている、と連絡が来たときは、スマホを床に叩きつけたくなった。手だけが震えた。もう卒業間近だというのに、由香が死んでしまったら困る。困るというより、嫌だ。4人で高校を卒業するんだ。そう思っているうちに、どうやら、寝落ちしていたみたいだった。

由香が、死んでいた。

午前4時44分だったという。この「し」の集まった時間に、由香が死んだらしい。縁起が悪い。

それからの記憶は、消し飛ばされた。




...........ミユ?..............ミユ!

美由!!!忘れちゃったの!?起きてよ!美由!!!!!!!







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