渡洋爆撃で九六式陸上攻撃機があっさり撃墜された余波
極端に振るのはある意味日本人の特性か?
最初の渡洋爆撃で大きな損害を出した九六陸攻。しかも敵機はさして速度が変わらないピーシューターであった。
その余波は海軍航空行政の大きな影響を与えた。
その一例が十二試艦戦の重防御だ。
当然他の機体にも重防御が求められたが、九七大艇や九七艦攻は配備開始しており重防御化すると著しい性能低下が明らかだった。発動機と燃料タンクの消火装置でお茶を濁す。九九艦爆も同様だった。
これまでの、超長距離から陸上攻撃機がアウトレンジで敵艦隊へ航空攻撃を仕掛け漸減するという戦法は、図上演習で敵艦隊に護衛戦闘機が多数いれば無防御の機体を護衛無しで送り込んでも撃墜されるばかりで、射点に辿り着ける機体の数がかなり少なかった。そして現代では空母が随伴しないなど考えられなかった。虫の良い漸減作戦の終わりである。
海軍航空本部は次期戦闘機、次期艦攻、次期艦爆、次期陸攻から重防御とすることにした。重防御に伴う重量増加は大馬力発動機と航続距離を減らし搭載燃料を少なくすることで対応するとなる。航続距離は増漕で補えばいいと。
その結果として
十二試陸上攻撃機 性能要求試案
火星発動機双発であること。
速力は、目標値として250ノット。
武装
上部に20ミリ単装旋回機銃装備。旋回銃座は海軍が開発提供する。後部に20ミリ機銃1丁。他は、7.7ミリ機銃を3丁から4丁程度。
航続距離は、500海里進出+戦闘30分を満たせば良い。
落下式増漕タンク使用可。
雷爆装
航空魚雷1本を機体内収容する事。
八〇番1発、五〇番2発、二五番4発、六番以下の小型爆弾10発のいずれかを機体内収容できること。
上記を満たした上で防弾に配慮すること。
十二試遠戦 性能要求試案
発動機は定めない。
速度を第一とする。目標値320ノット以上。
航続距離は、500海里進出+戦闘30分を満たせば良い。
落下式増漕タンク使用可。
武装 20ミリ機銃4丁 7.7ミリ機銃4丁
二五番2発
空戦性能は機敏に動けること。旋回性能は求めない。
上記を満たした上で防弾に配慮すること。
十三試艦攻 性能要求試案
発動機は定めない。
速力は、目標値として250ノット。
航続距離は、400海里進出+戦闘30分を満たせば良い。
落下式増漕タンク使用可。
武装
7.7ミリ旋回機銃1丁。
雷爆装
航空魚雷1本。
八〇番1発、五〇番1発、二五番2発、六番以下の小型爆弾8発のいずれか。
上記を満たした上で防弾に配慮すること。
十三試艦上爆撃機 性能要求試案
速力は目標値300ノット。
航続距離は、400海里進出+戦闘30分を満たせば良い。
落下式増漕タンク使用可。
武装
機首7.7ミリ機銃2丁+7.7ミリ旋回機銃1丁。
爆装
五〇番1発、二五番1発、六番以下の小型爆弾8発のいずれか。
上記を満たした上で防弾に配慮すること。
十三試大型飛行艇など他の機体も防弾に配慮することとなっている。
その結果が
一式陸上攻撃機一一型 十二試陸攻 開発 三菱
全幅 22.0メートル
全長 18.5メートル
全高 4.9メートル
自重 8.5トン
全備重量 14.2トン
発動機 火星一二型 離昇出力 1530馬力
最高速度 240ノット/4300メートル
実用上昇限度 9450メートル
航続距離 1400海里(正規)+400海里(300ℓ大型増漕2本有)
武装
20ミリ機銃2丁 上方単装動力旋回銃座1丁 尾部銃座1丁
7.7ミリ機銃3丁 前方1丁 左右各1丁
航空魚雷1本を機体内収容。
八〇番1発、五〇番2発、二五番4発、
六番以下の小型爆弾8発のいずれかを機体内収容。
一式双発復座戦闘機 嵐風一一型 開発 中島
全幅 16メートル
全長 12メートル
全高 4.8メートル
自重 5.2トン
攻撃過荷重 8トン
発動機 火星一二型 離昇出力 1530馬力
最高速度 330ノット/5800メートル
航続距離 1000海里(正規)+450海里(300ℓ大型増漕2本有)
上昇力 5000メートルまで7分
武装 前方20ミリ機銃4丁 前方7.7ミリ機銃2丁 後方1丁
左右翼下 二五番各1発または六番及び三番2発
天山一一型 十三試艦攻 開発 中島
全幅 14.8メートル 折り畳み時7.2メートル
全長 10.7メートル
全高 3.8メートル
自重 3.4トン
全備重量 5.4トン 攻撃過加重 5.9トン
発動機 火星一二型 離昇出力 1530馬力
最高速度 228ノット/6000メートル
航続距離 700海里(正規) 1300海里(攻撃過過重)
過過重時200リットル増漕左右各1本
武装
航空魚雷1本。
八〇番1発、五〇番1発、二五番2発、六番以下の小型爆弾6発
7.7ミリ旋回機銃1丁
彗星一一型 十三試艦爆 開発 空技廠
全幅 11.5メートル
全長 10.5メートル
全高 3.2メートル
自重 2.6トン
全備重量 4.4トン
発動機 アツタ液冷倒立V型12気筒 離昇出力1200馬力
最高速度 280ノット/4500メートル
上昇力 5000メートルまで10分
航続距離 800海里(正規) 1300海里(攻撃過過重)
過重時200リットル増漕左右各1本
武装
7.7ミリ機銃2丁 機首 7.7ミリ旋回機銃1丁 後方
胴体内収容 五〇番1発、二五番1発 五〇番は爆弾倉扉開状態
両翼下 三番または六番を左右2発から4発または二五番左右各1発
両翼下装備は増漕または爆弾の排他利用。混載不可。
中島の嵐風と天山に中島の護発動機が採用されなかったのは、三菱火星に比べ完成度が低く稼働率も悪いうえに採用機種も少なく、量産性・実用性共にに欠けるとして海軍から火星に変更を促されたため。護発動機はほぼ試作のみで生産を終了した。
彗星のアツタ発動機はドイツ・ダイムラー・ベンツ社とDB600とDB601がライセンス契約済みであったたために空気抵抗減少を狙い液冷発動機にした。空技廠が技術優先で設計したため、他の機体の発注時に付けられた「整備簡便なるをもって良しとする」と言う項目はなあなあになってしまった。それでも量産化時にかなりの簡易化が図られている。
いずれの機体も防弾は留意され、生存性の高さから太平洋戦争で搭乗員の枯渇という事態を防ぐことが出来た。
次回更新 8月03日 05:00です。




