第五話 猪
山に登っていく時に自宅のふろトイレなどの水回りにつながっている2本の樋を、例えるなら草津温泉の湯樋の様な木造の樋を追いかけて行くと、小規模な段々畑であったのか石垣で少し整備されていた様な跡がある、畑には雑草が生え散らかし桑の様な細身の木が生えている、不思議なことは水の通った樋があるのに、井戸から地下水をあげていた様な、葛と苔に覆われ木造の雨除けだってだって腐り倒れた後のある井戸と横に大きな樽がある事で片方の樋はその樽に繋がっている、もう一つの樋に導かれ山の中を進むと少し湯気の出ているように見える小川に繋がった、この樋は確か途中で二股になって一つは風呂のがある所のすぐ外ですぐ温められる様に下に火を炊ける様な金属製の樽に繋がっていたはず、もう一つは下水としてトイレや風呂、キッチンの下を通していてそれで水洗式を実現していたはずである、あの家の風呂は源泉を温め直す事で風呂にしているのやもしらん、それに源泉を下水にするなんて少し勿体無さもあるが家がクサい匂いで充満さるよかマシだわ。頭を少し振り現実に戻ると先程と同じ少し湯気の出て白く濁る小川とその周りには苔や硫黄の結晶に覆われた石や岩、鬱蒼とした針葉樹や広葉樹があり、そして雑草がこぢんまりと店を営んでいる。もう少し進もうと思った時右の茂みから音した、すぐさま見ると猪と思われる奴が居た、その姿はまるで猪だがこんな模様の猪居ただろうか、腹側が少し黒めで背中が灰色と茶色が混ざった様なパッと見岩にしか見えんその姿が緑の世界で少し映えている、そんなことを考えた瞬間に奴がやって来る。
「ヤ゛ッ‼︎」
*「声゛に゛な゛ら゛な゛い゛叫゛びと゛な゛っ゛て゛〜゛」と春にと言う混成3部合唱曲が頭に出たからと歌うのは自分でもイカれてると思うがそれどころじゃないし、「この気持ちはなんだろう」の部分は意味深になってしまう、まぁ50Mほどは走っても巻ける気がしない為振り返り跳び箱の様に飛ぶ事を思い付くとそれを直様して見せた、が彼は考えていなかった、跳び箱は固定しているし上が平らで手を置きやすい事を、向こうはこっちに向かって来ているのだから跳び箱より早く手を離さなきゃいけない事を、しかもお前の右手にはドライバー擬きが握られていることも、故に彼は今踵から砂利の上を滑ってケツを痛めるが痛がっている暇は無い、ジンジンしてまともに立て無い足を使い勘で転がる、その瞬間自分が先程まで居たところを通り過ぎるその瞬間をを横目で見ながら猪と逆方向に思いっきり走る。下は砂利マトモにゃ走れんが所謂アドレナリンのお陰だろうか、足が痛すぎても走れはしたが自分が走ったあたりに目がいくと所々血がついてる、足が出血している様だ。さてもう一度来るぞ!これをどう避けるか!私の答えは飛び込みだ、そう思った瞬間自分の体が宙に浮く、目の前の砂利景色に猪が入ってくるこれで避けれると飛び込み前転を成功させたが左手から血が滲む、右手にはドライバーもどきが握られている、これで倒せると思っていたのが間違いだった、次が来る、その時大きく大の字で構え当たる寸前で左手左足を軸に右が後ろになる様に回転するそのまま続け様に右手右足を軸に猪と同じ方向を向くように回転すると猪に乗る事ができたその瞬間に右手に逆手で持ったドライバー擬きを猪の眉間に突き立てるが表面を掠めるだけで止まらない、左手も添え今度こそ垂直に力を入れるとミシミシと嫌な音と共にザクッと音を立て深く刺さった、猪はいきなり転けるように頭から滑り私も一緒に転げた、立ち上がって猪の頭に刺さったままのドライバー擬きを引っこ抜いたら血が脳髄液で薄められ一緒にピンク色の物体が流れ出て来た、あまりの光景に近くの木の近くで吐いてしまった。