今際の際
息抜き用に始めました。
よろしくお願いします。
『疲れた』
今世の人生を生き抜いた感想はこの一言に尽きた。
現代日本の一般的な家庭に生まれた俺の人生は余りにも卑屈で、他人に厄介ごとを押し付けられる不自由な人生だった。
基本的に争いごと前半が苦手な(他人からは人が良いと言われる)俺は強く出られると断れない性分だった為、俺の実力やキャパシティを超える問題や仕事を押し付けられて、解決出来ず、爆発して、精神的にも社会的にも疲弊して損を被り、無能と評され罵詈雑言を浴びせられる。そんなことの繰り返しだった。
今思うと、そもそも人間として生きるのが不適切な存在だったかも知れない。世間一般的に美徳とされる根性論や努力話などに一切の感動も共感も感じ得なかった。それは人それぞれの事象だし、同じことをやって自分が報われた試しがなかった。努力すればするほど、より大きな課題や問題を押し付けられ、楽になることはなかったからだ。大きな壁を越えた時の達成感や挑戦すること自体が幸せであるという考え方に、何よりも怠惰と夢想をこよなく愛する俺には全くもって理解が出来なかった。
だから、『疲れた』
無理に他人や社会の価値観に合わせて生きてゆかなくてはならない生き方に、疲れたのだ。
だから、次の人生、来世に想いを馳せる。
もう他人との関わり、しがらみに縛られない人生を。
天涯孤独のひとりきりの人生を。
そんな想いを胸に、俺は意識を閉ざし、今世の幕を下ろした。
どうやら、俺の願いは届いたようだ。