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よろしくお願いします!
三つめの『王国の暦の基準となるカレンダー』。
これは、王国で20年に一度作っているもので、作り方自体に知恵を絞らねばならないことはありませんでした。
しかし、20年分の暦を作るのには、それなりに骨が折れます。
これはもう人海戦に頼るしかありません。
父とミチは、女性の召使いたちにも声を掛けました。
男女の召使いが協力し、みんなで手分けして作るのです。
「まさか今年作ることになるとはな。本来の予定だと、あと3年は残っているはずじゃないか?」
「女王の心の中に、今、『カレンダー』を作るようにとこのタイミングで出てきたのだ。
もしや、天変地異か戦争か、本来の運命の予定になかったことがこの3年の間に起こるかもしれないから、天から啓示が降りてきたのかもしれない」
王族は魔力がなくとも、王国にまつわるさまざまなこと——果報も災いも——を敏感に察知する能力を持っています。
だから、その可能性は否めませんでした。
みんなは暗い気持ちになってむっつりと黙りました。
きっとよくないことが3年以内に王国に起こるのだろう。
しかし気を取り直し、『カレンダー』作りにとりかかりました。
腕利きの占い師や魔法使いたちが腕を振るい、向こう20年分の王国の運気を占います。
ある者は星を詠み、ある者は幸運の色や方角を決め、ある者は遥か天竺のまじないを使い、亀の甲羅やウシの骨に浮かび上がる吉兆を読み解きました。
そして、占いの結果は誰もが簡単に読める文面で記すわけにはいきません。
万が一『カレンダー』が他国に流出すれば、王国の吉兆のすべてが知られ、戦争や貿易など全ての外交で不利になってしまいます。
予言は簡単には読めないように、かつ、法則を知る者が時間をかければ解読できるように「予言らしい文章」に仕立て上げねばなりません。
そこで、「ことば使い」たちの出番です。
ミチと父は、古代語と天竺語が交えられた難解な占いの「ことば」を、さらに別の「ことば」に言い換えます。
それらを繰り返し、何重にも「ことば」に鍵をかけていくのです。
手間のかかる作業で、語彙力も相当必要となりますが、父子は黙々と取り組みました。紙漉職人たちは、上等なケナフで二十年分の紙を作ります。
その紙に、美術師たちが細やかな意匠をほどこして、それぞれの日付に父子が作った「ことば」を書き記していきました。
みんな懸命に頑張りましたが、それでもたっぷり3ヵ月は掛かりました。
それぞれに普段の仕事もある中で、なんとか時間を捻出し、お二人の結婚記念日に間に合うように努めました。
次話で最終回です。
どうぞお楽しみに^_^




