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今回は虎です!

よろしくお願いします。

お次は、『ゴールデン・タイガー』です。


「虎は、そもそも金色に見えるじゃないか」という意見もありましたが、ミチたちが作った羊皮紙のメモによると、



——黄金色に透き通り輝く……——


との表記があります。



「透き通る……か。ふうむ、ただの虎ではなさそうだ」



みんな、首をかしげました。すると、文化人類学者が言いました。



「私はそれに心当たりがあります。遠い国の言い伝えですが、虎がバターになるという民話が……」



ミチと父は、なるほどと頷きました。



「とろけたバターは、たしかに『黄金色』かつ『透き通り輝く』と言えますね」



そこへ、猟師が手を挙げます。



「その話なら聞いたことがあるし、俺は目の前で見たことがあるよ。虎をだまして、樹の周囲をぐるぐると走らせるんだ。


何周も何周もすごいスピードで回っていたら、ある時、虎がとろけて、黄金色のバターになってしまうのさ。


そのバターの上澄みが美味いらしいよ。隣国の連中の中に、今でもその猟をやっている猟師がいるんだ」



——なるほど。虎をぐるぐる回らせるのか。


——しかし、バターになってしまっては意味がない。


——女王が欲しいのはあくまで『タイガー』であって、タイガーでできたバターではないだろう。


みんなは頭を抱えます。そこへ、科学者が言いました。



「虎がバターになり切る直前に、回転を止めてやれば、透明な段階のままの虎を捕獲することができるかもしれません。

虎を『ゴールデン・タイガー』の状態で止めるには何回転目で止めればいいのかを、私が計算してみましょう」



科学者は、わずか一日でそれを計算してしまいました。




早速みんなで森へ行き、虎を探しました。

すると一同は一頭の美しい雄虎を見つけました。すかさず道化師が樹に登ります。


道化師の手には、麻ひもに括り付けられた牛肉の塊がありました。

道化師は麻ひもをしっかりと掴み、弧を描くように樹の回りを回転させます。


そして、牛肉を虎に追いかけさせました。


虎は突然樹の上から降ってきたご馳走に大興奮しました。

牛肉を追いかけながら全速力で樹の円周を駆け回ります。

牛肉がずっと鼻先から逃げていくものだから、どんどんムキになります。


召使いたちは茂みに隠れ、声を潜めて虎の回転数を数えました。




——————3、2、1! それ、今だ!



あらかじめ樹の根元に縛りつけ、たるませておいた頑丈なつたを、みんなで「せえの」で引っ張ります。

蔦は見事、虎の足を掬いました。躓いた虎は、つんのめりながら斜め左前方に吹っ飛びました。そして、ごろごろと地面を三回転しました。


巨体の虎が転倒する姿は、かなりの迫力です。みんなは虎に駆け寄りました。



「どうだ? 虎はゴールデンになったか?」


「ダメだ、少しタイミングが遅い……。かろうじて虎の形は保っているけれど、これはもうバターだ」



虎は透き通る身体でふるふるっと身悶えしました。

そして次の瞬間、虎の形を保てなくなり、バシャっと崩れ、地面には大きな溶かしバターの水たまりができました。芳醇な香りがあたりに立ちこめます。



「科学者の計算は間違っていないようだよ。虎を転ばせるタイミングが少し遅かったんだ。2頭目に挑戦しよう」


「なんとか、暗くなる前に終わらせたいね」


そして、2頭目の虎を見つけると、同じ手法で樹の周りを走らせました。

反省を活かし回転数を注意深く数えます。


今度は見事、成功しました。虎は虎の形のままで、黄金色にとろりと輝いていました。

みんなは、あつあつのホットケーキの上でじゅわっと溶け出すバターを連想しました。


その輝く虎を、道化師が巧みに挑発しながら誘導し、檻へとおびき寄せました。

そしてみんなで丸太の上へ檻を乗せ、よいしょよいしょと引いてお城まで帰りました。



「皮膚の薄いところは内蔵が透けて見えて、気持ち悪いなあ」



そんな意見もありましたが、科学者と生物学者の目には悪くないと映るようでした。


「いやいや、とても美しいよ。生命の神秘じゃないか」と、二人とも目を細めていました。



そう言われると、みんなもそんな気になってきました。



「確かに美しい」


美術師までもがそう言ったものだから、みんなはそうに違いないと思いました。

そして、陽が落ちる前に、お城にたどり着きました。


つづきます!

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