(5)
今回は虎です!
よろしくお願いします。
お次は、『ゴールデン・タイガー』です。
「虎は、そもそも金色に見えるじゃないか」という意見もありましたが、ミチたちが作った羊皮紙のメモによると、
——黄金色に透き通り輝く……——
との表記があります。
「透き通る……か。ふうむ、ただの虎ではなさそうだ」
みんな、首をかしげました。すると、文化人類学者が言いました。
「私はそれに心当たりがあります。遠い国の言い伝えですが、虎がバターになるという民話が……」
ミチと父は、なるほどと頷きました。
「とろけたバターは、たしかに『黄金色』かつ『透き通り輝く』と言えますね」
そこへ、猟師が手を挙げます。
「その話なら聞いたことがあるし、俺は目の前で見たことがあるよ。虎をだまして、樹の周囲をぐるぐると走らせるんだ。
何周も何周もすごいスピードで回っていたら、ある時、虎がとろけて、黄金色のバターになってしまうのさ。
そのバターの上澄みが美味いらしいよ。隣国の連中の中に、今でもその猟をやっている猟師がいるんだ」
——なるほど。虎をぐるぐる回らせるのか。
——しかし、バターになってしまっては意味がない。
——女王が欲しいのはあくまで『タイガー』であって、タイガーでできたバターではないだろう。
みんなは頭を抱えます。そこへ、科学者が言いました。
「虎がバターになり切る直前に、回転を止めてやれば、透明な段階のままの虎を捕獲することができるかもしれません。
虎を『ゴールデン・タイガー』の状態で止めるには何回転目で止めればいいのかを、私が計算してみましょう」
科学者は、わずか一日でそれを計算してしまいました。
◇
早速みんなで森へ行き、虎を探しました。
すると一同は一頭の美しい雄虎を見つけました。すかさず道化師が樹に登ります。
道化師の手には、麻ひもに括り付けられた牛肉の塊がありました。
道化師は麻ひもをしっかりと掴み、弧を描くように樹の回りを回転させます。
そして、牛肉を虎に追いかけさせました。
虎は突然樹の上から降ってきたご馳走に大興奮しました。
牛肉を追いかけながら全速力で樹の円周を駆け回ります。
牛肉がずっと鼻先から逃げていくものだから、どんどんムキになります。
召使いたちは茂みに隠れ、声を潜めて虎の回転数を数えました。
——————3、2、1! それ、今だ!
あらかじめ樹の根元に縛りつけ、たるませておいた頑丈な蔦を、みんなで「せえの」で引っ張ります。
蔦は見事、虎の足を掬いました。躓いた虎は、つんのめりながら斜め左前方に吹っ飛びました。そして、ごろごろと地面を三回転しました。
巨体の虎が転倒する姿は、かなりの迫力です。みんなは虎に駆け寄りました。
「どうだ? 虎はゴールデンになったか?」
「ダメだ、少しタイミングが遅い……。かろうじて虎の形は保っているけれど、これはもうバターだ」
虎は透き通る身体でふるふるっと身悶えしました。
そして次の瞬間、虎の形を保てなくなり、バシャっと崩れ、地面には大きな溶かしバターの水たまりができました。芳醇な香りがあたりに立ちこめます。
「科学者の計算は間違っていないようだよ。虎を転ばせるタイミングが少し遅かったんだ。2頭目に挑戦しよう」
「なんとか、暗くなる前に終わらせたいね」
そして、2頭目の虎を見つけると、同じ手法で樹の周りを走らせました。
反省を活かし回転数を注意深く数えます。
今度は見事、成功しました。虎は虎の形のままで、黄金色にとろりと輝いていました。
みんなは、あつあつのホットケーキの上でじゅわっと溶け出すバターを連想しました。
その輝く虎を、道化師が巧みに挑発しながら誘導し、檻へとおびき寄せました。
そしてみんなで丸太の上へ檻を乗せ、よいしょよいしょと引いてお城まで帰りました。
「皮膚の薄いところは内蔵が透けて見えて、気持ち悪いなあ」
そんな意見もありましたが、科学者と生物学者の目には悪くないと映るようでした。
「いやいや、とても美しいよ。生命の神秘じゃないか」と、二人とも目を細めていました。
そう言われると、みんなもそんな気になってきました。
「確かに美しい」
美術師までもがそう言ったものだから、みんなはそうに違いないと思いました。
そして、陽が落ちる前に、お城にたどり着きました。
つづきます!




