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女王陛下のお願いとは?!
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半年後に女王と王の結婚記念日がやってきます。
愛する王のために女王は、特別な贈りものをしようと考えており、何を贈るべきか、すでに女王の胸の中にアイデアがあるといいます。
しかし、それが何なのか、女王ははっきりとわからないのです。
「何か」があるのはわかるのですが、それが具体的にどういうものか、うまくことばで表現できません。
女王が女王自身の「贈りたいもの」を知るためには、「ことば使い」の力が必要なのです。
ミチたち「ことば使い」の巧みな質問によって、女王の心の内部にあるものに、さまざまな角度から光を当て、ぴったり当てはまるものをことばで言い表して欲しい、という依頼でした。
なるほど、だから我々父子が呼ばれたのか、とミチは合点がいきました。
「贈りたいもの」が何かわかったのちに、しかるべき部署や職人に要件をつなぎ、実物を用意させるとのことでした。
「女王さまのお話は、こういうことでよろしいしょうか?」と、ミチがまとめると、女王は
「そうそうそう! それなのよ。そういうことね」と、大きく頷きました。
ミチがさらにまとめます。
「何かが欲しいのに、何が欲しいのかうまく言えずに、途方に暮れていらしたのですね」
女王はさらに大きく、「そのとおり!」と、扇をパッと広げました。
「お察しの通り、『ことば』には、思いをあぶりだす力がありますからね。
さまざまな角度から質問にお答えいただくことで、女王さまのお心の中にあるものの輪郭を、くっきりと照らし出すことができるでしょう」
女王は、父の発言にも繰り返し頷きました。
「さすが『ことば使い』ね!」
「光栄です。必ずや、ご期待に応えてみせます」
◇
翌朝からミチと父は、仕事に取り組みました。女王が王に贈りたいものとは一体何なのか。
それをあぶり出すための作業は、思いのほか難航しました。
女王の顔を直視するなどと畏れ多いことは、どんなときでもしてはなりません。
そこで、ひたすらことばだけを使って答えにたどり着く必要があります。
表情が見えないということは、情報の半分くらいがないも同然で、なおのことたくさんのことばを使いこなさねばなりません。
かといって、あまりに質問攻めにすると、女王も疲れて口数が少なくなっていってしまいます。
いかに最低限の質問で、欲しい答えに近づいていくか。
踏み込むべきところは、大きく踏み込み、繊細に問うべき部分は、細かに聞いていきます。
ミチと父は、さまざまなことばの陰影を使い分けながら、女王への質問を重ねていきました。
女王は途中で何度も「ああ、ここまで出掛かってるんだけど!」と、扇の先で喉のあたりをちょんちょんと押さえました。
開いたドレスの襟元から、あえやかな呼吸に上下する鎖骨が見えます。
思いは、たしかに彼女の胸の中に息づいているのです。
ああ、早く彼女に適切なことばを与えてやらねば。
聞き取りメモを整理し、答えを検証していきます。
そして再び、足りない質問を洗い出しました。まとめたメモを囲んで、父子は話し合いました。
「父さん、この行とこの行を見てください。どうも『贈りたいもの』とはひとつではない感じがします」
「そうだな、それにどうも普通のものではなさそうだ。
たとえばこのことばだ。『チカチカと瞬く』とか、『金色の』とか。
ものの様子や色や素材感を表しているようだが、本来光ったり金色であるものではないものを、このことばは装飾しているのかもしれない。
だとすれば……それは、今現在この世にないものの可能性が高い。
だから女王さまも、心に浮かんでいるものを的確に言い表せないんじゃないか」
「そんな感じがしますね。となると、わかったあとも実際にそのものを探すのが大変になりそうです」
「うむ。場合によっては、魔法使いたちに頼んで生みだしてもらわないといけなくなるかもしれない」
——これは、大掛かりになりそうだ。
それでも、やはり根気よく女王のことばのあぶりだしを続けていくしかありません。
ミチと父は気を取り直して、つづきの質問項目を羊皮紙に書き出していきました。
続きます^_^




