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ファンタジーな作品、はじまります!
お楽しみください〜
ミチは、王国に仕える「ことば使い」でした。
ミチの祖父も父親も、同じく代々この王国に仕え、王国でのできごとや人、歴史を美しい『ことば』で記録する「ことば使い」の職についています。
ミチの祖父はもともと吟遊詩人で、さまざまな詩や物語を吟じながら、諸国を渡り歩いておりました。
そこを当時の国王に気に入られ、この王国に骨を埋めたと伝わっています。
ある日、ミチとミチの父親は女王から呼び出しを受けました。
たのみごとがあるというのです。
この国の風習ですが、たとえ愛し合っていたとしても、高貴な男女は居住をともにしません。
だから、同じ敷地の中に、男女の宮殿が分かれて建造されていました。
父子は、女性が住まう宮殿へと赴き、女王の間を尋ねました。
美しい珊瑚細工——王国の伝統工芸です——の椅子に座る女王陛下の前に、父子は揃って跪きました。
「顔をお上げなさい」
女王が言います。
彼女の声は、鈴が鳴るように美しく、凛とした趣がありました。
ミチは顔をあげつつも、目線は地面に落としました。
女王の顔を、まじまじとと見ることは無礼にあたるからです。
父ももちろんそうしていました。
女王は早速用件を切り出しました。
「あなたたち『ことば使い』の親子に頼みたいのは、王に贈る贈り物のことです」
「贈りもの、ですか?」
父親が地面を見たまま答えました。
「それは素晴らしい。もちろんご協力しますとも」
そして、尋ねました。
「して、どのようなものを贈られるのですか? 私たち『ことば使い』が呼ばれたということは、つまり……」
女王は、おしゃべりは大好きですが、文章を書くのが大の苦手でした。
だからこれまで何度も、外交や親戚付き合いのための手紙や詩を、ミチたち親子は代筆してきたのです。
「そうね、いつものように詩もお願いするわ。けれどなんといっても、今回は……ううん、ことばで説明するのが難しいのよ。それであなたたちを呼んだのだけど……」
女王のせつない声に、ミチも父も思わず顔をあげました。
女王は、畳んだ扇の先を顎に当て、眉間に皺を寄せていました。
父子は慌ててまた地面に視線を落とします。
女王は、ミチたちのその動きなど意に介さずに、話を続けました。
女王の話は右往左往して、なかなか要領を得ませんでしたが、ミチと父はなんとか概要を理解しました。
女王の話をまとめると、こういうことです。
続きます!




