婚約破棄(1)
今回は婚約破棄(1)の話です。
「私はロネヴィアとの婚約を破棄する」
学園創立百五十周年記念パーティーでセカンが婚約者のロネヴィアとの婚約を破棄すると宣言した。
「理由は真実の愛に目覚めたからだ」
理由は真実の愛とかいう、馬鹿馬鹿しい内容だった。
「そしてピンクと新たに婚約を結ぶ」
そしてピンクと新たに婚約を結ぶという戯れ言を吐いた。
「セカン様、嬉しい」
セカンの隣に居た桃色髪の少女が歓喜に満ちた表情でセカンに抱き付いた。
あちゃ~、本当に婚約破棄しちゃたよ。
でも賭けは私の勝ちだな。
モモカは呆れると同時に歓喜した。
愚弟め、やらかしおったな。
ファス皇女は大きな溜め息を付いた。
ロネヴィア嬢との婚約を破棄するなんて、兄上は何を考えているんだ。
サド皇子は呆れてしまい、冷たい眼差しでセカンを見つめた。
「あの恥知らずな令嬢は誰なの」
「確かボツラ男爵家のピンク嬢だ」
「公爵家令嬢との婚約を破棄して男爵家令嬢と婚約するなんて、ご乱心なされたのかしら」
「皇子にあるまじき失態だな」
「これで皇太子は第二皇子のサド殿下に決定したな」
「それはどうかな。第一皇女のファス殿下かもしれないぞ」
「どちらにしてもラバン公爵家次第だな」
「おそらくラバン公爵家はセカン殿下を支持する派閥からは撤退するだろうしな」
「そもそもラバン公爵家が後ろ楯だったから皇太子レースに参加出来ていたのにな」
「我々もセカン殿下を支持する派閥からは抜けよう」
「泥舟なんかに乗っていられない」
周囲の反応は冷やかだったが、自分達に酔いしれる二人は気付かなかった。
「ロネヴィア、お前はピンクに数々の嫌がらせをしただろう」
更にロネヴィアがピンクに嫌がらせをしたと戯れ言を吐いた。
「私は嫌がらせなど行っておりません。そもそもボツラ男爵家令嬢とは初対面です」
「デタラメを言うな」
「嘘です。素直に罪を認めて下さい」
ロネヴィアが否定しても、セカンとピンクは聞く耳を持たなかった。
次回は婚約破棄(2)の話の予定です。