⑤番外編 特別ゲスト
中学の夏休みに夏期講習に行った。こちらは、お寺の塾ではなく普通の塾だった。
英語の授業の時のこと。私の席は最前列の端っこで、左側は壁だった。私の右側には別の中学の男子が座っていた。
気づくと彼は、盛大に船を漕いでいた。
最前列で勇気があるな……と思う一方で、先生が怒るんじゃないか……と心配になった。
というのも、先生が彼の居眠りに気づいていたから。怒った拍子に、先生が手に持っているマーカーを投げるのではないか。そしてそれが、彼にではなく私に当たるのではないか。
私の心配性は炸裂した。途端に気持ちが、そわそわした。
その後も授業は続く。先生は時々、彼に目をやるも怒らない。彼は依然として船を漕いでいる。もはや机に頭を打ちつけそうな勢いだ。
私も気が気でない。先生が怒ってマーカーを投げるのが先か、彼が机に思い切り頭をぶつけるのが先か。
その日の授業では、スポーツの綴りを習っていた。先生がホワイトボードに、野球→baseball というように書き上げていた。
先生が「じゃあ、サッカーは?」と言った時、突然、船を漕いでいた彼が、動きを止め
「S.O.C.C.E.R」
と、はっきり答えた。
すごいな。寝ながら授業を聞いていたのか。
先生も一瞬、唖然とした後
「そう。S.O.C.C.E.Rですね」
と、何事もなかったかのように授業を続けたのであった。
〜同窓会を終えての感想〜
こんな個性的な人が、私の人生にはいたんだなぁと思い出しました。
これからも、いろんな個性的な人に出逢えたら幸せです!