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第4話

魔伝車で15分。

ひさびさの中央駅。

とにかくここは心が浮き立つ場所だ。

服とか小物とか街とか人とか車とか、とにかく郊外にはないきれいなものを見るだけで何だろう、ひたすら癒されまくるのは。


「ヨナミ、だよね?」


不意に声をかけられ、まじまじと見る。


「レイチ?まじでか」


二人して驚き、手を取り合った。


「かなり久しぶりじゃない?」


「3年ぶりだよね。そういやこの辺で働いてたんだっけ」


「そうそう、このビルの隣のビルだよ」


「まじかー。研究職って田舎のイメージあるのになあ。やっぱ外資は違いますよね」


「まあ、私は研究できればどこでもいいんだけど。せっかく会ったんだし、ちょっと時間ある?」


レイチに連れられてカフェに入り、近況を確かめ合った。


「そうそう、学科で現場に行ったのって、ヨナミだけだよね」


「だね。研究職はもう無理だなって大学で悟っちゃったからね」


「ヨナミはとにかく実践派だったから。魔法を研究するよりも使いこなす方が断然向いてたよ。正直実践系の学部のやつらもヨナミにまったくかなわなかったじゃん、体育でさ」


「あ、あったねー。なつかしいな」


融けていく氷を見ながら、私は溜息をついた。


「でも現場は現場でさ、自由度もほとんどなくて、結局会社の指示で動くしかない歯車だなって思うよ。こんなことなら研究職選んで自由に研究してた方がよかったんじゃないかって思ったり…」


レイチは顔を曇らせ、ささやくように話し出した。


「ジョイっていたじゃん、学科で一番だった子。あの子、今年研究で不正が見つかって大変だったんだ」


「え?あのジョイが?」


「そう。一番いいポスト手に入れたはずのジョイが、結果を捏造しないといけないほど研究で行き詰ってなんてさ。全然わかんなかったよ。結果が出なきゃ予算もらえないし、自由にやらせてくれるっていっても会社って利益になんなきゃさ、どうしようもないから」


「うー-ん」


私は考える。ジョイのこと。はっきりいって、好きだった。でも彼女がいたし、何より私と釣り合うなんてとても思えなかったから、付き合いたいなんて考えたこともなかった。

そのジョイがなあ。社会って厳しいなあ。


「そんな私ですが、実は大物捕まえちゃったかもしれないんですよ」


レイチがいたずらめいた笑顔を浮かべた。


「どいうこと?」


「魔魂測定装置。その測定の適当さってなかなかじゃない?」


「あ、そうだ!!そのせいで私異動させられたんだよ!!!」


「えっ…それは大変だね。そんな時期にごめんね」


「いや、まあ。異動もそう悪いことばっかりじゃないし」


トヨタさんの顔を思い浮かべながら、ぽつりとつぶやく。


「じゃあ続けるね。魔魂測定がなぜ難しいかと言うと、計測できるのは魔力なわけ。生き物の場合、魔魂が元としてあってそこから発生するのが力、つまり魔力で、計測できるのは魔力しかない。魔魂は魔力から推定した値しか出せない」


「それでそれで?」


「じゃあ魔魂そのものは測れないのか?私はそう考えたのです」


「そんな計画、よく会社で通ったね。稟議通すの大変だったんじゃない?」


「なので黙って隠れてやってました。まあ、それなりに自由に機器とかデータ使える環境だったしね。で、昨日、試作品ができたんだ」


「タイムリー」


「そう、タイムリー。ヨナミに試してもらえって神様が言ってんじゃないってくらいタイムリー」


そういや人事部長も言ってたな、会社にとって一番の問題は私の魔魂を測り間違えた会社のシステムだって。

これは会社にとって、いや私にとっていいコラボレーションとなるのでは?

前の部署に戻れるチャンスなのでは?

トヨタさんとあの地下で過ごした日々が楽しい思い出となる未来が描けるのでは?


「レイチ、その装置貸して」


今夜はストロングなあいつ飲んでる場合じゃないな。

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