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第1話

「バソキアッ!」


巨大なコウモリの動きがぴたりと止まる。瞬間的に確認する。0.12魔魂消費。なるほど、これ以上は規定オーバーになりますな。


「マイリさん、動き止めたんで、悪いんですけど攻撃いいですか?」


「え?私、ですか?」


不満を全身にみなぎらせながら、マイリさんはだらだらと立ち上がった。


「ええ、マイリさんだからこそお任せするんです。あなたの実力をもってすればあんな魔物なんて速攻ですから」


「わかりました、わかりましたよ。やりますから、変におだてないでください」


何だこいつ、早くやれよ。ああ、まじ他人使うって面倒なんすけど。


「さ、そこで炎系の呪文を。マイリさん、いいですよぉ。そうそう、あまり出力上げずに、ゆっくりでいいですから。できるだけ魔力使わないでくださいね。先月はちょっと規定オーバーしたみたいですから。あ、ユリアさんはだいじょうぶです。そこでいったん待機しておいてください」


「それって…私が派遣だからですか?」


ユリアさんが頬を赤くして上気した顔で聞いてきた。


ああ、まじ勘弁してよ。


「いえいえ、そんなんじゃなくて、あの魔物の体力から考えてです」


「じゃあ、私が女だからですか?」


「え?マイリさんも女性なんで…それはないです」


「じゃあっ」


強烈な光が差し込み、ユリアは思わず口をつぐんだ。


ジャッ、と魔物が蒸発するとともに、純白の鳩が私の目の前に降り立った。


ぞわっ


肌が泡立つこの感覚。そう、これが噂に聞くあれなんだ。


「魔魂の明細の件につき、至急人事部まで来られたし」


何だその言葉遣いは。鳩のくせに。


でも、人事。これは人事の鳩であり、故に人事の目であり耳であり口でもあるんだ。


むかつきながらも私は、承知の印に鳩の胸に魔印を刻んだ。


クルッックゥ


鳩は満足気に飛び立った。


はあぁああああ。一体何なんだよ。人事から呼び出しなんて初めてだよ。まじめんどいし、何より怖ぇえよ。


「あのー、さっきの続きなんですけど」


ええ、まじで勘弁してよ。私だってまだ入社3年目のペーペーなんですけど。あんたらの面倒ばっか見てらんないってんだよ。


「そうですね、ユリアさんが魔物の気を引いてくれたおかげで人事部の鳩が魔物に攻撃当てることができましたね。今回は、ユリアさんとマイリさんのお二人で倒していただいたようなものです。本当にありがとうございました」


「えっ、それってあんまりじゃないですか?」


背後からマイリさんの叫び声。そりゃそうだよな。


「あ、当然マイリさんの消耗した魔力分の補填はさせていただきますし、魔物に直接向き合った危険手当も付きますよ。それより何より、お二人とも怪我がなくてよかったです。会社にはしっかり報告させていただきますので。では、人事から呼び出しくらったんで、まことにすいませんが、ちょっと失礼させていただきます」


「バソキアッ!」


私は呪文を唱え、その場をあとにした。

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