5.魔術大会
魔術大会の日はあっという間にやってきた。
野外ステージで、周囲には魔法によって被害が出ないように結界が張ってある。
もちろん観客席にも。
空は晴れ渡って雲ひとつない魔術大会日和。
私たちのチームは一年生の最後だ。
一年生から始めて、二年、三年の順番。
魔術大会は生徒だけでなく、生徒の親族や魔法省の役人も、観覧することになっている。
今日は何と言っても、ヒロインが巻き込まれるイベントがある。
今まで、ユリアはこれといったイベントを起こしていなさそうだし、攻略対象者の誰とも仲良くなさそうなところが不思議だけど、今日は怪我人が出るかもしれない。
誰なのかは思い出せないけど、魔力を暴走させて、次の出番をステージ裏で待っていた人たちが怪我をする。
それをユリアが光魔法で癒して治療し、力を使い過ぎて倒れたユリアを攻略対象者の中で今、一番好感度の高い人がお姫様抱っこで保健室まで運ぶのだ。
怪我人が出ないようにするには、ステージ裏にも結界を張ればいいはず。
でも、ユリアのイベントを邪魔していいのか。
邪魔することによって、レティシアに影響があるのか。
断罪に繋がったりしないのか。
悩みに悩んで、やっぱり、怪我する人が出るのはよくないな。漸くそう結論を出した。
でも、私は結界を張りながらステージでも魔法を使える程、器用に魔法を扱えない。
と言うことで、先生に丸投げしよう!
「エント先生、ちょっとお話があるのですがいいですか?」
「なんだ?」
他の先生との話が終わったタイミングで声をかけた。
「ステージ裏なんですが、あそこには結界が張られてませんよね?何かあった時、ステージ裏では対処できないと思うので、そこにも結界を張ってもらうことってできますか?」
エント先生はちょっと驚いたように目を見開いた。
「あぁ、そうだな。今まで問題なかったから考えたことがなかったが」
暫しの間、考えると
「分かった。わたしが結界は張っておくから安心してくれ」
エント先生が請け合ってくれた。
これで安心して魔術大会に参加出来る!
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
先生に丸投げできたのが嬉しくて満面の笑顔でお礼を言って、その場を離れた。
「レティ、どこ行ってたのよ!」
出番が近くなるまでいることになっている観客席でソフィたちが待ち構えていた。
「ちょっと、先生に用事があって。どうしたの?まだ時間があると思うけど」
「これを着て」
ソフィが黒いローブを差し出してきた。
「これは?」
「みんなでお揃いのローブを作ったのよ」
ソフィは自慢げに自分も羽織っているローブの裾を摘んで見せた。
おぉ、これは如何にも魔法使いっぽい!
しかもお揃い!
「すごい!嬉しい!」
嬉々としてローブを羽織って見せた。
「これはただのローブじゃなくて、防御を上げるおまけ付きだよ」
ソフィがニコニコして言う。
「え?これ高いんじゃない?」
「大丈夫!うちで扱ってる商品で、お試しするからってもらってきたんだ」
ソフィの家は子爵家で割と大きな商会を営んでるのだ。
「ありがとう。今日は頑張ろうね」
学院長の開会の挨拶の後、一年生のステージが始まった。
やっぱり、まだ一年生は出せる技が少ないので、見どころが少ない。
淡々とプログラムは進んでいく。
魔力を暴走させるのは不慣れな一年生かと思っていたけど、何事も起こらなかった。
このまま、何も起こらないといいけど…
ステージ裏に行くとエント先生がちゃんと結界を張っていてくれた。
「よし!じゃあ、練習通りにやろう!」
アルバートが声を掛けて、私たちはステージに立った。
まずライガが雪を降らせる。
そこに、アルバートが小さな雷を出して、雪があちこちで輝く。
次にジェフが炎を出して雪を溶かす。
私は植物を芽吹かせ、色とりどりの花を次々と咲かせる。
ソフィは風を操り、花びらを舞いあげ、くるくると渦を巻く。
ライガが花びらを凍らせると、花びらが粉々になって、キラキラと舞い降りた。
キラキラと舞い散る様子に、みんなが魅入っていた。
次の瞬間、会場中から拍手と歓声が沸き起こった。
やり切った!
私たちは観客の反応に満足して、五人で礼をして、ステージを後にした。