30.デート⁉︎
一週間後、ライガと二人で出かける日がやって来た。
今日こそは、ちゃんと自分の気持ちを伝えなくては!
でも、拒絶されたら…悪役令嬢レティシアが爆誕しちゃうかも?
楽しみでもあり、怖くもあり、ぐるぐると感情が行ったり来たり。
ライガに買ってもらった髪飾りをつけて、戦闘準備オッケーだ。
大丈夫。
だって、レティシアはポテンシャルが高いんだから。
若干悪役顔だけど、意地悪だってしたことない。
嫌われてはないはず…と思う。
なんとか自分を鼓舞して、待ち合わせ場所にたどり着いた。
「お待たせ」
先に着いていたライガは、白いシャツに紺色のズボンを履いていて、普通の格好なのに長身で顔立ちが整っているからか目立っていて、道行く女の人が振り返っている。
意識してなかった時には考えたことがなかったけど、私、隣にいて大丈夫かな?
不安になるけど、今更出直すなんてできない。
私を視認すると、濃紺の瞳を細めてふっと笑った。
「その髪飾り、つけてくれたんだ」
その笑顔にどどーんとダメージをくらった。
自信が一気に揺らぐ。
「うっうん」
絶対、顔が赤くなってる〜!
「どこか行きたいとこある?」
しまった!
私が誘ったんだから、私が行くところを考えてこないといけなかった?
「えっと、私、あんまり街の中とか分からなくて…ライガの行きたいところで」
ごめんなさい!お任せで〜!
適当に街をぶらぶらしようっていうことで、のんびりあちこちのお店を覗きながら歩いた。
人混みを歩くのが下手くそな私は今日もまたライガと手をつないでいる。
そうしないと迷子になること間違いない。
手汗は気になるものの、如何にもデートっぽくてすっかり浮かれていた。
そして、災難は忘れた頃にやって来るのだ。
ちょっと歩き疲れた私は公園のベンチで、ライガが飲み物を買ってきてくれるのを待っていた。
ぼんやりとライガの姿を目で追っていると、女の人に声をかけられている。
ちょっと離れただけで、これとは!
やきもきしていると、ちゃんと断ったのか女の人は去って行った。
ほっと一息ついていると、急に目の前に若い男の人が立った。
邪魔だな〜と思って見ていると
「お姉さん、綺麗だね。これから俺と一緒にお茶でもしない?」
にやにやしながら話しかけてきた。
ナンパか⁉︎
驚いていると、手を引っ張られた。
「離して!」
振り払おうとするけど、男の力の方が強くてびくともしない。
力で敵わないなら、魔法でって思っていたら、男の顔が引き攣った。
「何やってるの」
ライガが戻ってきた。
今まで見たことがないくらい冷たい顔をしている。
ゆっくり振り向いた男は、ひぃっと声を上げた。
男が掴んでいる手がやけに冷たいと思ったら、凍ってる。
男は慌てて手を離して、脱兎の如く逃げて行った。
「ありがとう」
すっかり冷たくなってしまった男に掴まれていた手首を擦っていると、ライガがはーっとため息をついた。
「ほんのちょっと目を離した隙にまたトラブルに巻き込まれてる」
「またって」
そんなにトラブルに巻き込まれてないと思うけど。
「自覚もないし」
ライガは隣の席にどさっと腰を下ろした。
「大丈夫?」
さっき掴まれた手を取って撫でた。
「だっ大丈夫」
いっ今?今言うタイミング?
「あっあの!私、ライガのこと、すっ好きなの!」
思い切って言い切った。
ライガはびっくりした顔をした後、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ありがとう。俺もレティのこと好きだよ。先に言われちゃったな」
「ほっ本当に?」
「本当に」
こっこれは両思いってやつ?
前世と合わせても初めての両思い!
この場でクルクルと踊り出したい気分。
「ちゃんとしてから、言うつもりだったんだけど、これから頑張るから」
?何を頑張るんだろう?
よく分からないけど、とにかく、よかった〜
その後は、あまりに浮かれ気分でどうやって帰ったのかもあんまり覚えてないくらいだった。




