16.新学期
ライガのご両親は穏やかなとてもいい人たちだった。
さすが優しいライガのご両親だ。
カーナード侯爵もマシューも思っていたより話しやすかったし、結構楽しく過ごせた。
結局、夏休みの多くの日をカーナード侯爵家の領地で過ごすことになってしまった。
そして、夏休みが終わり、今日から新学期。
「二か月後には魔物討伐実習がある。それに向けての訓練を行っていく」
エント先生がこれからの予定を説明していく。
魔術学院を卒業後は魔術師団に入る人も多い。
魔術師団は主に魔法を使って各地で時折現れる魔物を討伐をする部署だ。
魔法を使わない騎士団と共闘することもあるので、魔物討伐実習は騎士団の人も何人か参加しての共闘の訓練でもある。
まだ一年生なので、先陣を切る訳ではないが、危険が全くないこともないので、下準備が欠かせない。
公爵令嬢としては魔術師団に入るってことはないだろうけど、万が一断罪されて市井に放り出されたり、国外追放された場合には冒険者になるかもしれない。
ここはしっかり学んでおかないと!
密かに決意してると、今回のグループ分けが発表された。
今回は各々の実力、魔法のタイプによって、教師によって決められているのだ。
グループのメンバーを見た瞬間、目眩がした。
何故?
どうして攻略対象者全員とヒロインと同じグループなの⁉︎
あぁ、そういえばこの魔物討伐訓練はイベントなんだ…
「レティと一緒のグループになれてよかったわ」
呆然とグループのメンバー表を見ていると、ソフィが嬉しそうに声をかけてきた。
いつの間にやら、エント先生はいなくなっている。
「そうね。ソフィと一緒になれてよかったわ」
なるべくなら、ヒロインたちには近づきたくない。
ゲームと関係のないソフィと一緒でよかった。
よく見たら、ライガも一緒で、魔術大会で同じチームだったメンバー勢揃いだ。
よく知っているメンバーと一緒なのは嬉しい。
どんなイベントかというと、魔物討伐訓練で想定以上の強い魔物が突如現れて、苦戦することになる。
怪我人が何人も出て、ヒロインが癒しの力で癒して、それをきっかけにみんなから注目される存在になっていくのだ。
ということで、突然強い魔物が現れることが分かっているだけに、ライガたちと一緒であるのは心強い。
「今日は早く終わったし、カフェに一緒に行かない?チーズケーキの美味しいいいお店を見つけたんだ」
ソフィのお誘いに今までのちょっと憂鬱な気持ちが一気に晴れていく。
街には家族以外と一緒に出かけたことがないし、そもそもカフェに行ったことがない。
友達とカフェに行くなんて素敵過ぎる!
「行く!カフェに行くの初めてよ」
ニコニコして答えるとソフィは驚いた顔をして、すぐに嬉しそうな表情に変わった。
「そうなんだ。美味しいカフェだから、期待しててね」
「そうだ。ライガも行かない?」
ソフィは近くにいたライガも誘った。
「女二人じゃなんかあった時心細いし」
「別にいいけど」
ライガが言いかけた時
「俺も一緒に行きたい。ボディガードなら最適だよ」
ジェフが手を挙げた。
その様子を見てソフィはクスクス笑った。
「いいよー。じゃあ、四人で行こう」
レティシアにとって初めてのカフェにウキウキで街に出掛けた。




