10.婚約者候補⁉︎
定期テストが無事終わった。
さすが王子様、アルバートが1位だった。
クロード、マシューと続き、なんとライガが4位。
意外とライガは勉強ができた。
5位が私。
もうちょっと上位に行きたかったけど、あんまり目立ちたくもないから、今回は良しとしよう。
ソフィもジェフも20位前後で、まぁまぁだったようだ。
気になるユリアは大体真ん中で、ゲームでは上位に食い込む成績だったはずで、これまたゲームとは全く違う。
もうゲームのヒロインと同一人物と思わない方がいいのかと思うけど、油断したところで、足をすくわれても困るので、一応、まだ警戒は弛めることはできない。
何はともあれ、テストが終われば、夏休みに入る。
朝の日課となっている子犬のウィルに会いに行った。
「ウィル〜、明日から夏休みに入るから会いに来られなくなっちゃう」
いつものようにもふもふを堪能する。
「ちゃんと、飼い主がいるのかな?」
夏休みの間にウィルがちゃんとご飯をたべられるのか気になる。
もし、飼い主がいないなら、屋敷に連れて行こうかと内心考えていると、大丈夫!と言わんばかりに尻尾をふりふりした。
「大丈夫なの?」
ウィルはまた尻尾をふりふり。
ウィルは賢くて、こっちの言っていることが分かるようだ。
連れて帰りたいけど、ちゃんと飼い主がいるなら、そんな訳にはいかない。
今日の貢ぎ物のサンドイッチを出した。
「そっか、じゃあ、また夏休み明けに会おうね」
ウィルのもふもふに暫しのお別れだ。
「お父様、お母様、お兄様、ただいま戻りました」
家族は私が帰るのを待っていてくれた。
家族に嫌われてなくて本当によかった!
学院での生活や友達の話などをして、楽しく晩餐まで過ごした。
だけど、楽しかったのはそこまでだった。
屋敷に戻ってきて一週間程経った頃、お父様に呼ばれて執務室を訪れた。
「学院での生活が楽しそうでよかったよ。学院に入るまで、お茶会にも行ったことがなくて知り合いもいないだろうから、心配していたんだ」
お父様は優しく微笑んだ。
「はい。思っていた以上に楽しいです」
心配してくれていたんだなと思うと、嬉しくてニコニコしながら答えた。
「それでだ。お前にもそろそろ婚約者を決めねばならない」
お父様の言葉の意味がよく理解できない。
は?婚約者?
どこに、話の関連性があるのかも分からない。
確かに公爵家の娘ともなれば、政略結婚は当たり前。
幼い頃から婚約者がいるのもザラだ。
それは分かってはいるけど…
「今まで、表に出て来なかったレティシアを実際に見て、申し込みが殺到しているんだ」
お父様は憂鬱そうにため息を吐いた。
え?
学院に、通っているだけで?
地味で目立たないように気をつけていたのに?
「わたしとしては、結婚なんてしなくてもいいんじゃないかと思っているんだがね」
娘大好きなお父様はちょっと悲しそうな顔をした。
「とにかく、良さそうな話をピックアップしておいたから、見ておいてくれ」
お父様はびっくりして、目を瞬かせるばかりの私にお相手の釣り書き数枚を手渡した。
「ちなみにカーナード侯爵の嫡男のマシュー殿が第一候補だから」
お父様の言葉に思考が止まる。
マシューってあのマシュー?
同じクラスの?
攻略対象者の?
どうやって自分の部屋に戻ってきたのか分からない程、呆然としていた。
アルバートとの婚約を回避して、すっかり安心しきっていたここにきて、なんで??
というか、マシューには婚約者いるんじゃないの⁉︎
攻略対象者には、それぞれ婚約者がいて、ヒロインの恋敵になるようになっていたはず。
だから、ゲーム開始時の学院入学の時には婚約者がいるものだと思っていた。
もうゲームの内容は大幅に変わっているのは分かっているけど…
今、何故、レティシアの婚約者候補⁉︎
噴水に突き飛ばされた時にローブを借りたくらいで、あとはこれと言って交流はなかった。
これは政略的なやつ?
普通に断って大丈夫なのかな?
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