ソフィアの思い出
今回はソフィア様の思い出を書いてみました。
ソフィアは貼り出されている試験結果を見ながらアリッサとの出会いを思い返した。
自分が前世の記憶を取り戻したのは、アカデミー入学の2ヶ月前。
制作に関わっていたいわくつきの乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった衝撃に高熱を出して寝込んでしまい、屋敷の使用人達との関係は改善する事が出来たが、断罪回避の対策などなにも出来ずに入学を迎え、自分のこれからに絶望していた。
ゲーム内容は頭に入っているけど、どうしようも無い絶望から感情を抑えられず、人気の無い中庭で泣いている時、校舎の方から自分の方へ向かってくる者の気配に半ば自棄になっていた。
「如何なされました」
礼儀正しい洗練された態度だと解っていても、どうせ自分の事を笑いに来たのだ、と思うあまり
「いえ、なんでもありません」
なんて、つっけんどんな返事をしたというのに彼女は立ち去らずに言葉を掛けてくれる。
「そうですか、悪役令嬢、とか言うゲーム用語が聞こえたのでもしかしたら、と思いましたが失礼しました」
この言葉を聞いた時の驚きと感動は、きっとずっと忘れない。
改めて見た彼女の姿は、前世の記憶を思い出した時よりも衝撃的だった。
真っ直ぐな瑠璃色の髪を肩より少し下で切り揃え、化粧もしていないのに抜ける様な白い肌とほんのり赤い唇。サファイアを嵌め込んだ様な瞳はとても知性的で、整った容姿は女でも目を奪われる美貌。
凛とした姿勢はしなやかな強さがありながら威圧感を感じさせない。
これ程完璧な美少女はゲームの中のキャラには居なかった筈なのに、彼女が自分の前に立っている事が不思議で仕方なかった。
ところが口を開くと、礼儀正しく敬語もしっかりしているのにサバサバした口調で
「此処はゲームでは無い」
と、バッサリ自分の不安を切り捨てた。
どんなにそう言う設定で、お約束だと言い募っても彼女は現実的では無い、と論破していく。
頭の回転が速く、羨ましい程の美少女なのに態度は物凄くかっこいい。
もう少し話がしたかったから夕食に誘えば、快く受け入れてくれるだけでなくこれからの行動も考えてくれた。
ゲームでは無い、と言いながらもゲームに酷似している事はきちっと考慮してくれている彼女の、思考の柔軟性と前世での職業が徐々に不安を取り除いて行って、気がつけばアリッサが居れば大丈夫、とさえ思える様になっていた。
別れ際に思いついた事を聞いてみた。
「そう言えば、記憶を取り戻した時、驚かなかったの?」
「多少は驚きましたが、さして困る事は無かったので」
パニックにならなかった、と聞いて更に驚いた。
「だってゲームの中に……」
「ソフィア様。私はその手のゲームをした事がありませんし、それに付随する小説も読んだ事がありませんので」
乙女ゲームの事を知っているし、転生小説の事も知っているのに、この世界はゲームでは無い、とまたばっさりと切り捨てられてしまった。
でも、こうやって現実を見ている人が、側に居てくれるだけで絶望していた心が軽くなる気がする。
試験勉強は大変だったけど、攻略キャラのディーンやヴォルフとも良好な友人関係を築け、不安が日々薄くなって行く。
「でも、まだ油断しては駄目。ゲームはこれからなのだから」
気合を入れ直し、貼り出されている成績表を見るアリッサを見つめた。
ソフィア様の思い出話は書いてて楽しかったけど、本編が進んでない(泣)