色男は要注意?
色気バリバリの男子はちょっとやばいかも。
「はい、そうですが。初めてお目に掛かるのでは無いでしょうか?」
「うん。僕は初めてだよ。でも、父上には何度か会っているだろ」
父上?誰だろう。水色の髪をした方で記憶にあるのは、バリエール宰相様くらいだけど……。
「もしかして、バリエール宰相閣下のご令息様ですか?」
「そ、ファビアン・バリエールだ。宜しくね、アリッサちゃん」
ちゃん付けで名前を呼ばれ、アリッサが固まった。
「なんで固まっちゃうの?父上から聞いてた君は何事にも冷静に対応する子だったのに」
首を傾げ、アリッサの目を覗き込む仕草まで色っぽい。
「申し訳ありません。男性にちゃん付けで名前を呼ばれた事が無いもので」
本能的に危険を感じ取ったアリッサが、ファビアンと距離を取ろうとしたが、グイグイ接近して来る。
「えー、だって可愛い子にはちゃん付けで名前を呼びたいもん」
チャラい上に色気がダダ漏れの男子なんて、危険しか感じない。
「すみません。用事がありますので……」
兎に角、一旦彼から離れたい。
アリッサが生徒会室に行こうとした時、ファビアンがアリッサの腕を取り
「君にベイレーンの事で話したいことがあるんだけど、時間とってくれるよね」
無視できない要件を口にした。
見かけのチャラさに誤魔化されそうになったが、流石宰相の補佐を務めている息子だ。一筋縄では行かない性格のようだ。
「分かりました。では、どちらで伺ったら宜しいでしょうか?」
「中庭がいいかな?」
彼処はいつも人気が無く、話をするのにもってこいの場所だ。
アリッサが頷くと、ファビアンはアリッサの手を握りながら中庭に向かった。
「逃げないので、手を離して頂けませんか?」
「えー、可愛い子とは手を繋いでいたいじゃん」
「婚約者達に誤解されたく無いので」
「まだ候補だろ」
何を言ってもはぐらかされてしまい、アリッサも諦めてそのまま付いていった。
「それで、お話とは?」
「ムード無いなぁ」
「必要無い、と思います。無いのでしたら失礼します」
兎に角二人っきりになりたく無い。
話が無いならとっととこの場から逃げたい気持ちでいっぱいだった。
「ベイレーンが最近、極秘にジャイハン、トラン、エナリソンの軍部と連絡を取っている、と言ったら君は如何思う?」
ファビアンが名を上げた国々は、アステリア王国が警戒している軍事国家とその腰巾着の国の名前だ。
「ジャイハンの軍備は揃っていますが、王位継承問題で王家がごたついていますからすぐには動けない、トランは隣国ですが軍事力はその中では落ちます。問題はエナリソンとの関係ですね」
「流石。父上が目をかけているだけのことはある」
ファビアンは感心しているが、不穏な隣国の動きには、警戒の目を向けるのは当然だ。
学生であっても他国の情勢くらいはある程度知る事ができるものです。
「ですが、現状ではエナリソンの軍事力ではアステリアに対して宣戦布告出来るほどでは無いはずです」
「そう。現状では、ね」
ファビアンの言葉に、アリッサは少し考え込んだ。
色気がダダ漏れの男子は眼福だけど、知り合いには欲しくない。




