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走り回れば糸口が見つかるものだ。

アリッサは頑張ってお仕事に走り回ってます。

翌日から午前中はメイドの仕事をこなし、午後は王太子の仕事の補佐に王宮内を走り回った。

一週間も仕事で王宮内を歩き回れば、色んな事が見えてきた。

王宮内には沢山の部署の秘書官や補佐官が忙しそうに歩き回っている。

お陰で自分が書類を持って歩いていても、チラチラ見られてはいるが、誰も咎めたりしない。

目当ての場所は、通るたびに気を付けているが、異様に静かで人の気配がまるでない。

大公だって王族なんだから、仕事はしているはずなのに。


「明日からは、午前中からこっちに来い」


王太子の言葉に書類を整理していた手を止め、アリッサは振り返った。


「畏まりました。急ぎの仕事があるのですか?」

「特にない」


ない?無くてもなんでそうしたのか説明してよ。

困っているアリッサに、サイラス筆頭補佐官が声を掛けてくれた。


「ゴードウィン嬢。王太子殿下は君の仕事ぶりが気に入ったから、メイドの仕事よりも執務に専念させたいんですよ」

「ありがとうございます。後1ヶ月ですが、精進します」


言葉ではお礼を言うけど、メイドの仕事も大切なのに、と思ったよ。でも、此処って物凄く忙しい部署なのは確かで、私も一応戦力にはなっているらしい。


「それで、今日はもう上がって、久しぶりにお父上に挨拶に行ってみたら如何ですか?」


そう言えば、父様に王宮で会ったのは初日だけだった気がする。


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます」


サイラス筆頭補佐官にはきちっとお礼を述べ、書類を整理してから執務室を後にした。

近衛騎士団長の執務室はちょっと離れているから足が中々向かなかったけど、途中の騎士団の訓練場にはヴォルフと情報共有の為、ちょくちょく来ている。


「父様に収穫が無い、って言うと心配されてしまうだろうなぁ」


騎士見習いとして訓練場に来ているヴォルフを通して現状は話しているが、余りにも収穫の無さにちょっと頭が痛い。

つい癖になっているので、遠回りだけど大公の部屋の前を通って近衛騎士団長の執務室に行こうとした時、大公の部屋から血を流しているメイドがよろよろと出てきた。


「大丈夫ですか」 


走り寄れば、こめかみの傷から流れる血が、肩口まで赤く染めている。


「平気です」

「そんな訳無いでしょ。医務室に行きましょう」


よろよろと逃げようとする彼女の手を取り、医務室に向かった。


「またか」


医務室の方が眉をしかめ、手当てをしてくれているのをアリッサはじっと見ていた。


「またか、とは?」

「大公殿下は気が短く、気に入らない事があるとメイド達に物を投げたりする」


ちょっと待て。王族でも、やっていい事と悪い事くらい、いい年のおっさんなんだから判るだろう。


「仕方ありません。上手く立ち回れなかった私に責任があるのですから」


青白い顔で俯く彼女が小さく呟いた。


「何故、部署替えを希望しないのです?」

「それは……」

「家族を養っている者は、待遇より給金の高い所で働かなくてはならないからな」


医務官の言葉に彼女は、更に俯いてしまった。

今の会話で確信した。

大公は人望なんてものは皆無だ。

人望がないから、人が寄り付かず、王族としての責務も任せてもらえない。


「父様に掛け合います」


この人1人を助けても大勢には影響無いけど、平気で女の人に怪我をさせる様な奴の所に、この人を戻らせたくない。


「父様?」


彼女が、怯えたような顔でアリッサを見る。


「父様は近衛騎士団長ですので、貴女を保護して貰えるよう掛け合います」

「おやめ下さい。それこそ、マリウス近衛騎士団長様にご迷惑が」

「平気で女性に怪我をさせる者がいる事を、見ないふりをする方が問題です」


アリッサは医務官に彼女の保護を頼み、父親の元に走った。

当然だが、マリウスはアリッサの決断に同意し、すぐに彼女を自分の元に呼んだ。

大公から文句が出たようだが、王族なのに近衛騎士団長に対して強く言える立場では無いらしく、嫌味を言って引き下がったようだ。

彼女の名はレノンと言い、貧乏男爵の長女で、家族を養う為、大公の元で働いている、と言う。

レノンから聞いた大公はアリッサが思った通り、全く人望が無く、能力も低いせいか、王族なのにまともな仕事も与えられていない。


「…‥という事がありまして」


後日、ヴォルフに近況を説明していると、偶然、ロデリック殿下やディーンまで現れ、呆れたように話を聞いていた。

軽く書いたけど、大公ってキャラ、嫌いだなぁ。

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