ヴォルフのアカデミー生活は改善されたみたい
今回はヴォルフの事を書いてみました。
「ヴォルフ、頼む。稽古を付けてくれ」
数人の上級生が、授業の前にヴォルフを見つけ、自主練習に付き合って欲しい、と走り寄って来た。
「喜んで」
ヴォルフが頷くと上級生達は自分の剣を構え、型の修正や剣の振り方を熱心に質問する。
厳しくなった授業だが、皆、目に見える目標がある事でやる気も出たようだ。
自主練習もひと段落して、汗を拭きながら上級生の1人が
「一度で良いから、ヴォルフとアリッサの試合、見てみたいよなぁ」
と、呟いたことから、わいわいと先日のアリッサの試合に話が発展した。
「先日の試合の時、ゴードウィン嬢は何手繰り出したんだ?」
「俺には全く見えなかった」
「あの時は四手です」
「あの一瞬で四手。ヴォルフなら何手出す?」
「俺も四手で行きます」
アリッサと同じ攻撃が出来るヴォルフの実力が見てみたい、とその場に居る者達は望んだが、アカデミーでヴォルフが試合をする事自体、稀過ぎるのだ。
「2人の試合、凄く見たいけど、今の俺たちじゃ早すぎて理解出来ない気がする」
「ヴォルフ、アリッサと1分、試合出来たら兵団試験はバッチリだろ?」
問い掛けに、ヴォルフは少し考えてから頷いた。
多分、彼女の剣技を1分受け止められるなら、兵団の試験はパス出来るだろう。
「ですが、今からアリッサと同じ練習量をこなすのは難しい、と思います」
彼女の実力は天才だから、と言うわけじゃない。
幼い頃から練習を積み重ねて来ているから、見惚れるほどの剣技を身につけているのだ。
「そう言うお前も、半端じゃない練習量をしてきたんだろ。今なら理解出来る」
上級生達の言葉にヴォルフは少し頬を緩め、頷いた。
「俺達も遅くない。まずは試験に合格できるだけの練習を積み重ねて、皆んなで武官の試験、合格しようぜ」
自分の事を理解してくれ、前向きになった上級生達を見ながら、ヴォルフはアリッサに思いを馳せた。
入学当初から、剣の修練ばかりに時間を費やしてきた所為で人付き合いに問題がある自分に臆せず話しかけてくれるだけでなく、さり気なく他の生徒達との間も取り持ってくれた彼女には感謝している。
それだけでなく、サバサバした、気持ちの真っ直ぐな彼女の口調に釣られるように、自分も今まで以上に話が出来る様になっている。
試験勉強の時、彼女が優秀なのは分かったが、それは成績に見合うだけの努力をしている、と言うことにも気が付かされた。
だからこそ彼女の側に立つ事が出来る、彼女に相応しい騎士になりたい、とヴォルフは自分の技術に磨きをかける事に専念するようになった。
アリッサは守らなければならない程、弱い存在では無いが、ヴォルフはアリッサを護りたい、と願ってしまう程、彼女に心を奪われている。
「一度、彼女と試合をしてみたいな」
ヴォルフの呟きに周りのもの達がどよめいた。
「お前が何かをしたい、なんて言ったの初めて聞いたぞ」
「今日は嵐になるな」
「酷いですよ、先輩方」
賑やかな輪の中で、その一員としてヴォルフは笑っていた。
こうやって笑う事が出来るのも、アリッサと言う存在のお陰だ。
ヴォルフって、私の中では銀髪の城田優さんが近いかも。




