授業はきちんと受けましょう
アカデミーの授業を書いてみました。
アカデミーの授業には必修と選択科目があり、武官を目指すもの達は剣の授業がある。
ヴォルフは一年生ではあるが、その実力からアカデミー卒業と同時に騎士団への入団が決まっている。その為、剣の授業は教官達と同じ立場で授業を受けている。
国軍は大きく分けて3つの部隊があり、アリッサの父親、マリウスは王家に最も近い近衛騎士団の団長で、兄のアランはその下に当たる、騎士団の副団長になっている。
そして騎士団の下には兵団があり、それぞれの部隊も内部で騎馬隊や歩兵部隊、と細分化されている。
普通ならアカデミー卒業後に試験を受け、一番下の兵団の一兵卒から入団して、徐々に上がっていくものだが、ヴォルフはアランと同じく、近衛騎士団長が騎士団からの入団を認めている。
アランの場合、ゴードウィン伯爵家の嫡男である事や御前試合などで実力を示していた事や人当たりの良い態度からやっかみはそれ程無かったが、
無口で無愛想なヴォルフは実力を疑われ、やっかみや嫌がらせがかなりあるらしい。
そんな事でヴォルフの心が折れるとは思えないが、嫌がらせを受けて楽しいはずがない。
「今日の授業は模擬試合ですか?」
「アリッサ、君がこの授業を受ける必要はない、と思うんだが」
「まだ進路を決めかねているので」
教官として立っているヴォルフに、生徒のようにアリッサは話し掛けた。
アリッサが騎士の訓練服を身に付け、瑠璃色の髪を纏め、細身の模造剣を脇に差して立つ姿は息を呑むほど美しい。
ただ、女子生徒が剣の授業を受ける事は珍しい上、彼女の実力を知っている者は、このアカデミーではヴォルフと教官数名だから、奇異な目で見られている。
全学年の生徒達は、囃し立てはしないが、チラチラと物珍しそうにアリッサを見るのに、ヴォルフは頭を抱えそうになる。
教官と共に模擬試合の審判をするヴォルフに、やっかみの目が向けられているのをアリッサは黙って見ていた。
聞く耳を持たない者達に、何を言っても無駄だ。
「ラクロン伯爵家は金持ちだから」
聞こえよがしに3年生の1人が嫌味を言う。
ほぅ、ヴォルフの実力を認めた父様の目を疑い、買収されたみたいに言うとは、いい度胸だ。
アリッサの手が剣に触れる。
剣に関しては、誰よりも厳しい父様を侮辱するとは思い上がりも甚だしい。
「教官。私の試合相手はあの3年生で」
教官がギョッとした顔でアリッサを見た。
「彼とでは実力に差が」
「構いませんよ。俺が、手加減すれば良いだけだから」
教官の言葉を遮り、嫌味を言っていた生徒が前に出てきた。
自分の剣の腕に自信があるのか、ニヤニヤ笑う3年生がアリッサを見下ろす。
上背はディーンと同じくらいか、アリッサよりも15cmくらい高いが、それ程鍛えてはいないようだ。
こーゆー生徒ってたまに居るよね。




