進みたい
イライラしたのでお気に入りの喫茶店でケーキと珈琲を注文してゆっくりしようと思った。ケーキを倒さない様にフォークで削り口に運ぶ。二階にある喫茶店だから外を見ると人が歩いているのが視界に入る。あの人は何処に行くんだろうかなどどうでもいい事を平日の昼間に考えている自分に笑えた。なにか言葉に出して気持ちを整理したい気もするがお気に入りのお店だから変な行動は控えようと思う自分もいる。手を温めるように珈琲のカップを持ち少し飲む。
「宮田さん、これ今度新しくメニューに加わることになった珈琲なんですけど、もしよかったら味見してください」
そう言ってマスターが小さめの紙コップに入った珈琲を置いていく。
「あぁ、ありがとうございます」
もらった珈琲が嬉しくさっそく少し口を付けて美味しいですと伝える。最初に飲んでいた珈琲より酸味が少し強く感じたと伝えると名産などの説明をしてくれた。温かい飲み物を口に入れると少し不安が和らぐ気がする。
「今日はお仕事お休みですか?」
このお店にはよく来るのでマスターとは軽い雑談などする仲だが、現状を受け入れるために正直に話してみようと思った。
「仕事辞めようと思って。有給消化中です」
真面目な顔で言えば深刻に受け止められると思い少し口角を上げて言ってみた。
マスターはおっというような顔をした後に少し微笑んで「そうなんですか。じゃあのんびりできますね」と言ってくれた。
「そうなんです。次何しようかなってゆっくり考えたいと思って」
「いいですね」
「朝時間を気にせずに起きれるのが最高です」
良い感じに話せたと思った。仕事を辞めたのは自分の中で結構大きな決断だったと思う。先行きは不安だが進まねばならない。あの状態は嫌だった。
ケーキは食べ終わったし珈琲を飲み終えたら夕飯の買い物に行こうかなと考えているとカランカランと音と同時に人が入ってきた。長身スーツのできる男を絵にかいたような男性だ。
「加賀美さんどうかしましたか?」
マスターと仲がいいのは知っている。たまに見かける人だ。だがこんな時間に来るのは珍しいのだろう、マスターが声をかける。
「南さんが入れた珈琲を持ってこいって社長がわがまま言ったんです」
加賀美と呼ばれた男は少し困った顔をしていった。
「信二さんがわがままを言ったんですね。ほんとうにすみません」
「いえ、珈琲を持っていけば働いてくれるなら安いもんですよ」
「今準備するんで座って待っててください」
社長が何を飲みたいのかきっとマスターはわかっているのだろう。
加賀美という男性にすでに入れてある珈琲を渡し「これのんでみてください」といって俺ももらった新作の珈琲を渡す声が聞こえる。
窓の方に顔を向け通る人を見て入れば店内の会話は雑音になり頭に入ってこなくなる。
珈琲の注文を受けマスターが用意をしひと段落ついたであろうタイミングで、お会計をすまし外に出て、スーパーに向かう。途中でスマホが振動したが、見るのが面倒だと思い目的を優先した。