第三十二話 陣
夕夜が敵の元に向かっている間、朝日達はコールを守りながら戦っていた。
夕夜が敵に向ってから魔物の目に色が戻り始める。意識が戻った魔物は簡単にやられる味方を見て逃げようする。朝日達は逃げている魔物を無視し、今だに向って来る敵のみを攻撃する。
逃げる敵が増えているが、それ以上に数を増す魔物。そのあまりの数に接近戦を諦め魔法を主体に攻撃を組み替える。
しかしそれでは敵が接近し放題になるので三人はバラバラな方向に壁を作ろうとする。朝日は短剣を地面に刺し、サラは杖の先を叩きつける、そしてアリアは矢を無数に撃って陣を書き上げ其々イメージを強くするため魔法を唱える。
「ロック・ウォール!!」
「アクア・シャッター!!」
「雷陣招来・雷雲壁!!」
朝日は守りの魔法で一番シンプルだがそれを補う為に魔力を沢山込めて作る。サラは水が上空から滝のごとく落ちてくる魔法を使い壁を作る。
そして今回三人の中で一番強力な壁を作りだすアリア。
アリアが作った魔法は雲を広範囲に広げその中に入った敵を雷で焼き払う強力な魔法だ。その魔法は陣を書き上げる事で発動する事が出来る高位の魔法である。その効果はやはり普通の魔法と比べると同じ魔力量でも威力が全然違う。
仮に陣を書かずにやったら、三人の中で一番弱い魔法だっただろう。
自分の魔法を放った後アリアの魔法を見て驚く朝日。サラはそれを知っていたようで特に驚いていない。朝日は魔法のイメージを固めながら堪らずアリアに問いかける。
「アリアそんな凄い魔法をどうやって一瞬で使っているの?」
「これはさっき書いた陣を使って魔力の流れを細かく操っているんです」
その問いかけにアリアも矢を使って先ほどより大きな陣を書きつつ答える。朝日はそれを聞いて理解は出来ないがだいたい予想がついた。そして其れを聞いたせいか今書いている陣を使って何を放つのか気になってたまらない朝日。その間にアリアは陣を書き上げ、
「水陣招来・烈水陣!!」
朝日の期待に答える様にアリアは魔法を発動させる。
敵を囲むように陣が発動し、その陣をなぞる様に鉄砲水が発生する。そして全ての陣が繋がった時新たな陣が生まれアリアが新たな魔法を放つ。
「雷水陣招来・電流水波!!」
その魔法は囲んだ水に電気を流し込みその水をプシューと言う音と共に噴き上げる。そしてその攻撃は中に囲まれていた敵だけでなく噴き出した電気を帯びた水が周りに降り注ぐ。その結果、死にはしないがほとんどの敵が戦闘不能になる。
その予想を超える威力に動きが止まる朝日。サラは今の内に恐怖で動きが止まっている敵に魔法を放つ。
「バブル・スプレッド!!」
その魔法は泡と成って飛んで行き当たる度に弾けて範囲を広げる。サラはその後今だに動きが止まっていた朝日とアリアに向けて、
「そろそろ終わりが見え始めたので頑張りましょう!」
「・・・あ、はい!頑張りましょ!」
「ん!分かりました!」
三人はスパートをかける。