第二十九話 楽勝!
サラから話を聞いて十分ようやく立ち直るコール。しかしその表情はまだ引きずっている。だがコールが今回の作戦のメインなので無理やり夕夜達に笑いかける。
「・・・じゃそろそろ始めようか?」
「「「「あ、あぁ(は、はい)」」」」
余りのテンションの低さに思わず一歩下がって返事をする夕夜達。コールはその反応を気にもせずに詠唱を始める。
「空舞うは百年の風に包まれし流砂、汝らは砂にありながら天を移動する物、飛べ、舞え、そして探しだせ!」
詠唱と共に空に舞い上がり鳥の形をとる風の砂。百二十体にまだ届いていないのに見るとそのあまりの数の多さに唖然となるしか出来ない夕夜達。その間にもどんどん数を増やしていくコール。
そして地面に置いてあった風の砂が全て空で鳥の形をとる。コール最後に魔法の名前を唱える。
「行け!”形とる砂嵐”!」
コールの号令と共に各方向に飛び去るゴーレム。コールが静かに集中状態に入ったのを確認して夕夜達もコールの守りを強化する。
コールが魔法を発動してすぐに飛び去るゴーレムを確認したのか、魔物が集まってくる。先ほど戦った狼型二体と昨日戦ったゴブリン四体。夕夜と朝日はコールの守りをサラとアリアに任せて敵がコールに向かう前に倒しに行く。
「集え火炎!」
夕夜は昨日とは違いイメージを少しでも強くするために言葉を出しながら魔法を発動する。今回は二刀流で戦闘を行っていた夕夜の右の剣フェンリルだけに炎を纏う。そして今度は左の剣トールに、
「集まれ雷!」
魔法で雷を纏わせる。そして目の前の敵に向かい剣を振り下ろす。
「邪魔だ!この雑魚が!」
魔物が自分で持っていた武器で守るがそれを気にせずに切り捨てる。そして先に居る魔物を目指してもう片方を投げつける。轟音と共に吹き飛ぶ狼型の二体。それを見ていた夕夜は舌打ちをして、
「っち!流石にレールガンは、無理か!まぁいい!いずれ出来る様になるさ」
先ほど夕夜は電位差のある二本の電流をレールとしてトールを投げつけたが期待道理の結果を得れなかった。しかし夕夜はまだこの事を諦め切れないので影で練習しようと考える。
一方の朝日はコールに習った土魔法を応用して戦っていた。短刀のアグライヤを媒介にして魔法を唱える。そのすきに襲ってくる敵はそのままアグライヤで打ち払う。本来短刀で打ち合いなどする物では無いが、この世界に来て力が上がった朝日には関係ない。
「貫け土の槍!」
朝日は地面にアグライヤを突き刺し魔法を発動させる。その魔法はいつの間にか最後の一体になっていた敵を貫く。
始まって二十秒ぐらいで夕夜と朝日だけで六体の魔物を倒してしまい残ったサラとアリアは見て居るだけで終わってしまった。何も出来ずに立っているだけの二人を気にせずに夕夜と朝日は、お互いの手を叩きあって話す。
「楽勝だったな!」
「そうだね!何かもう少し頑張ってほしかったね!」
「全くだ!」
と軽口をたたき会う。それを見ていた二人は思わず、
((あれ?もしかして私いらない?))
と考えてしまっても仕方ないだろう。