第二十五話 昨夜の遺産
朝早くにコールの家の外で訓練を始める夕夜。
「っふ!・・・っはぁ!っや!」
夕夜は敵をイメージして剣の訓練をしている。しかも良く剣を見ると、剣は空気がぼやける程の高温になっている。これは剣に炎を見せない様にギリギリまで薄く張る訓練も兼ねていた。
その訓練を一時間ほどして最後に剣の先だけに力を集め出す。それは余りの熱量に剣が曲がって見えるほどの力だった。それ程の力を集めながらそれは目に映らない。そしてそれを十メートルほど先の岩に向け解き放つ。
「・・・・・・・・っは!!」
空気中に波が走る。それは夕夜が放った力の熱量で出来る通り道だった。その波は岩を目指して高速で進み岩に衝突する。
「ジュッ!」
力の量と釣り合わない一瞬の音だけが鳴る。岩に当っても進み続ける波が木などに当たる前に手で握りつぶす動きと共に自分の放った攻撃を握りつぶすイメージをする。その動作をして直ぐに何もなかったかのように消える波。普通は消えないはずの攻撃で上昇した気温ごと元に戻るように消え去る。岩の切断面も溶けている途中で急に固まる。
「よし!これは使えるな!」
岩などの様子を見て手応えを感じる夕夜。
昨日自分で結論を出した固有属性を誰にも教えずにもくもくとその力が当っているかを確かめる。その結果が先ほど放った技の中にある。
「夕夜!もう朝御飯だよ〜!早く家に入ってきて」
他の技を試そうかと構える夕夜に朝日が家に入る様に言ってくる。夕夜は今日の訓練は諦める。剣を鞘に戻してゆっくりコールの家に歩きだす。
家に入って夕夜は剣を置きに行く。その途中で会ったアリアとコールに挨拶をする。
「二人ともお早う」
「あ、はい。お早う御座います」
「・・・お早う御座います」
夕夜にきずいて挨拶するコール。アリアも眠そうな目で挨拶をする。
挨拶をして直ぐに行こうとした夕夜だが、コールが肩を掴んで引きとめる。それを奇妙な目で見て話しかける。
「何か用かコール?ようが無いなら行きたいんだが?」
「・・・・・・・じつは聞きたい事がありまして」
コールは話しにくそうに話し出す。
「朝日さんの様子はどうだった?」
「ッヒィ!」
コールの言葉を聞いて目を覚ますアリア。そしてすぐに震えながら夕夜の服をつかみ自分も聞きたそうにする。夕夜はアリアの驚きようと伝わってくる震えを感じて、
(あいつ何をしたんだ?)
とアリアがここまで恐怖するほどの事をしたのかと想像するが良く分からない。しかしなかなか答えない事に不安になったのかより力を込めてくるアリアを見て先ほどのコールの質問に答える。
「さ、さっき見た時は何時もどおりだったぞ!」
「「ほ、ホントかい!(本当ですか!)」」
「ほ、本当だからそんなに力を込めるな!」
「ありがとう!それが聞けてほっとしたよ!」
「ありがとうございます夕夜さん!」
答えを聞いた二人は夕夜に感謝して朝日がいる部屋に向かう。残された夕夜の、
「い、いったい何だったんだあいつ等?」
この反応は仕方のないことだろう。