外伝 登校前の風景
「もう!こんな時間なのに夕夜は何をしてるの!」
珍しく何時もの時間になっても出てこない夕夜を呼びに行く朝日。そこは夕夜の家だが、十年近い付き合いだ。
「小母さん、小父さん、おはようございます!」
夕夜の両親に挨拶をして夕夜の部屋に行く。それを見送る夕夜の両親も軽く手をあげて挨拶を返したが朝日には聞こえない。
夕夜の部屋の前にきて迷わずドアを開ける。部屋にいた夕夜はのん気にも本を読んでいる。その様子を見て朝日は若干キレる。
「あのね!今の時間解ってる!八時半だよ!私達の家から学校まで何分かかると思ってるの!」
「は!そんな事も知らんのか?歩いて三十分だろが」
「それを解ってるならいくよ!」
夕夜は朝日を見ながら諭すように言う。
「いいか?俺らの通う学校で遅刻する様な奴はそうはいないだろ?だがつい此間遅刻して来た奴がいたんだ。そいつは普段ぱっとしない奴だがそいつは遅刻する事によって一時的とはいえ注目を独り占めした!ならばそれを俺が行えばかなりの注目を集めるのでは?とな」
「ふざけんな〜!良いから行くよ!」
「だからあと一時間待て!」
如何にか夕夜が納得しそうな言い訳考える朝日。そして一つ思いついたのですぐ喋り出す。
「ホントにいいの夕夜?後悔するよ?」
「何がだ?」
「夕夜が遅刻して来たら注目を集めると思うよ」
「当然だ」
「でもね?」
「・・・・・何だ?」
「その注目は遅刻してきた事じゃ無くてね!」
朝日は一人二役の演技を始める。
「うわ〜あいつ遅刻してきてるよ」
「この前遅刻した奴が出たばっかなのに今日遅刻とかワザとじゃね?」
「まじで!ワザと遅刻するだけでも笑えるのにあいつ二度ネタじゃん!」
「だよな!だよな!っぷマジ笑えてくる」
「くくくくホントダッセー奴!」
「って言う事になるよ!」
「・・・・・・・・・・・・」
その朝日の演技を見て静かになる夕夜。その光景を見て今回も勝利を確信する朝日。そして夕夜はゆっくりドアの前に行き振り返る。
「・・・行くぞ!」
「うん!」
その言葉と共に外に走り出す二人。
「行ってくる!」
「お邪魔しました!あと行ってきます!」
走りながら挨拶をし朝日はピースサインを夕夜の両親に見せる。その光景を苦笑いしながら見送る夕夜の両親。
とある世界に行く前に割とよくある風景だった。