期待を裏切らない男
「ゴルド、君には期待している。」
ゴルド達にエントラーという怪獣のような名前の創造神について調べてもらう事にした。
教会に伝わる伝承のような話しや口伝で伝わっているような話しも含めて全てだ。
特にゴルドに期待しているのは本当だ。
奴はギルドから持出禁止の本を持ち出した前科がある。
つまり、この世界に対して他の2人より禁忌が無いのだろう。
それに嘘か真か奴は元聖職者だ。
同じ聖職者として神殿の司祭達とは話が合うかもしれない。
奴の思いきりの良さと詐欺師の如き口の上手さに全てをかける。
キースは丁度結婚式の打ち合わせ等で教会関係者と会う機会が多いので、そちらから話を聞いてもらう事にして、
カージャにはOPI会員を操り、各地の教会での話に差異が無いか纏めてもらう事にした。
手掛かりは創造神の名前だけだ。
まずは集められる情報は何でも集めたい。
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2週間ほどするとゴルドが得意満面で迷宮の小部屋にあらわれた。
そして、アイテムボックスから豪華な表装の本を取り出す。
・・・本当に期待を裏切らない男だ。
「ゴルド、その本は何だ?」
「大都市の教会に配布されている、こちらでいう聖書の原本の写しだ。」
事も無げに言うが、確実に無断で持ち出してるよな。
「よく、持ち出せたな。」
「友の頼みのためだ。きっと神もお許し下さる。」
まぁ、本人がそう言うんだ。
深く聞かずに遠慮なく頂こう。
「ゴルド、この資料は助かる。他に何か口伝での話や伝承みたいなものは無いか?」
「そちらは調査中だ。もう少し話が集まったらカージャ達とまとめて提出しよう。」
「そうか・・・頼むぞ。」
珍しく引き締まった顔でゴルドが頷き、小部屋を後にした。
俺はゴルドからもらった本を読むことにする。
結構分厚いから2~3日かかりそうだ。
聖書?らしき本の内容は異世界だけあって、中々に斬新な内容だった。
エントラーが巨人化してドラゴンと戦う様子は正に巨大ヒーローもののようだし、悪の秘密組織と戦う様子は改造された某ヒーローのようだった。
この聖書ってなんだかヲタク日本人の匂いがするんだよなぁ。
俺の勘はこれを信じるなと言っている。
内容的にも作られたお話感がビンビンする。
そんな中、ゴルド達がエントラーと交信出来ると言う聖女の話を仕入れてきた。
口伝で伝わる話などは何も無く、どちらかというと生活の知恵のような話ししかなかったが、これは当たりの気がする。
この聖女はエントラー教会の総本山に保護されており、元は村娘だが主神の声が聴けるという事で聖女認定を受けたそうだ。
出自はしっかりしているようだが、もしかしたらこいつが分身体の可能性もある。
おまけにこの総本山というところは、本当にそこそこ高い山の中腹に作られた要塞のような場所なのだ。
誰がどうやって近づくか問題だ。
「友よ、私が行こう。」
ゴルドが立候補してきた。
山と言えばゴルド的な事を俺も思った。
だが、そこに聖女というキーワードが加わった時には嫌な予感しかしない。
今はお笑い勇者としての力を発揮する時ではないのだ。
ちょっと真面目なターンのはずだ。
「今回はそれがいいでしょう。」
カージャ達は賛成した。
というのもキースは結婚式の準備が大詰めで動けず、カージャは領地の管理のために時間が取れず、
消去法でゴルドしかいないためだ。
こうして不安しかない中で、ゴルドによる聖女の調査が開始された。
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1ヶ月後
俺の迷宮に続々とそろいの鎧を着た奴等が入ってくる。
今回は100名程が入ってきて整列している。
やはり来たかと思い見ていると、ロープでぐるぐる巻きにされたゴルドがあらわれた。
ケツを蹴り上げられながら前に進んでいるが、涼し気な笑顔で自分のケツを蹴り上げる全身鎧の騎士に、しきりと声をかけている。
見慣れた光景だが、一部いつもと違う。
そしていつもと同じように小部屋に入ってきたが、今回はゴルドと全身鎧の騎士だけだ。
「友よ・・・すまん・・・捕まった・・・・。」




