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自由に生きたい

1ヶ月後、俺はまだ赤ちゃん部屋に入り浸っていた。

最近、しっかり歩くようになった赤ちゃん達を相手にボール遊びに夢中になっていたためだ。

ボール遊びといっても投げたりはまだ出来ない。

俺がゴムまりを転がし赤ちゃんが蹴り返すという、傍から見たら何が楽しいか分からない遊びに興じていたのだ。


「よ~し、次はパルの番だぞ~。ほら。」


赤ちゃん達が一列に並ぶ中、俺がボールを先頭のパルの前に転がすとトテトテ歩いて行き蹴飛ばす。

上手く蹴れても蹴れなくてもキャッキャ言って喜んでる。


「上手だな~、パルは凄いぞ。」


褒められて更に喜び笑顔を見せる。

俺がこんなにのんびりしているのには訳がある。

試作のダンジョンがどこにあるか分からないためだ。

当初はバトルのチケットさえ買えばすぐに戦えると思っていたのだが、流石は廃棄された迷宮。

こちらが発見するか、向こうからバトルを仕掛けてこない限り、リストに追加されないのだ。

そのため、ザックリしか覚えていないチビ助から情報をもらい、現在はOPI会員を使って大捜索網をしいている最中だ。


というわけで、俺は家族との一家団欒の日をすごしている。

ボール遊びをしているとアイカが列を飛び出し抱っこしろとせがんできた。

アイカを抱っこしてやると他の赤ちゃんもワラワラ集まってくる。

何でも言う事を聞く俺は赤ちゃん達に人気がある。

だが、そんな俺でもシルキー達が用意するおやつには勝てない。

シルキー達がおやつの準備を始めると、赤ちゃん達は途端にそちらにむかって動きだした。


「旦那様、面倒をみてくれるのは嬉しいが、甘やかしてばかりでは駄目だぞ。」


シスが巨大な胸を張りながら小言を言ってくる。

キョウカの影響か最近皆が教育について五月蝿い。


「じゃあ、シスのおっぱい吸うのも外聞が悪いからやめようぜ。」


「私のそれは医療行為だ。旦那様には責任を持って吸ってもらう。」


平然と言い放つシスは1人だけ未だ母乳を出し続けてる。

見た目と性能が直結しているミルクタンクを持つ女だ。

個人的には正直、あまり美味しいものでは無いので止めていいなら止めたい。


赤ちゃん達は口の周りをベトベトにしながら小さなパンケーキを頬張っている。

ついでに、おやつを食べに来た子供組も一緒だ。

食べたら眠くなったようで口の周りをシルキー達にふかれるとお昼寝タイムに突入した。

嫁達が思い思いに散らばり始めたので俺もメメと一緒にメメの神社に行く。

子供組も付いてきて。今は板の間に俺が渡した神社の資料をならべてチビ助と話あっている。

写真付きの本を渡したのが功を奏し、いまだに揉めている。

チビ助は御神木として大木を置きたがっているのだが、双子達は滝を、お菊は大石をそろぞれ推していて話が進まない。

本堂も同じくそれぞれが違う物を推しているようだ。


様子を見るために甘酒と団子を差し入れる。


「嫌じゃあ!!!この御神木は外せんのじゃ!」


「滝。」


「滝。」


「ん。」


お菊は何を言っているか分からないが、小さい手で大石にしめ縄がまかれた写真を指差し意思を示している。

まったく引く気は無いようだ。


「ほら、チビ共、甘酒と団子だ。食え!」


こうやって時折おやつを差し入れ中断させる事により、チビ助の神社は一向に決まらない。

今度は甘酒で誰が一番上手く酔っ払いの真似が出来るかを競い合い始めた。


「見るのじゃ!儂の千鳥足を!!!」


カクカク歩いているようにしか見えないチビ助が、それを千鳥足だと主張している。

お菊も張り合い始めたが、真横にかに歩きして1歩前に、またかに歩きして1歩前にとインベーダーゲームのような動きを披露している。

双子はorzの体制でプルプルしだしているが何の真似なんだ。

腹でも痛いようにしか見えん。


「判定・・・ドロー!!!全員もうちょっと頑張りましょうだな。」


「何故じゃあああ!!」


俺の勝手な審査にチビ助が抗議の声をあげる。


「チビ助、酔っ払いはそんなに元気じゃない。」


俺が言い切るとチビ助はショックを受けた様に固まった。


「双子達のは何をしているのか分からない。」


双子のジト目が丸く見開かれる。


「お菊のが一番増しだが、酔っ払いならあんなにしっかり歩かないぞ。」


お菊だけは口を真一文字にし無表情だ。


「まず、お菊だが、お菊は目を瞑ってやってみろ。その方が酔っ払いに見える。」


俺の助言にお菊が素直に従うと、体にフラフラと揺れが加わり、更に動きに緩急がついて先ほどより酔っ払いらしく見える。


「わ、儂はどうしたらええ!!!」


俺の的確なアドバイスにチビ助も喰いついた。


「チビ助、お前はまずしゃべるな。いつも一言多いんだ。それと腰と膝の力を抜いてやってみろ。」


無言で頷くチビ助。

いや、今は話せよ。

初めは勝手が分からずぎこちなかったが何度もやるうちに動きがスムーズになってきた。


「どうじゃ?」


手応えがあったのだろう、笑顔で聞いてくる。


「まだ甘いが、随分よくなった。後は身体に馴染ませるんだ。」


笑顔で頷き動きを再開する。


「残るは双子だが、お前等のあれは吐いてる真似か?動きが無い以上、あれを酔っ払いにするには相当厳しい。

だが、コンビで動くことにより、酔っ払いにすることは出来る。ザキが吐く真似をし、ルドが介抱する役をするのだ。」


ザキが素早くorz状態になりプルプルしだす。

ルドが横でザキの背中を撫でだした。


「中々いいぞ。ザキ、顔をあげるな。下だけ向いていろ。ルドはもう少しゆっくり撫でるんだ。」


本当に吐いたりしないか不安になるくらい上手い。

具合の悪い人に見えなくもないが、これで吐く寸前の酔っ払いにも見えるだろう。


「よし、貴様等、ここで限界まで練習し、各自酔っ払いりょくを高めろ!明日、皆の前でいきなり披露するぞ。」


翌日、赤ちゃん部屋で皆に披露すると、何故か俺がぶっ飛ばされた。


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