魔王になりたい
子供酔っ払い事件から1ヵ月ちょっとした時、メメの神社が変わった。
変わったと言ってもチビ助が言うようにドバーッと変わったのではない。
何とえばいいか難しいが、境内に入ると別世界に踏み込んだような感覚になるのである。
神社仏閣はそんな感じがするところは多いが、それより強烈でなんというか別世界にいる感じなのである。
これは間違いないだろうと思い、チビ助で確認すると見事メメの祠として変化していた。
この中だとチビ助の力が弱体化するらしく、珍しく長時間は居たくない等と言っている。
「次は儂の祠の番じゃ!」
「まだだ!法の神との連絡方法を教えろ!」
こんなやり取りの後、メメを通じて呼びかけろ、但し答えるかは分からんとの回答を得た。
嫁達に内緒にしているため、秘密裏に動かなければならない。
この日のためにクソ高いソーマを3本もそろえ、エリクサーも10本、狐巫女達に持たせ待機させてある。
膝の上で一心不乱にたくあんの山を齧るメメの頭部?に触れ法の神に意識を向ける。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・。」
次に気付くとメメが膝の上で俺を見上げる中、朝になっていた。
・・・法の神との交信は成った。
ただ、何を話したか、どういう存在だったかが頭の中から抜けている。
代わりに得たものが質問の回答だ。
何故なのかは分からないが、どうすれば良いか、何が必要かが分かるのだ。
既に俺は資格の半分を手にしていた。
やるべきことは善神、邪神の存在意義の排除だからだ。
これは、善神側で説明すると、人族等の殲滅、もしくは善神の分身体の排除、
もしくは人族の頂点に立ち全てを従える事になる。
この3つの内の1つでも達成出来ればいいのだ。
普通なら頂点に立つのが一番容易く、不老不死の分身体の排除が一番難しい。
が、俺は善神の分身体の排除を成功しているため、達成している事になるのだ。
そうなると、一番手っ取り早いのはメメがチビ助を喰う事なのだが、既にメメはチビ助を迷宮の仲間だとみなしている風がある。
時折、チビ助にも食い物を上げたりしているので、けしかけても善神の時の様に喰うまではしない可能性が高い。
そして、チビ助の場合は個人で世界を渡れる能力を持っているため、危害を加えられるとなったら間違いなく他の世界へ逃げるだろう。
別にその後に加えられるであろうキョウカの折檻が怖いわけでは無い。
費用対効果を考えれば、それはしない方が得策なだけだ。
そうなると、魔族の殲滅か魔族を従える事になるのだが、これは後者の方が圧倒的に簡単だ。
基本、魔族は力に従うからだ。
策も使うが、人族の貴族のようにネチネチした嫌がらせをしたりはしないからだ。
というわけで、俺の方針は魔王を従属化し魔族を従わせる事になる。
夕食の席で皆に伝える事にした。
「俺、真の魔王目指す事にしたから、協力頼むな。」
なるべく何でもない風を装いサラッと言ってやった。
ミーシャ以外の全員からため息で返された。
「正気なの?」
ジト目のアリスがのたまうが、貴様の許可等、必要無い!
「なんか変な漫画でも読んだの?」
これはキョウカだ。
本気で心配そうに聞かれると地味に傷つくんだが・・・。
「魔王。」
「黒幕。」
双子達は賛成のようだ。
「お主の好きにしたらいいのじゃ。それと儂はハンバーグのお替りじゃ。」
チビ助はそんな事より夕飯のおかずに夢中だ。
「まぁ、皆が色々言いたい事があるのは分かるがこれは決定事項だ!」
「なぁー、あたいの出番はありそうかい?」
ミーシャは暴れたいようだ。
子供を産んで大人しくなったと思っていたのだが・・・。
「ミーシャの事は頼りにしてるぞ。」
クネクネしだしたミーシャを放置し、皆に向き直る。
「決定事項だ!」
大事な事なので2度言ったが、返って来たのは練習してたのかと思えるほどの、そろった勢いのため息だけだった。
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次の日、ダークエルフ達に魔族の国の話を聞く。
魔族の国とは言っても、国として活動しているのは悪魔族達の国だけで魔獣族の方は部族毎に離れて暮らしているらしい。
一応、魔王を名乗る者がおり、魔族を纏めている。
「じゃあ、その魔王を抑えれば魔族は俺のものだよな?」
「一応はそうなると思います。」
「一応?」
「魔獣族の方は脳筋の集まりです。人族相手に戦えるから付いてきている者もいます。」
「つまり、俺が大人しくしてろと言うと反乱を起こす馬鹿がいるって事か?」
「ハッキリ言ってしまえば、そうですね。出てくると思います。」
「そいつら、なんで自分が魔王になろうとしないんだ?力こそ全てなんだろ。」
「面倒な事が嫌いなんですよ。暴れさせてくれる場所を提供してくれるから付いてくる、に近い感じですか。」
どうやら、魔王を抑えただけでは駄目なようだ。
しかし、脳筋なら圧倒的な力で抑え込めばいいだけだ。
真の魔王はただの思い付きで言っただけだが、既に魔王軍とは敵対してるし、こうなればある意味ちょうどいいかもしれん。
俺は真の黒幕として君臨するぜ!




