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迷宮での日常

メメが住みつき1ヵ月が過ぎた頃、何がとは分からないが神社の感じが変わった気がした。

これは神の祠になったのかもしれない。

そう思った俺はチビ助を連れてメメの元を訪れた。


「どうだ?もしかして神の祠になったんじゃないか?」


「まだじゃな。この調子だと後1~2ヵ月かかるじゃろう。まだ神の祠とは言えん。」


どうやら、まだまだのようだ。

チビ助が言うには、もっとドバーッと誰にでも分かるくらいの変化があるらしいが擬音で言われても分からない。

焦っても何も変わらないのでメメをつれて日課の巡回に出る。

最近メメが俺の肩や頭に乗って楽をすることを覚えた。

自分で飛ばずに乗って動くのだ。

距離が近くなったのか、それとも乗り物と思われているのか分からないが好きにさせている。


赤ちゃん部屋にいくも、おねむの時間でいなかったのでコアルームにゴルドと駄弁りに行った。

小尾部屋には応接間のセットが持ち込まれゴルドとカージャがコーヒーを飲んでいる。

話しかけると反応があり、カージャからキースの結婚が決まったとの話をされた。

ゴルドが暗黒面に堕ちないか気にしたところ、毒気がぬかれたような笑顔だ。

嫉妬の勇者のくせに妙だ。


「フハハッ、友よ、キースの結婚相手を見るときっと驚くぞ!」


ゴルドが上機嫌で話してくれた情報によると、キースが結婚する相手はグレン男爵家の三女のアイリーン嬢というらしい。

グレン家はドワーフの血が入っていて、遺伝のせいで筋肉質になるか背が小さくなるかの二択なのだそうだ。

男の場合は背が小さくなるのは致命的、女の場合はムキムキになるのは致命的と二分の一で人生が決まる。

キースのお相手であるアイリーン嬢は遺伝的には勝利の道を勝ち取ったが、彼女の場合はもう一つ付いてきたのだ。


「アイリーン嬢は今年で24の立派なレディーだが、見た目は8才かそこらの子供なのだよ。」


さも楽しそうにゴルドが話す。

元聖職者のくせに随分性格が歪んでしまっている気がする。

いつも狙いすましたように不幸を呼び寄せているため、偶に起きた他人の不幸が楽しくてたまらないのだろう。

そう考えると、この男も不憫な男だ。


「実はゴルドにも時折話がきているのですが、彼は全て断わっているのですよ。」


カージャが顔をしかめながら話してくれた内容に、驚きを隠せずゴルドを見る。

悟ったような澄まし顔のゴルドがいやに腹立たしい。

人をイライラさせる才能でもあるのだろうか。


「友よ、私は分かったのだ。理想の女性があらわれるまで待つのも神の試練だという事を!」


俺に言わせりゃ天に唾する行いだと思うが本人的には違うらしい。

人生にモテ期は3度来ると言われている。

1度目がメスオーク、2度目が今回だとしたら、あと1度あるはずだが、地球でモテ期を経験してたら今回がラストチャンスのはずだ。


「ちなみにゴルドは地球ではどうだったんだ?モテたのか?」


「そうだな・・・小学生の頃はモテた記憶がある。それからはさっぱりで、聖職者をしていた頃はいい人としか思われていなくて出会いがなかったな。」


つまり今回がラストの可能性が高いな。


「なぁ、ゴルド・・・お前はとりあえず家庭を持って落ち着いたらどうだ?」


「友よ、結婚はとりあえずでするものでは無いぞ。」


珍しく正論を吐くが、そこまで本人が乗り気じゃないなら仕方が無いか。

・・・どんな結果が待っていようが選んだのは自分自身だ。

他人の人生にまで口出しする気はないので黙っておく。

その後もたわいのない話をしてゴルド達は帰り、俺は再び暇になった。


何故か前方で火の手が上がっているので急いで確認に行く。

子供組がキャンプファイヤーのようにたき火をしている。

何かの儀式でもしているのかと思い近づくと芋を焼いているらしい。

石焼き芋では無く、直接焼いているらしいが、こんな火力では炭になるのではないだろうか。

心配していると器用に棒を使って芋をひとつ引き釣り出してきた。

よかった、ちゃんとアルミホイルで包んでいた。

目を凝らすと炎の中にキラキラとアルミホイルに包まれた芋が見える。

その数は10や20では効かない。

だから、これほどの規模のたき火になっていたのだ。


どれほど食う気だ、と思っていると、そこに嫁達が合流した。

俺がジト目を披露してるとバツが悪くなったのか言い訳を始めた。


「べ、別に私達だけで食べるわけじゃないわよ。」


キョウカが指さす方向を見るとダークエルフの集団が近づいてくる。

だが、炎の中に見えるだけで人数以上の芋があるのが分かる以上、それは通じない。


「メメの神社の巫女達にも持って行ってやれよ。」


「も、もちろん持って行くつもりよ。」


一筋の汗を垂らしながら答えられても本当かよと思ってしまう。

これで1人2つも3つも食べれまいと思ったが敵は恥も外聞も無く、芋の追加に踏み切った。

何故かダークなエルフ達から歓声があがる。

話を聞いてみると、こっちの世界にはジャガイモに似た芋はあるが、サツマイモの類は無いのだそうだ。

そのため焼くだけでいいサツマイモはダークエルフ達の中で大人気となっている。


巫女達には俺の方から何か差し入れをしておくから全部食べていいというと再度歓声があがり、嫁達が満足そうに頷いている。

メメも残るかと思ったがそのままついて来た。

そして、子供組も俺の出す甘味を目当てについて来た。

人数が減って消費しきれるのかと思ったが元ダンマス組も近づいていくのが見えたし、慌ててもいないので平気なのだろう。


巫女達に何を食わせるか迷ったが、せっかくなので芋羊羹と甘酒にした。

皆が笑顔で食べているので良い事をした気分になる。

調子にのって、いなりずしをだしたら争奪戦になった。

今後は定期的にだしてやろうと思う。


そして子供組は甘酒を気に入り酔っ払いもしないのに飲んで酔った真似をしている。

メメは相変わらず食べる事に夢中だ。


無くなって初めて気づく大切なもの。

俺は決して手放す気は無い。

ダラダラ平和に過ごすためにもうひと頑張りしないとな。


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