八百万の神(後)
次の日、競うようにアンとエリスも子供を産んだ。
2人同時出産だ。
ボナが忙しそうだったが、シルキーを助手に彼女はなんとか踏ん張った。
アンの子は男の子でアイザックと名付けられ、次期ダークエルフの族長となる予定だ。
エリスの子は女の子でエリアスと名付けられた可愛らしい子だ。
ダークエルフは皆が銀髪で、ハーフ?の子もそうなのだがエリアスには俺の黒髪が遺伝したので地味に嬉しい。
2日ほど、お祭りムードで過ごしたのだが、重大な事に気が付いた。
ゴルド達がいまだキャンプ中だ。
急いで足の速いモンスを召喚しチケットで外に出し手紙を運んでもらった。
ついでに時間的な余裕があるなら善神の祠を調べてもらいたい事を付け加えて。
当然、ゴルドは近づけないようにする旨も書いておく。
モンスはゴルド達を知らないが、強烈な匂いを出す男だと言い含めて送り出した。
あんな男がこの世に2人いるとは思えないので、間違いなく届くだろう。
これでゴルド達が帰還するまで暇になったので俺は赤ちゃん部屋に入り浸る事にする。
現在の赤ちゃん部屋の人口密度は凄い事になっているため、近々広く増築する予定だ。
赤ちゃん達の人気は一番人気が未来の族長候補のアイザックで常に2~3人のダークエルフがくっついている。
そして2番人気が黒髪のエリアスで俺と同じ黒髪を羨ましがられてエリスも得意そうだ。
ラナは先に生まれた事もあり当日と次の日は大人気で俺でも近寄るのが難しかったが今は静かな環境で寝ている。
触りたいが起すと泣くので幸せそうに抱くラキッシュと見ているだけだ。
そうしてそれから1ヵ月後にゴルド達が戻った。
ダンジョン攻略があまりに早すぎると今後に問題が出てくるため、神の祠の調査をしガッツリ時間を潰してから帰還したのだ。
手柄は3等分してわけ、今回の件で、ゴルドとキースが男爵に昇爵することになった。
流石に領地までは貰えなかったが、これで2人も立派な貴族だ。
手続きなどはキースが中心でやっており、俺の所にはゴルドとカージャの2人が顔を出した。
「それで、神の祠はあったのか?」
「駄目ですね。地下ダンジョンへ続く大空洞を見付けそのそばを捜索しましたが、
全て重機で耕されたように滅茶苦茶になっていました。あれではあっても崩壊してるでしょう。」
「そうか・・・。まぁ、しょうがないな。それよりこれでゴルドとキースもキチンとした貴族様だろ。領地もくれたらいいのにケチだな。」
「まぁ、キョウカさんの事があるために、あまり勇者に力を付けさせたくないのでしょう。
それにいきなり領地をもらっても経営出来なければ、かえって重荷になります。
貴族のルールは複雑怪奇ですから慣れていく事から始めませんと。」
ここでもルールか・・・。
「貴族のルールって誰が決めたんだ?」
「それは、基本は上位貴族や王族でしょうね。下級貴族を御しやすいように決めったんだと思いますよ。」
「・・・王や上位貴族ね。・・・上位貴族に対するルールは王族が決めるのか?」
「まぁ、そうでしょう。面子がありますから上位貴族相手には配慮してると思いますが・・・。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・」
貴族のルールは王族が決める。
ならば神のルールは誰が決める?
お互いで話したって決めるのか。
否、話して決められないから争っている?
チビ助は暇つぶしだと言っていた。
それは本当だろう。
ただ、やりたくてやってる暇つぶしなのか。
やりたくないけどやる必要があるから、暇つぶしで出来るように楽しめるようにしただけではないのか。
食堂で3時のおやつをパクついてるチビ助をつかまえて聞いてみた。
「チビ助、ちょっと聞きたい事があるんだが、邪神の祠って邪神としか交信できないのか?」
「儂がおれば同格の神なら交信できるぞ。答えるかどうかは奴等次第じゃが。」
「俺が聞いても答えんのか?」
「お主等じゃ無理じゃろ。それこそ奇跡でも起きん限りな。格が違うのよ格が!」
「チビ助、あとでいいから邪神の祠の作り方教えろ!」
「そうか。改心したのじゃな。約束通り教えて進ぜよう。儂を敬うのじゃ!」
握り潰したい笑顔で答えると再びおやつをやっつけにかかった。
作り方はとてつもなく簡単だった。
聖域に神殿を建てるだけ。
確かに地上なら、聖域とやらを探す事から始める必要があるがダンジョン内ならDPはかかるが聖域に指定するだけで出来る。
そしてその上に神殿を建てればOK!
後は、しばらくそこで分身体が生活していれば、その分身体の神の祠になる。
「カーァ、カッカッカッ!これが儂の祠か!良いではないか!良いではないか!」
俺が作ったのは日本最古と言われる奈良の大神神社のコピーだ。
何故、大神神社にしたかというと単に名前の語呂で決めただけだ。
大部屋を拡張機能で広げ2キロ×1キロの長方形型に1キロ×1キロ分を聖域に変化させ、そこに作りあげたのだ。
作りあげたというよりDPで購入したので札束で叩いた結果だが、俺は神の祠として作りあげたのだ。
「チビ助、いつからお前の祠だ等と思っていた?」
「カッ!わ、儂の祠じゃあああああ!!!!」
「残念だな、ここはメメの祠だ!」
エンに猫の子の様に襟首をつかまれジタバタ暴れるちび助を尻目に、相変わらず草を千切って食べているメメに声をかける。
「メメ、ここはお前のために作った、お前の祠だぞ。ほら、おやつをやるからこっちで食べよう。」
板敷の恐ろしく広い本堂の奥にメメを誘導し、山ほどのお菓子を買い与える。
「儂の祠がああああ!!!」
涙目で叫ぶチビ助があまりにも哀れなので取引を持ち掛ける。
「チビ助、全て上手くいったらお前の祠も作ってやろう。」
「ほんとか?これと同じ奴じゃぞ!」
「規模は同じで別な神社にしろよ。全く一緒だと面白味も無いだろ。」
「よかろう、それで許してやるのじゃ!」
「そうか、ならば吐け!・・・ルールを決めた・・・神は誰だ?・・・」




