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ヒロインが必ずチョロインの法則

大部屋には彼はいなかった。

早すぎたのかもしれないが、待たせるよりはと思い辺りを見回すと、私の部屋とリアの部屋の扉の横に更に2つ扉が増えていた。

扉には白い板に「洗濯室」「備品室」と記号のような物が書かれている。

首を捻っていると「備品室」と書かれた扉から彼が出てきた。


「あれ、早かったな。お風呂はもっとかかるのかと思ってたんだが・・・。あっ、腹減ってるのか?」


「いえ、違います。ところでその扉は・・・さっきは無かったと思うんですが・・・。」


「ああ、こっちが備品室でそっちが洗濯室。備品室の方には日常品置いといたから足りなくなったら勝手に持って行ってくれ。洗濯室の方は後で使いかたを教える。」


「はぁ・・・分かりました。ところでなんとお呼びしたらいいですか?リアみたいにご主人様と呼んだ方が・・・。」


「今の俺は名無しだからなぁ。まぁ、そのうち決めたらそれで呼んでくれ。なんだったら決めてくれていいぞ。」


自分の名前を今日初めて会った私に決めさせるなんて、残念な人なのかもしれない。

私がそう思っていると壁に向いていた彼の前に扉があらわれた。

その扉に「食堂」を書かれた白い板をつけると、風呂から出たらご飯にするからリアの様子を見てきてくれと一言いい残し扉の中に入ってしまった。

私もリアの様子が気になったためリアの様子を見に行く。

部屋に入るとリアは素っ裸でベットに寝ていた。


「・・・リ~ア~、なにしてるの?そんな恰好して早く服着ちゃいなさい。」


「ん~シス。お風呂入ったら服着たくないの。だってゴワゴワだよ。」


それについてはリアの意見に賛成だ。

私も肌ざわりのいいタオルを使った後に自分の服に体を通した時、あまりの違いに戸惑ってしまった。


「我慢なさい。ご飯にするみたいだから早く着替えるの。」


ご飯という言葉でリアがぴょこんと起き出し着替えを始めた。

この子は人見知りなせいか頭が良すぎるせいか、こういった部分の差が激しい。


「どんな料理だった?」


「知らない。」


「奴隷のご飯だから残飯なのかな。」


「食べれるだけマシだと思わないとね。」


着替えたリアと大部屋に行くと彼はいなかった。


「えっ!なにこの扉?さっきは無かったのに!」


「あ~それね。彼がいきなり作ったの。片方が洗濯室でもう片方が備品室って言ってたわ。その後、そっちに扉作って中に入っちゃったの。」


私が「食堂」と書かれた扉を指差すとリアもつられてそっちを見た。


「どうするの?」


「・・・ノックしてみたら?」


少し悩んだが好奇心が勝ったのかリアが扉をノックする。

すぐに彼が顔を出し、中に入る様に促された。

中に入ると私達の部屋より大きい部屋で、中央にいくつもの椅子が置かれた重厚な机があった。


「ここは食堂だ。基本、飯はここで食う事にする。」


そう言いながら椅子に座る様に言われると目の前のテーブルに次々と料理が出された。

アイテムボックスだ!

冒険者や商人の憧れのスキル。

それもそのはず、アイテムボックス持ちが居るだけで探索にしろ商売にしろ、まるで効率が違ってくる。

出された料理はシチューのような物とサラダとパンだ。

それに何かの果汁を水で割ったもの。

香辛料がふんだんに使われた贅沢な料理は凄く美味しく私達は夢中で食べた。


「気に入ってくれたようで良かった。食べながら聞いて欲しい。俺はこのダンジョンのダンジョンマスターだ。」


聞き違いじゃなかった。

彼はこのダンジョンを統べる者なのだ。


「とは言ってもなり立てで常識すらよく分かっていない。君達には俺の常識のアドバイザー兼相談役として働いてもらう。」


「代わりと言っては何だが君達の安全と衣食住は保証しよう。ここまではいいか?」


リアを顔を見合わせコクコクと頷く。


「今日のところは食事のあと、備品室と洗濯室の説明をし自由にしてもらう。だが階段を昇ったりはするなよ。それで、2人からは何かあるか?要望ってことだが。」


「そ、そのお名前を聞いてもよろしいでしょうか?ご主人様?」


リアに彼の名前が無いのを言い忘れてた。


「シスにも言ったんだが、諸事情で名前が無い。そのうち決めるつもりだが、いい案があれば出してくれ。」


リアのきょとんとした後、こちらを見て来た。

言い忘れたのは、わざとじゃないんだから睨まなくてもいいだろう。


「そ、それじゃあ、希望なんですけど、服とか出来たら欲しいです。私達の服ってちょっとゴワゴワで・・・。」


リアがそう言うと彼が回り込んできて肩口や袖をつまんで調べていた。

彼に近づかれるだけで顔が火照っているのが分る。

リアも赤い顔をしている。


「スゲーな。柔道着みたい。服はこの後、とりあえずパジャマを渡す。普段着は明日だな。」


「あ、有難う御座います。それと・・・その・・・よ、夜伽などは・・・した方が・・・。」


ストレートすぎだ。

いや、私達は奴隷なんだ、覚悟は決めたはずだ。

小さいリアに負担をかけるわけにはいかない。

ここは私が率先して務めねば・・・。


「わ、私が夜伽をしよう。年は20を超えているが、戦士だし体力もある。しょ、処女だし、ご主人様のどんな要望にも応えてみせよう。」


リアが口を開けたまま私を見ている。

分かってる私に任せろ。


「シス!「初めに話した通り、君達を傷つけるつもりはない。それとも夜伽したいの?」」


私もリアも、そんなふしだらな女ではない。

墓穴を掘った・・・2人して赤い顔をしながら俯くと彼は話しを続けた。


「君達を解放する事は出来ないが、奴隷として扱うつもりは無いから安心して。」


その後、洗濯室と備品室の説明をされ、パジャマを渡された私達は今日は自由にしていいと言われて部屋に返された。





おまけ:リア視点


ご飯が終わった後、洗濯室と備品室の説明を聞き、パジャマを渡され部屋に戻された。

なんというか驚きの連続だった。

洗濯室には洗濯機と乾燥機という魔道具が置かれ、自動で洗濯をしてくれ、自動で乾燥までしてくれるのだ。

備品室には見た事の無いものばかり並んでいた。

お風呂で使ったシャンプーや石鹸は元より、小腹が空いたときに用にちょっとした食べ物や飲み物まで置かれていた。

部屋の中は広く、ご主人様は追々増やして行くので必要な物があったら言うように言っていた。

そして、渡されたパジャマ!

ピンク色の薄手の生地だが着心地がいい。

下着も脱いでそのまま地肌に着たが貴族が着る服のようだ。


ご主人様は自分の事を人類の敵だと言っていたが、本当にそうなのだろうか。

見た目は人族にしか見えないし、そ、そのなんて言うか・・・凄い美形だ・・・。

食堂で服を触られた時は顔が熱くなった。

よ、夜伽もご主人様が望むなら嫌じゃない。

そして、どうやらシスも同じ気持ちのようだ。

恥ずかしい思いをして聞いたのに横からかっさらわれた時は呆然とした。

シスはスタイルも良く、顔も美人さんだ。

特に胸が凄い。

本人はコンプレックスらしく、金属鎧で潰して隠しているが横からはみ出ているので隠されてはいないと思う。

この後、情報のすり合わせという事で、シスの部屋に集合する。

シスの気持ちを確かめねば・・・・。

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