魂の叫び
目覚めると次の日の昼すぎだった。
体の上に毛布が掛けられ誰もいない状況だ。
スクリーンにはロボから見渡した燃える木々が映り、地平の彼方まで燃えている。
そして、その足元では砂粒のような人魂がぴよんぴょん跳ねている姿が見える。
これは思ったより早くフィールド部分は終わるかもしれん。
調べると既にフィールド部分の3分の1ほどが焼けており、そのうちの半分は燃え尽きて燻ぶっている状態だ。
そして尚もロボは歩きまわりながら散発的に攻撃し放火をしている。
このまま範囲が広がり、燃える範囲が拡大するば、明日の昼くらいまでに森を丸裸に出来そうな気がする。
弾薬の使用量を確認すると1万発近く撃っているが、収納の腕輪1つにつき10万発の弾丸が詰められているため弾切れは起きないと思う。
このまま押し切れそうなので放置する事にした。
人魂達が全滅してもロボは大丈夫だろう。
家に戻ると皆は赤ちゃん部屋で井戸端会議の真最中だった。
寝た後の話を聞くと面白味も無く、特に何も起きなかったので、適当に解散したと言われた。
双子とお菊は昨日の影響からか以前買ってやったソフビのロボを片手に赤ちゃん達の注目を集めていた。
とりあえず嫁達には明日の昼くらいには進展がありそうなので興味があれば見に来るように言っておく。
部屋に来たのは子供組とダンマス組だけで、嫁達は赤ちゃん部屋にダークエルフは各自の仕事をしてる。
そうこうしてるうちにカグラの時と同じように1キロ四方のエリアだけが残った。
「前ならここから怪獣大決戦が始まったんだが、流石に今回は無いかな。」
そういうと目の前の地面が崩れ、巨大な手があらわれ、その縁を掴む。
ゆっくりと穴の中から顔を出したのはロボに匹敵する超巨大ゴーレムだ!
いいぞ!
これでまた面白いものが見れる。
興奮している子供組を尻目にシルキー達が嫁を呼びに走る。
俺はジュース等のノンアルコールの飲み物とお菓子類を急いでテーブルに並べ、真ん中の一番いいポジションで観戦する事にした。
両隣は子供組と元ダンマス組だ。
いい場所で見れるのは期待して待っていた者の特権だ。
嫁達と何故かダークエルフまで集まったが、今だ戦いは始まっていない。
俺が嫁が来るまで戦うのを止めていたせいもあるが、敵ゴーレムの動きがのろいせいだ。
以前、分析した通りゴーレムは制御系に問題があるため動き出すのに溜めがあり動き出しも遅く徐々に早くなるという性質を持つ。
そのため動きが単調で読みやすい。
元々剣の達人でロボの操作に慣れてきている竜牙兵相手では分が悪すぎるのだ。
それでも大剣の一発を受けて、胸にわずかなへこみを作っただけで立ち上がるところを見ると防御力は相当なものだ。
嫁とダークエルフが加わり一気にコアルーム内が黄色い声援で満たされる。
「それにしても、よく都合よくあんなゴーレムがいたな・・・ロボがいなかったらと思うとゾッとするぜ。」
「違いますよ、ご主人様。たぶんあれはご主人様のゴーレムを見て、急遽対抗するために作ったんだと思います。私もそうでしたから・・・」
なるほど・・・そう考えると辻褄が合う。
地上のモンスは200万の兵士を葬ったにしては脆弱だった。
本命を地下に逃して、時間を稼ぎ、あれを作ってたのか・・・。
だが、無駄な事だ、俺とお前のゴーレムの差は、最新鋭の専用機と型落ちの量産機くらいの差があるぞ。
「竜牙兵、そろそろ攻撃していいぞ!力の差をみせてやれ!!!」
ロボが大剣をフルスイングするとゴーレムが文字通り吹き飛んだ!
5~600メートルほど飛ばされ大きなへこみを腹に作ったがまだまだ元気だ。
そして、ロボが次の攻撃に出ようとした時、耳をつんざくような鳴き声と共に何かがあらわれた。
「蛇が飛んでるぞ!」
ミーシャがスクリーンを指差して叫ぶが、あれは龍だ!
西洋竜のようなずんぐりした体型では無く、東洋の龍に酷似した怪物それが3匹あらわれ、敵に加わった。
大きさは精々30メートルほどでたいしたことは無いが飛行しているのが厄介だ。
それが敵のゴーレムと連携しながら攻撃してくる。
「竜牙兵!龍は無視しろ!!敵ゴーレムに攻撃を集中しろ!!」
事実、ロボの防御力は高すぎて龍の攻撃はダメージを与えられない。
ゴーレムも同じだが、こちらは質量兵器として考えればダメージを与えられるかもしれない。
敵は増えたが実質1対1だ。
腹から追尾弾をバラまきながらゴーレムに攻撃を集中するロボ。
そのかいあって龍の1匹がズタズタになり光に返る。
喜びもつかの間、2匹の龍のうち元気な方の1匹がゴーレムの突進に合わせロボの頭部に巻き付いた。
「サンダーブ〇イク!!!!」
俺の叫びと同時にロボの頭部が光り輝き角が爆発、それに巻き込まれた龍もズタズタになり光に返る。
「ブレストフ〇イヤー!!!!!」
続く叫びにロボ最大の攻撃がゴーレムを襲う。
自身を盾にと射線に躍り込んだ龍を一瞬で蒸発させ、ゴーレムを上下で切り裂いた。
前のめりに倒れる下半身と後ろにこぼれる上半身。
下半身をヤクザキックで吹っ飛ばし、尚ももがく上半身に全力で質量兵器の大剣が振り下ろされる。
執拗に繰り返される振り下ろしに真っ二つになるとゴーレムも光に返った。
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俺のロボの完全勝利だ!!!




