子供は何でも真似したがる
臭くなったゴルドが物凄い不評だ。
風呂に入っただけでは臭いがとれず、辺り一面にドリアンの匂いをまき散らしている。
オーク相手には無類の強さを発揮するかもしれんはキースの談だが、そんなに臭けりゃたしかにそうかもしれん。
今日も囚人達を連れてやってきているが、どちらかというと死刑囚達がゴルドから逃げるように近づかない。
そのため、どの店からも出禁をくらい、王城からも臭いがとれるまで登城禁止を言い渡されているらしい。
「友よ、何故、神は私にこのような試練を与えるのだろうか?」
「それはお前が真なる勇者だからじゃないか。」
間接的にその試練を与えたのは俺だが、それは黙っている。
「記憶が全く無いのだが・・・私は強かったか?」
すぐに閉じ込めたからさっぱり分らない。
だが、俺は知っている。
こういう時は相手が喜ぶ事を言ってやるのが大人の対応なのだ。
「ああ、そうだな。やっかいな相手であったのは間違いない。」
「そうか・・・。」
どうやら満足したようだ。
まだ、気落ちしてるからしばらくは大人しいだろうが、そのうち事件を起こす事は間違いない。
生暖かい目で見守ってやろう。
「臭い勇者は帰ったのか?」
珍しくチビ助がコアルームに来た。
「キョウカが落ち込んでおる。お主がなんとかせい。」
それはお前が憤怒の勇者だとか言うからだろう。
ゴルドと同列に挙げられたキョウカの落胆ぶりは凄く今も落ち込んでいる。
仕方が無いので話してみる事にする。
憤怒だろうが嫉妬だろうが、もう関係無いのに女々しい事だ。
最近のキョウカは赤ちゃん部屋か自分の部屋に閉じこもっているかのどっちかだ。
赤ちゃん部屋を覗いたがシルキー達とお腹の大きくなりだしたダークなエルフ達しかいなかった。
コンコンと扉をノックするが返事は無い。
「入るぞ。」
部屋に入ると布団にくるまって体育座りして顔だけ出してるキョウカがいた。
「ふぅ~・・・・皆心配してるぞ。部屋から出たらどうだ?」
ふるふると顔を振る。
結構重症だ。
俺も布団に滑り込んで後ろからキョウカを抱き締める。
「憤怒の勇者って言われた事が気になるのか?」
「・・・・・・・。」
「じゃあ、別な勇者を目指したらどうだ?」
「べ、別な勇者?」
「淑女とか・・エレガントとか・・エレガントは違うか・・なんか高笑いとかしそうなイメージだし。こう大和撫子みたいなの目指せばいいんじゃね。」
「どうしたらいいかな?・・・」
「とりあえず、お淑やかな女性的な事してみたらどうだ?生け花とかお茶とかさ。教えてくれる人がいないから教材はビデオになるが、この世界には第一人者がいないから即家元名乗ってもいいはずだ。」
「・・・・やってみる。」
「あと料理もいいんじゃね?お前料理得意なんだし。」
食ったのはカレーしか無いが不味くはなかった。
もっともカレーを不味く作れたらそれは一種の才能だが・・・。
その日からキョウカは部屋を出るようになった。
相変わらず行動力だけは抜けている。
次の日、一通りの教材ビデオに目を通し、キョウカが選んだのは料理と日本舞踊だ。
料理は元々基礎が出来てるためと、俺達という実験材料がいるため上達が分かるため選んだようだ。
日本舞踊の方は体を動かす勇者的な補正があるためだ。
1ヵ月ほど過ぎたある日、練習の成果を見せてもらう事になった。
料理の方は俺の希望で魚の煮つけと何かもう1~2品作ってもらい、その後練習した日本舞踊のお披露目だ。
キョウカが出してきた料理は金目の煮つけとほうれん草の白和え、そしてきんぴらごぼうだ。
俺的には金目の煮つけが最高だ。
皆は初めほうれん草の白和えときんぴらごぼうに警戒したが一口食べると味の虜になっていた。
その後は日本舞踊だがキョウカは練習用の短い曲の舞を踊っていた。
正直、良し悪しは分からないが、淀みなく舞っていたので多分、いい出来なのだろう。
赤ちゃん達にも見せたが立ち上がってお尻を振っていたのでウケたのだろうと思う。
皆に拍手され恥ずかし気にはにかむキョウカが印象的だった。
余談ではあるが双子達とお菊が日本舞踊に弟子入りした。
綺麗な着物を着たいだけかもしれないが、キョウカとしても弟子がいれば続けざる得ないため、いい流れだと思う。
そんなこんなでキョウカが立ち直りはじめた頃、スゲノ帝国の調査結果が俺の耳に入ってきた。
「スゲノ帝国での調査が終わりました。結論から言うと最悪に近いですね。未発見のダンジョンが発見されました。」
そうきたか・・・。
善神関連の施設でもあるのかと思ってたけど、違ったんだな。
「場所と構造は分かるか?」
「場所は森の最奥で山脈との境目辺りですね。構造は今までのダンジョンとは違うフィールド型です。
ダンジョンゲートで行くタイプでは無く。地上から入れます。」
もう、ほぼ確定じゃん。
廃棄された試作ダンジョンの一つだろ。
「そのダンジョンは俺に任せろ!危険だから近づくなよ。」
「言い難いのですが、既にスゲノ帝国が侵攻を決定しています。地上でもありますし万単位で軍隊を送り込むようです。」
「そうか・・・まぁ、それで上手くいくなら、それでいいが・・・・。」
「1週間後には先発部隊が侵攻を開始する予定です。ダラッダ国とピットン王国も自国の勇者を応援に出す事になっています。」
「知り合いがいるなら行くの止めさせとけよ。それってかなりヤバいダンジョンだぞ。」
カグラのところも俺のロボと戦えるだけのモンスがいたからな。
どんな化け物が潜んでいるか分らん。
「そうですか・・・実はキースが応援で行く事になっていまして・・・。」
「仮病でも何でも使わせて止めさせろ。」
「では、こちらの迷宮で大怪我をして治療中という事にしましょう。慣れている勇者ですら怪我をする迷宮となれば、他の貴族がこの迷宮へ来る牽制にもなります。」
その後、フィールドダンジョンへ侵攻した軍団は3日で壊滅し、3つの国併せて50万の軍勢と7人の勇者が亡くなった。
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拙い文章と内容ですが暇つぶしに楽しんで頂けたら幸いです。




