ダラダラ暮らしたい。
明けましておめでとうございます。
投稿のタイトルは私の願望です。
「友よ!これが王よりキョウカ宛の親書だ。それと、これがスー王女からキョウカ宛の手紙だ。」
小部屋でゴルドから渡された手紙を2通、手元に転送する。
どちらも蝋で封がしてあって読めない。
「内容は知ってるか?」
「王からの方は分からない。スー王女の方はチョコを何とか出来ないかだと思う。」
あの残念王女はかなりの数のチョコをゴルドから渡されているはずだ。
「結構な数のチョコ渡してるよな?食いすぎで死ぬんじゃねえのか。」
「そうだが、どうやらお茶会で貴族令嬢にばらまいてるらしい。単純・・・・純粋だから褒められるとすぐ渡しているようだ。」
「そっちは却下だな。それにしても死刑囚減らないな?この国大丈夫なのか?」
「先の魔族との戦いで兵士の数が半減したことが原因だ。治安が悪化しているのだよ。」
それは俺も一枚噛んでるが、あっちの完全な自業自得だ。
「とりあえず、手紙渡しておくよ。」
「頼むぞ、友よ」
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「ねぇ、旦那様・・ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
夕食時にキョウカが声をかけてきた。
それはいい。
だが、こいつが俺を旦那様呼びする時は注意が必要だ。
「なに?」
「あのね、私と一緒にダラッダ国の王城に顔を出してほしいなって思って・・・無理かな?」
「無理だな。そもそも俺は人類の敵だ!お前の言ってる事はただの自殺行為だ。それに俺は迷宮から出られない。ちなみにお前が行くのも許さない。」
「だよね。」
「用があるなら向こうに来いと言え!なんだったら、作成中のロボを王都で暴れさせて、そうするように仕向けてやろうか?
偽キング〇ドラも召喚出来るはずだから10頭ぐらい召喚して暴れさせたら完璧だろ。」
「う~ん、もしかしたらお願いするかも・・・。」
「手紙に何が書かれてたんだ。王女の方はチョコの催促だろ。王様は何を言ってきた?」
「う~んとね、私がこの世界に来た時半年くらいお世話になった人がいるんだけど、その人が年で引退するそうなのよ。それで結構偉い人だから式典が開かれて出来れば出て欲しいって・・・。」
「ビデオレターでも届けたらどうだ?受け答えは出来ないがそれでお前からの言葉は伝えられるだろ。タカトとアイカの顔も見せられるぞ。」
「それが無難かしら?」
「まぁ、一番の妥協案だろうな。」
「じゃあ、あんたも旦那様として一言挨拶してよね。私の恩人なんだから!」
「わかったから、いきり立つな。さっさと飯を食え」
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ゴルドにキョウカの書いた断りの手紙を渡し、当日ビデオレターを持って行ってくれるように頼んだ。
「任せたまえ、私は聖職者だが実家は町の電気屋でね。簡単な電気工事なら出来るくらいの知識はあるんだ。機械の操作などお手の物だよ。」
聖職者と言われるより信じやすいな。
今度から電気屋だったって言えばいいのに。
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夕食後にガッツリメイクとドレスアップしたキョウカがビデオの前に陣取り、ビデオ撮影を開始する。
皆も始めてみる機械に興味津々で見学に来ている。
キョウカに聞いたが引退するのは宮廷魔術師の副長を務めていたメリックさんというお婆さんで、キョウカに雷魔法を教えてくれたのだそうだ。
引退して田舎に引き籠るらしい。
キョウカが感謝の言葉を語り、思い余って泣き出してしまう。
その後、タカトとアイカが紹介され、最後に俺が紹介され俺も一言言葉を送り終わりになる。
俺もタキシードモドキの服をきせられ、メイクされそうになったが、メイクだけは断固拒否し撮影に臨んだ。
終わってから問題が無いか見直していると、皆が驚きの声をあげる。
進んだ科学は魔法と区別が付かないと言われていたが、その通りなのだろう。
何にせよ、終わったのでゴルドに機材と念のためのガソリン発電機とガソリンを渡し、後を頼んだ。
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式典は無事行われ、ゴルドが失踪した。
何を言っているのか分からないと思うが、俺も分からない。
分かってる事は、式典が無事終了した事と、その直後にゴルドがいなくなった事だ。
カージャが来て教えてくれたが、式典の方はつつがなく終わり、キョウカのビデオレターもその場で流されたそうだ。
当初、メリック婆さんだけに見せる予定だったビデオレターは物珍しさから、式典の最後で流され、その責任者に抜擢されたゴルドは張り切っていた。
そして、式典が進み流されるビデオレター。
勇者の世界の技術という事でかなり注目を集めたそうだ。
「そういえば、神が映像として初めてお目見えになっていましたが、宜しかったのですか?貴族令嬢達が随分騒いでいましたよ。」
そういや、そうだっけ。
こいつらといつも話してるから、すっかり顔見知りの気がしてた。
「小部屋の映像は一方通行だからな。すっかり顔見知りの気がしてたが・・・。」
「そうですね。私もそんな気がしていました。」
「それで、ゴルドはどうなったんだ?また誰かに捕まってると思うか?」
「分かりません。ですが手紙すらなく消えたという事は攫われた可能性が高いと思います。」
「腐っても勇者だし、悪運も強いから平気そうに感じるがちょっと捕まりすぎじゃないか?」
「確かにそうですね。いい薬ですし、捕まっていない可能性もあるため、しばらく放置します。」
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夕飯時にゴルドの話を皆にすると誰も心配していなかった。
キョウカはそんな事よりちゃんとビデオレターを見せられたかどうかの方が重要だと俺に詰め寄りイキっていた。
「ところで少し相談したい事があるのだが・・・」
珍しくシスが相談したいと言ってきた。
言葉に含まれる真摯さに皆がシスの言葉を聞く体制に入る。
「私の気のせいかもしれないのだが・・・ダークエルフ達の人数が多い気がするんだが・・・。」
ダークエルフは現在3人の産婆と10人のエステシャンの13人が同じ階層に住んでいる。
そのうち3人が妊娠したので10人が何らかの仕事をしている。
俺は、アン、ボナ、ラキッシュ、エリスの顔と名前しか一致しない。
名前だけで言えばアミーの名前は覚えたが誰がアミーか分からない。
「気のせいじゃないのか?」
「う~ん・・・旦那様にそう言われるとそうかもしれない。」
シスも首を傾げるが自信が無いようで言葉が弱い。
まぁ、それよりようやく平和が戻ってきたので、しばらくのんびりしようと思う。
「また、皆で海にでも行こうか?赤ちゃん達もつれてさ。食事の支度はシルキー達に任せればいいし、のんびりしようぜ。」
「いいわね、それ。タカトやアイカに海を見せましょう。赤ちゃん用のプール持って行きましょう。」
皆も海で遊ぶのは賛成のようだ。
もう、のんびりダラダラ暮らしたい。




