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謎の生物

ゴルドが仕事に復帰し1ヵ月、赤ちゃん部屋の赤ちゃん達がトテトテ歩くようになっていた。

しゃべれる言葉も増えてきて騒がしい。

ギスギスしていた、アンとエリスも2人が妊娠したらそれも終わり、逆にボナが少しおっかない。

ダークエルフ組は3人妊娠した時点で、仕事に支障が出るとマズイのでそういう行為はしない事になった。

ちなみにもう1人はラキッシュで、妊娠が分った時は泣いて喜んでくれた彼女には少し思うところがある。


赤ちゃん組ではローズがその身体能力故かリーダーシップを発揮し率いている。

俺としては唯一の男であるタカトに期待しているのだが、キョウカが甘やかすので何かあるとすぐにキョウカのところへ逃げるようになった。

ゴルドの様にならないか心配である。


現実逃避はそれぐらいにして俺は奴等を追った。

俺が最近また減る様になったHPを回復するため、お気に入りの昼寝ポイントへ訪れた時だ。

そこに3匹?の何かがいた。


何かというのは何か分からないからだ。

あんなモンスは召喚した覚えが無い。

一言でいいあらわすなら人化した人参だが、ニンジン部分が太く人参と大根のハイブリッドのような太さだが・・・。


それが3匹、おれのお昼寝ポイントを占拠し寝そべっていたのだ。

唖然とする俺を尻目に見られている事に気が付いた大根達は苦労して起き上がると頭の草を揺らしながら逃げ出した。

だが如何せん体も小さく短足だ。

赤ちゃんより遅い歩みで時折コケながら逃げ出したのだから、俺の目から逃れる事など出来るはずが無い。


時々振り向いてこちらを確認しているが、そんな暇があるならわき目も振らずに逃げるべきだ。

ようやく視界から消えた奴等だが、5歩も歩くとまた見えてくる。

ヨチヨチ懸命に逃げている。

方向的に俺の家の方だ。

誰かがペットとして飼っているのか。

室内で見た事が無い以上、候補はダークエルフ共しかいない。


案の定奴等は家の裏手に周り、ダークエルフの社員寮の方に進む。

そして、薬草を育てるとかいう名目で作った畑に逃げ込んだ。

目を凝らすとその片隅に奴等頭についていた葉っぱらしきものが揺らめいている。


「主様?どうなされました?」


俺が謎の生物を観察していると後ろから声がかかった。

ミーシャといい、こいつらといい本当に気配を隠して近づくのが上手い。

この俺に毛ほども悟られないとはたいしたものだ。

おまけに皆似たような顔と服装だから主要な者しか分からない。


「ああ、あたしはアミーですよ。主様。」


俺が無言でいると自己紹介をしてくれた。

当初は名すら覚えてもらえないと沈んでいた彼女らだが、俺の性質だと分かると積極的に名乗ってくれるようになった。

俺がそのまま無言で前方に揺れる葉を指差すと大きく頷き、分ったというような仕草をする。


「あれですか・・・一応、ダークエルフ族の秘術に関するものなんですが・・・あれはマンドレイクの亜種なんです。

マンドレイクとドリアードのちょうど中間・・・かなりマンドレイクよりですが、他のマンドレイクと違って、ああやって移動が出来るんです。

その分、薬効は凄くてあれの葉は状態異常無効のスキルすら弱体化させるんですよ。」


なんちゅう物騒な奴等だ。

組み合わせれば毒の効かない敵にも有効じゃないか。


「あれは、バストアップと垂れないようにする秘薬を作るのには欠かせません。」


「えっ!それって本当の話だったのか?」


「ひど~い、本当ですよ。信じて下さい、主様~!」


アミーが俺を責めながら、しなだれかかって来たので受け止める。

彼女らは種族柄なのかスキンシップが多い。


「あ、でも~子供には効かずに少し幻覚が見えるくらいですよ。」


「幻覚?」


「胸が大きくなった幻覚です。そこまで大きくなったようには見えないはずですが、自分の願望が見えるようになるんです。」


「お、男に使った場合は?」


「なんでしょうね。今度、主様が使ってみますか?」


「絶対嫌だ!」


そもそも、エステに行くのも嫌だったんだ。

誰がまた行くか。


「ちなみに奴等は害は無いのか?」


「ありません、スライムより弱いです。動きが遅いのにあちこち動くせいで、すぐ食べられちゃって自然ではほとんど見かけないんですよ。」


あの動きの遅さなら、そうだろうな。

自然の中にも稀にいるという事自体が奇跡だろう。


俺はアミーと別れて双子を探した。

例の幻覚というキーワードが頭を離れないせいだ。

昼寝ポイントにいなかったから、調合部屋か赤ちゃん部屋だろう。

調合部屋に行くと誰もいない。

これで候補は赤ちゃん部屋しかない。


赤ちゃん部屋に行くと嫁と子供達の他にアリスとカグラも来ていた。

アリスはいつものように無表情だったが、カグラは赤ちゃん達にメロメロにされていた。


双子はすぐに見つかった。

メロンのそばにお菊と3人でおり、しきりに何かの単語を言っている。


「魔乳。」


「魔乳。」


メロンに魔乳という単語を教えているようだ。

胸を張りながら言っている所をみると、自分達がそうだと教えているのかもしれない。


「おい、お前等に聞きたいんだが、本当に胸は大きくなったのか?」


無言で頷く双子と、わけが分らず口を真一文字にするお菊。


「ちょっと自分の胸の位置をこう手でなぞってみてくれ。」


俺が自分の胸の前で空気を撫でるように手を動かし手本を見せる。

双子達が前へならいのように両手を前にかかげ、手の届くめい一杯の距離で胸に円を描く。


その大きさなら胸囲が身長を上回るだろが!!!

完全に幻覚の虜になってる。

雰囲気を察したのか嫁達も近づいてくる。


「どうしたの?」


「ダークエルフの胸を大きくする秘薬だが子供が使うと幻覚が見える時があるそうだ。」


「えっ!じゃあ、ザキちゃんとルドちゃんって・・・。」


「完全に幻覚にハマってる。自分の願望サイズの胸になったと思っている。」


嫁達の前でもう一度確認する。

同じ様に前へならいのようにめい一杯、自分達の手を動かす双子。


「そんなに大きければ立って歩けないでしょ。」


キョウカが頓珍漢な事を言うが、それよりこの幻覚がいつ切れるかの方が重要だと思う。


「主様、幻覚を見せるといっても無害なものです。しばらくすれば幻覚も見なくなるからそっとしておくのが一番です。」


珍しく引込み思案なラキッシュが教えてくれた。

嫁達と相談の結果、今後は経過を見守る事にし、双子のエステでは秘薬を禁止とする事が決定した。


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