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伝説の男

ダークエルフが居付いて3ヵ月後、ついにゴルドが帰還した。


その日、侵入者警報が鳴り響く中、俺がコアルームに急ぐとスクリーンに見慣れない、揃いの鎧を着た男たちが集結していた。

既に2度見た光景で、心の中では3度目があるかもと思いながら、そこまでゴルドは馬鹿じゃないと思っていた。

だが、期待を裏切らない男ゴルドはやってくれた。


ロープでぐるぐる巻きにされた状態で、子供にケツを蹴り上げられながの堂々の入場だ!

どこかの国の王女じゃないのは減点材料だが、奴は生きてさえいればこれからも捕まるだろう。

テンプレの如く並んだ騎士に中年騎士が声をかけ、テンプレの如く3人で小部屋に入ってくる。


「ゴルド、よく戻ったな。」


「友よ・・・すまん・・・捕まった・・・・。」


大丈夫、想定内だ。


「それで、お前等はどこの誰だ?」


「私はピットン王国の第四王女ピアだ!」


男の子だと思っていたが王女なのか!

幼すぎて分からなかったぜ。

これでゴルドの減点は無しだ。


「パーフェクトだ、ゴルド!それでゴルドは何をしたんだ?」


「我が王国内で山賊の真似事をしておったのだ!」


必死で首を振るゴルドが見える。

俺が思うにゴルドの実力や腹黒さ、それに臆病さと有るか分からない自尊心を考えると7対3で白だ。

下着は盗めるが無実の人を殺せる人間ではない。


「本人は何と言ってる?」


「本人は違うと言っている。しかし実際に被害が出ておるのだからその弁は通らぬ。」


小さい割には意外にしっかりしてるな。


「ふむ・・・それで、何故ここへ連れてきた?その話が本当ならダラッダ国へねじ込む話じゃないのか?」


「むろん、国としての抗議はした。しかし、こやつは死刑囚管理の役職を得て、

現在はこの迷宮におるキョウカとかいう女勇者の部下扱いだそうだ。

ダラッダ国としては関知していないと言われたのだ。」


ダラッダ国に切られか。

それとも本当にそうなのか・・・。


「本来なら首を落とすはずだった、スーお姉様の関係者だから、こうして話を聞きにきたのだ。ありがたく思え!」


スーお姉様だと・・・あの残念王女を・・・。

見た目以外王女とは思えんあの馬鹿女を、お姉様と呼ぶこいつも残念な部類なのかもしれない。


「で、どうしたいんだ?賠償金でも欲しいのか?」


「賠償金はむろんだが、話を聞きに来たと言ったはずだ!女勇者を連れてまいれ!」


「今、連れてくる。少し待っててもらっていいか?事情を説明してだから30分~1時間程度かかるかもしれない。」


「そのくらいなら良かろう。だが妙な真似はするなよ。」


「そちらもな。」


一旦、コンタクトを終わりにしてキョウカを呼びに行く。

無論、話の内容はお笑い勇者ゴルドの奇跡の捕縛劇についてだ。

話すと呆れ顔のキョウカがついて来た。

俺は道すがら奇跡の男について熱く語り、あの男は生かしておくべきだとキョウカに説いた。

戦国武将の思考回路を持つ女だから、いきなり腹を切れとか言いだされると困る。


コアルームでスクリーンを見ると縛られてはいるが小突かれたりはしていない。

無駄な暴力は加えられていないようだ。


「え~と・・お前、名前何だっけ?王国の王女だよな?」


「私はピットン王国の第四王女ピアだ!!!」


そうだった。

どうでもいい事はすぐ忘れる。


「すまん、すまん。ほらキョウカを連れてきたぞ。」


「お初にお目にかかります。勇者のキョウカと申します。私にお話を聞きたいとの仰せですが、ゴルドさんは失恋のために旅に出ていました。その間の事は分かりかねますが・・・。」


あれだけ言ったのに、こいつも容赦なくゴルドを切りやがった。


「まて、俺が詳しく説明する。ゴルドにはしばらく前に子爵家から・・・・・・・・・。」


「・・・それで子爵の二女がゴルドと結婚するくらいなら家を捨てると言い出し・・・・。」


「・・・と言ったわけで、ゴルドは置手紙を残し、自分探しの旅に出てたんだ。決して山賊の真似事をしていたわけじゃない。」


「お主の話は分かったが、実際に被害が出ておる。それについてはどう説明する!」


「まて、その前にゴルド、お前は今まで何をしていたんだ?」


「わ、私は彼女に振られた後、絶望のどん底にいた。だがこれも神の試練と思い、自分を見つめ直すための旅に出たのだ。

今まで行った事の無い場所で独りになりたく彷徨い、気付けばピットン王国の山中にいたのだ。

そこで自分を鍛え直し、この心の弱さに打ち勝とうと思って修行していたのだ。」


「それで何故、旅の商人達を襲ったのだ?」


「何度も言ってるようにそれは誤解だ!私は生活に必要な塩や消耗品を買おうと近づいたのだが、皆が荷物を置いていくのだ!私から何かを寄こせ等とは言った事は無い!」


「あ~・・・山賊だと思われたのか・・・。」


この一言で全ての誤解が解けた。


「ならば、情状酌量の余地はある。だが賠償金は支払ってもらうぞ。」


「なんでよ?誤解なら必要ないでしょ。お互い様なんだし。」


思わず口を挟むキョウカの中にはやはりおばさんがいると思う。


「賠償金は必要だろ。山賊に間違われたのは汚れた格好で近づいたゴルドの責任だ。まさか商人に命をかけて確認しろとは言えまい。」


「そうだな。私もそう思う。さらに今回は騎士団も出ており、国家間の話にまでなっている。」


やっぱり、子供の割にはしっかりしてるな。

実を取りにきやがった。


「その通りだ、ただ、話しがふくらんだ責任は王国の調査のずさんさにもある。

騎士団が動くという事は何度も同じ被害が届けられたという事だ。

それなら、一度も襲われていないのを不思議にも思わないのは怠慢ともとれる。

そして、それを良く調査もせずに国家間の問題にまで発展させた。・・・そうだろ?」


「むっ!そうかもしれない。」


「それで、そちらは賠償金はどの程度が妥当と考えている?」


「金貨1万枚が妥当と考えている。商人たちへの十分な補填と騎士団も動き、国としても動いている故に。」


「なるほど、それでその1万枚から王国の不手際分を引いたのが賠償金というわけか?」


「・・・其方はいくらが妥当だと考えている。」


「そうだな。商人達への補填は金貨1000枚もあれば十分だろう。

同じく、騎士団を動かしゴルドを捕らえるのに使った金額も同程度だろう。

つまり、金貨2000枚で済むところを、王国の不手際で1万枚にしろと言ってるわけだ。」


「そ、それは・・・」


「他にもあるぞ。お前、今回の件はいい勉強になっただろう。それこそ家庭教師では教えてもらえないような事ばかりだと思うが・・・違うか?」


「う・・む・・・。」


「だが、こちらとしては原因を作ったのはゴルドだし、王国としてはここまで話が大きくなれば国としてのメンツもあるだろう。そして、こちらは金が無いから物納にしてもらうひけ目がある。」


「むっ!」


「金貨4000枚相当の品でどうだ?」


「・・・・・・ふぅ・・・いいだろう。・・・・・其方は油断のならない御仁だな。」


「人類の敵に隙をみせるとは正気を疑うな。品物を用意する30分ほど待ってくれ。」


「心得た。」


よし、値切ったぜ!

やはり、子供だ。

まだまだ甘い。


「キョウカ、DPストアで金貨5000枚程度になるようにマジックアイテムを選んでくれ。

金貨1000枚程度の武器と防具も1つは入れて、後は状態異常防御のアクセと能力上昇のアクセで固めてくれ。」


「わかったわ。高額なポーション類も入れていいの?」


「そっちは1つか2つで頼む。」


「それと金貨5000枚相当なの?4000枚にしたんでしょ。」


「後で、難癖付けられるのを避けるためだ。」


「わかったわ。」



「約束したより金額的にだいぶ上なのだが・・・。」


「少ないよりいいだろ。気にせず持っていけ。それとゴルドは解放しろよ。」


「了解した。地上にでたら解放しよう。解放はするが我が国への入国は禁止となる。努々忘れぬようにな。」


「ああ、これはおまけだ。持っていけ。」


「チョコだ!!!」


「100枚ある。騎士たちに1枚づつやっておくのが賢いやり方だ。」


「うむ、ありがとう。」


「おい、おっさん!子供を連れ歩くのはこれっきりにしろ!

そいつにはいい教師をつけてやれ、あと3年もすればいい為政者になるぞ。」


目礼するおっさんを尻目にスクリーンを落とす。


「ねえ、なんか、今日のあんた優しくなかった?」


「機嫌が良かったからな。お前はいきなりゴルドを切り捨てるなよ。」


「失礼ね!そんな事してないでしょ!」


素で言ってたのかよ。

相変わらず恐ろしい女だ。

さて、うちに帰ろう。

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