出産
超短いですが入れときます。
初めに陣痛を迎えたのはリアだった。
大きなお腹で昼食後に皆と談笑していたら突然始まったのだ。
アンとボナがリアに付き、ラキッシュがシルキー達に指示を出し、鮮やかに準備が進められた。
他の嫁達と一緒に部屋の外で待つ。
ワタワタしながら、嫁達の腹に毛布をかけたり廊下を意味も無くうろついて時間を潰す。
自分ではもっと落ち着きがあると思っていたが、初めての子だ緊張するし何をしていいのか分からない。
「ちょっと~落ち着きなさいよ!」
キョウカに声をかけられ、ミーシャに笑われても気にもならない。
母子とも健康でいてくれたらそれでいい。
シスも親友の出産に思うところがあるらしく手が白くなるくらい握って祈っていた。
リアの出産が始まって2時間ほどが過ぎ、部屋から赤ん坊の泣き声があがった。
突進した俺は扉に阻まれ、リアの名を叫ぶ!
「主様、少し扉から離れてくれねば開けられぬ!」
中から怒気を含んだアンの声が飛び慌てて離れると扉が開けられた。
呆けたように中にはいるといた!
俺の子だ!
リアの横でボナに抱かれている。
憔悴しきったリアの笑顔に俺も笑顔で答えたと思う。
「主様、抱かれますか?首がすわってないのでこう気をつけて下さい。」
ボナから小さな命を受け取り、その温かさに目頭が熱くなる。
「女の子ですね。奥方様に似て美人になりますよ。」
それは間違いない。
きっとこの子は優しく美人でスタイル抜群な子に成長する。
男を連れてきたら必ず殺す!!
「ご主人様・・・がんばりました・・。」
「ありがとう、リア・・・俺の子を産んでくれて・・・ありがとう・・・。」
「リアとシスもお嫁さんなんだから、そろそろご主人様って言うのやめたら?」
「えっ?」
「いや、だから、旦那様でもシリアスでもあんたでも好きに呼んだらいいんじゃないの?」
「え、え~と・・・。」
「リアもシスも好きに呼んでくれ!だが、あんただけはキョウカだけで十分だ!」
「はい、旦那様・・・。」
「わ、私も旦那様と呼ぶぞ。」
「いいよ。」
「あたいはシリアスはシリアスって呼ぶ!」
「ああ、好きに呼べ。」
「主様、そろそろ母子とも休ませたいのですが、よろしいですか?」
「ああ、すまん。」
俺は小さな温もりをボナに返し、嫁達と一緒に退室した。
今日はアンとラキッシュがシルキー達と一緒についている事となった。
俺はいざという時のために買っておいたエリクサーを2本渡し、何かがあればすぐ俺を呼びにくるよう伝えた。
「名前、どうすんのよ。決まってるの?」
「ああ、リアの子は女の子の場合はメロンだ。可愛い名前だろ?」
「なんて言うかピッタリね。まさかシスの場合はスイカじゃないわよね。」
「残念ながら違う。」
翌日は子供組も含めてリアと赤ん坊を見舞った。
双子や座敷童は興味津々で見ていたが、チビ助とメメは赤ん坊より、リアの部屋にあった果物に興味を示した。
「もう大丈夫です。母子とも健康です。大事を取って1週間ほど寝ていれば回復しますが・・・」
「いや、いいや。リア、これ飲め。」
リアの目の前でエリクサーを開けて口元に近づける。
「えっ!ご、旦那様!これってエリクサー!」
「黙って飲め!」
リアの口に小さな小瓶を押し付け無理矢理飲ませた。
体が光りそれが収まるとキョトンとした顔のリアがいた。
そしてシルキーとダークエルフたちを集め1人につき2本づつエリクサーを配る。
「何かあったらすぐに使え!勿体ないとか思うな!これは命令だ!」
「あんた、何本持ってるのよ。」
俺のアイテムボックスの中には100本単位で入っている。
地球の砂糖が枯渇しても構わない覚悟で砂糖吸収を行っていたんだからな。
そのために砂糖吸収のための仕事部屋を作ったんだ。
もうこれでDPが足りないなんて事は無いぞ。
この3日後にシスが女の子を生み、その更に5日後にキョウカが双子の兄妹を生んだ。
どおりでキョウカの腹が皆より大きかったわけだ。
子供が大きいのかと思っていたが、まさか双子とは・・・。
双子の姉妹は新たな双子に口の端を引き攣らせながらいつまでも見ていた。
案外、自分達以外の双子が珍しいだけかもしれんが・・・。
生まれた赤ん坊はキョウカの男の子の方を天人、女の子の方を愛花リアの子はメロンでシスの子はパルディーヌと名付けた。
本当なら祝杯をあげたいところだが、お酒が大好きなミーシャが禁酒中のためそれはミーシャの子が生まれるまで取っておく事にした。
この世界に来て、本当に心の底から幸せだと思ったのは初めてかもしれない。
クソみたいな邪神だが少しだけ感謝してもいい気分になったのは秘密だ。




