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馬鹿の軍団


「そっちに逃げたぞ!」


「きゃ!」


「見くびるな、早いぞ!」



産婆の3人がやってきて3日後、俺は独りで風呂に入っていた。

大部屋を拡張するとともに温泉の方も拡張し、ちょっとしたスパランド並みの規模にしていたのだ。

とは言っても仕切られてるわけでは無く、広い部屋の中に各種風呂が置かれているのだが・・・。


俺はそこの一角にある岩風呂で最近の日課のはだか酒をしていた。

独り気ままに生きるスタイルがこれほど心地いいとは思わなかった。

完全なる自由なのだ。

朝好きな時に起きて好きな時間にご飯を食べ、自由気ままに時間を過ごし、嫁達のご機嫌取りに少し時間は使うが、それ以外は自由なのだ。

寝てもHPが減らないのが特にいい。

以前は昼寝は生きるための手段だったが今はしなくても平気なのだ。


「あれ?嫁達に使う時間と昼寝の時間を比べたら、嫁達に使う時間の方が長くないか?」


徐々に明らかになる事実に愕然としながらも、気を取り直し酒を楽しむことにする。


「あ~・・・気分いいなぁ・・・。この岩風呂せっかく雰囲気あるんだから天井より夜空のほうがいい気がする。」


独り言をブツブツ言いながら、止める者がいないことをいい事に風呂の改装に乗り出した。

ぐにゃりと空間が歪むと一瞬で夜空になる。

おあつらえ向きに月も綺麗に輝いており、本人的には大満足である。


冷めてきた徳利を岩のくぼみに固定し温泉で温めながら、体を冷まそうと風呂からあがる。

湯冷めしないように時折、体にお湯をかけ体をこすっていると背後から声がかかった。


「主様、お背中流させて頂きます。」


声がかかっただけでは無く背中に張り付かれた。


「なっ!!!」


振りほどいて振り返ると一糸まとわぬダークエルフの3人が胸を張ってたたずんでいる。

肌は浅黒いが褐色と言うほどでは無く日焼けしたというような感じが正しい。

リア並みの爆乳が2人とキョウカ並みの爆乳が1人、天をつくような胸を惜しげもなく晒している。


この俺に気取られる事無く背後をとるとはミーシャ並みか・・。

答えを言ってしまえば、本人は気配を探れるつもりだが、それが気のせいだけでなので、音さえ立てなければ簡単に背後をとられるのだ。


「今は俺が風呂に入っているんだ。出てけ!いや別な風呂にいけ!この風呂は貸し切りだ!」


前を隠しながら後ずさり距離を置こうとするシリアス。

堂々と出来るのは身体能力的に自分の方が強いと分っているためだ。

ジリジリと迫る3人を前に話は冒頭に戻る。





「くっ!何が起きている・・・・。」


3人を振り切り脱衣所の扉を開けるとポフッと煙が立ち込める。

息を止め突っ切るも体に力が入らず膝をついてしまったところを3人に囲まれた。


「奥方様方より主様のケアを頼まれております。」


仁王立ちのアンが言うと残り2人も首肯する。


「そ、それに我等が種族には男がおりません。主様のお情けを頂きたく・・・。」



そこまで聞くと目の前がグラグラしてきた・・・いや、グルグルか。

とにかく意識を失った俺は翌朝、3人のダークエルフに囲まれ自分のベットで目を覚ました。

言うまでもないが全員裸だ。




「主様・・・さ、昨夜は素敵でした。」


「主様は逞しいのですね。3人だと体がもたないかと思いました。」


「ふ、不束者ですが、宜しくお願いします。」


目を覚ましたアン、ボナ、ラキッシュが朝の挨拶なのかをして、いい笑顔を俺の部屋を後にする。

キョウカが何を言いだすか怖いが、3人の口ぶりから知っている可能性もあるし、なにより今は母体を興奮させたりしたくない。

流れに身を任せる事にして念のためDPでエリクサーを購入しておく。

エリクサーは部位欠損を含む体の怪我や病気全てを治してくれる伝説レベルの薬だ。

30~50ミリリットルの小瓶で100億DPの超高額商品だ。

これより高い薬はソーマという呪いすらも吹き飛ばす1000億DPの薬しかない。


そのエリクサーをポケットの中で握りしめながら朝食の席に向かう。

気分は最高裁で判決を受ける被告の気分だ。


ドキドキしなながら向かうとキョウカとシスはつわりで気分が悪そうにしている。

マズイ、機嫌が悪そうだ。

何食わぬ顔で席に座るとシルキー達が朝食を持ってきてくれた。

彼女等も完全に家に慣れ、家政婦として完璧に立ち回っている。

メメもごはんをくれる彼女らには懐いているので非常に住みやすい。


「おはよ。」


「おはよー・・・。」


「気分悪そうだな。まだ酷いのか?」


「時々ね。もうそろそろつわりも終わるはずだし、ピークは過ぎたから大丈夫よ。」


力なく笑うキョウカを見ると胸の奥がチクリとする。

俺は全然悪く無いのに何故、精神攻撃を受けねばならん。


「あ~・・言い忘れてたけど、3人は認めてるから。でも3人までよ。」


キョウカの物言いに手の平で転がされてる気がするのは気のせいだろうか。

とりあえず冷静なようなので安心する。

午前中は肉食獣のようなダークエルフを警戒して、子供達の遊びに付き合う事にした。


久々にみたら今はボール遊びがマイブームのようだ。

お菊を抱っこして胡坐で座りながら見ていると双子が20メートルくらい離れてゴムまりのようなものを投げ合っている。


「わ、儂に寄こすのじゃあぁあああ!!!」


その丁度中間あたりでチビ助が右往左往しながら双子が投げるボールを追いかけている。

あのチビ助は人の物を何でも欲しがる。

悪い癖だ。

我関せずで草を千切って食べているメメの方がよほど大人しくていい子だ。


お菊が興奮して胡坐の上で飛び跳ねるが、今のどこに興奮する要素があるのか謎だ。

しばらくすると双子からボールを渡されたチビ助が満足げに帰還する。

まるで自分の力でボールを奪ったかのようなドヤ顔だ。


そして、昼食を済ませ、昼寝に向かう子供をシルキー達に預けた後はゴルド達と駄弁った。

嫁達の妊娠を伝えた後、カージャとキースは祝福してくれたが、ゴルドだけは暗黒面に堕ちた黒い騎士のようになっていた。

最近になりようやく落ち着いて来ている。


ほとんど毎日くだらない事を話しているのだが、今日の話はちょっと違った。

なんでもカージャの奥さんと政治的に敵対している派閥の辺境伯がこの迷宮の管理に口を出そうとしているらしい。

今は王女の口添えでなんとか退けているが、状況は拮抗しているらしい。

しかも先の魔族との戦いで思ったより被害を出さずに退けられたせいで増長し、周辺国への出兵論も浮上しているとの事だ。


「今は抑えていますが、もしかしたら騒がせてしまうかもしれません。

なにせダンジョンゲートがあれば入ってこれますので、強引にやられてしまえば迷宮への侵入は止められないのです。」


カージャが心配そうに言うが俺の迷宮の備えは万全だ。

生きている限り7階層を超える事はできないだろう。


「一度好きにやらせて、皆殺しにしたらどうだ。その際、主犯格の馬鹿どもが迷宮に来るようにしてくれたら、俺の方で始末出来るし、それで手を出すのを諦めるんじゃないか。」


「う~む、あいつら欲深さと自己保全だけは一級品じゃからの。迷宮まで出てくるじゃろか?」


「前線に出れない腰抜け貴族には無理だと言って煽ればどうだ?そういった奴等はプライドも一級品だから出てこないか?」


「ならば断われん王女から言ってもらった方がいいのう。

当主と跡取り共が全て迷宮に行くことが条件じゃとでも言ってもらって忠誠を見せろと煽ってもらうか。」


「駄目なら駄目で、バカ貴族の私兵をすり潰せばいい。一応、冒険者や一時的な食客は禁止だと言えよ。機密が漏れるのがどうこう言って。」


「そうですね。関係の無い冒険者を巻き込まないためにも機密事項があるので入場する際は私達で入場者の照会を行うのを条件に入れましょう。」


「準備するから来る日と規模が分かったら教えてくれ。」


「分かりました。それと一時的に管理が離れたら、王女へのチョコの提供はストップさせます。」


「そうだな。下手に持っていると隠し持っていたとか言われる可能性もあるから気を付けろよ。」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・」







2ヶ月後


そのバカ貴族の派閥の子爵家の者が騎士500名兵士8000名で押しかけてきた。

あれほど言ったのに当主は来ずに嫡男の男が代理として来ている。


「いいか!この迷宮を制覇し我がプトル子爵家の名を世に知らしめるのだ!迷宮主を殺した者には褒美は思いのままだぞ!」


景気づけで鼓舞しているらしいが、内容は山賊のそれと大差ない。

そういった輩の方が俺も心置きなく抹殺出来る。

逃がさないよう4階層まで引き込んでから殺ろう。


子爵の軍勢は初めは斥候等を使い慎重に進んでいたが、それも2日、3日と日が経つにつれ緩慢になっていった。

1階層のG共は全て退避しており、7階層までは無人なのだ。

警戒する方がおかしいのだろう。

それでも最低限のノウハウは持っているらしく慎重に進み、1週間ほどで4階層にたどりついた。

各階層には500名づつの兵が常駐しており、兵站もおろそかにしていないので、優秀は優秀なのだろう。

更に1日ほど経ってから先頭集団が4階層の中頃をすぎたあたりで酸素濃度を1%に下げ、1階層は300憶のGが動き出した。

バタバタと人が倒れる中、1階層ではGに群がられ阿鼻叫喚の地獄絵図が誕生した。


威張っていた子爵家の嫡男らしき男は3階層にいたが無論助からず息を引き取り迷宮に吸収された。

2日ほど過ぎたあたりで連絡のつかない軍勢を不審に思い調査隊が来たが、2階層の中頃までくると急に引き返していった。

その更に3日後にカージャが訪れ、現在の状況を教えてくれた。


「失敗した子爵家の当主が主家である辺境伯家に泣きつき、軍勢を揃え迷宮制覇に乗り出す事になりました。

他に2つの子爵家と3つの男爵家が参加しそうです。規模的に20万人ほどの軍が動くことになりますね。」


「内訳はわかるか?」


「騎士が1万人ほどですが、ここの騎士は8割が例の役立たず共です。それに兵士のほうが17~18万で1万ほどが兵站を管理する補給部隊ですね。」


「時期は分かるか?」


「2ヵ月後と言いたいところですが、王女から責められているので1ヵ月もあればくるでしょう。短期決戦を狙い損害覚悟で攻めてきますよ。」


「こっちとしてはその方が都合がいい。もう少ししたら子供が生まれるからそれまでには片をつけたいんだ。」


「そうですね。お世継ぎが生まれるといいですが、こればっかりは授かりものです。」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・」









1ヶ月後


初めにきてたプトルとかいう子爵家の当主が総大将、辺境伯の嫡男がその下で約20万の大軍が迷宮に押し掛けた。

あまりにも多いので迷宮の1階層はその軍勢で埋まり、俺はこの状況でイレギュラーを解放したらどうなるかという好奇心を必死で抑えていた。

今回は7階層に先頭の部隊が到達したら酸素濃度を減らすつもりだ。

多分1回で半分は死ぬだろう。


この大部隊の進軍スピードは速かった。

初めの子爵家が1週間で4階層半ばだったのに対し、5日で6階層の半ばまで進み、さらにその歩を速めていた。

そして更に、半日ほどで先頭の部隊が7階層にたどり着いたので酸素濃度を下げた。


この罠だけは本当に凄い。

毒をまいているわけでは無いので感知できず、毒では無いので治す事も出来ない。

そしてしばらくその中にいたら脳がやられるから助かっても戦力にはならない。

いいことづくめの戦法だ。


そう思っていたが1グループその罠を物ともせずに進む一団がいる。

スクリーンで見て見ると冒険者らしき格好の奴等だ。

どうせ辺境伯辺りが保険で入れておいた高レベルの冒険者達だろう。

どうやって防いでいるか分からないが特に問題が無いようだ。


俺はエンを7階層の下り階段前に転送し迎え撃つ事にした。

エンを前に扇状に展開し陣形を整える冒険者達。

その数は6人。

俺は好奇心からどうやって罠を防いだか聞いてみる事にした。


「よお!お前等冒険者だろ。馬鹿の軍団に雇われたのか?」


「ふん!貴様がこの迷宮の主か!俺はアカツキのリーダー、ハクロウだ!なんの毒で騎士達を殺しやがった!お陰でこっちは大損だ!」


「何が損なんだ?」


「辺境伯の御曹司まで死んじまったから、お前の首を取らなきゃ俺達の首が飛ぶんだよ!」


「そうか・・・ところでどうやって抜けてきたんだ?毒が効かないのか?」


「さてな!話すと思うか?」


「好奇心から聞いただけだ。話したくないならそれでもいい。エン、殺れ!」


エンが一閃すると離れた位置にいた冒険者の首がまとめて2つ飛んだ。

その隙を逃さず、魔法使いらしき者から巨大な火の玉が飛ぶ。

ザキの魔法に劣らない大きさとスピードのそれをエンが刀を振ると十文字に切れ、その後ろの術者の首も飛ぶ。


あっという間に冒険者の数は半分になり、エンをその場から動かす事も出来ていない。


「化物かよ・・・。」


初めに話していたハクロウとかいう奴が目を見開いてエンを凝視している。

後は前衛らしき奴が2名と後衛で弓をかまえている奴が1名だけだ。


動けないでいる冒険者を前にエンがゆっくりと下げていた刀を上げる。

ツルツルしたゴーレムだからどこを見ているか分からない。

次の瞬間、手がブレると残り3人の首が落ちた。

相変わらず、何をしたか分からない。


どう考えても刀の届く距離では無いし、かといって衝撃破じみた物やカマイタチじみた物を発生させたようにも見えない。

不思議なエンの戦闘は俺に理解出来ないまま終わりを告げた。


この1度の罠で半数は死ぬだろうと思っていたら、1階層に残っていた駐屯部隊の兵士5000名と補給部隊の1万名以外全滅していた。

当然、馬鹿の軍団は撤退し俺は勝利を収めることが出来た。

ギリ書き上げました。

誤字脱字その他多いかもです。

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