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酒と女と酒

2日後


ゴルドが非戦闘派の魔族を連れてきた。

つれてきたのは犬の額に角の生えた所謂、獣人のような感じのやつだ。

そして異常に胴が長く手足が短い・・・ダックスフンドかよ。

ゴルドと一緒に小部屋に入ってキョロキョロしている。


「獣人と魔族の違いってなんだ?」


小声でキョウカに確認する。


「獣人だと人の顔にケモ耳よ。顔が獣なら魔族なのよ。角もあるし。」


獣人を見た事の無い俺にとってはどちらも同じにしか感じないが、どうやらそうらしい。


「ゴルド、そいつが代表か?」


「そうだ、友よ!彼が代表のアレクだ。見ての通り戦闘には向かない体型のせいで戦闘力は無いに等しい。」


「初めまして、迷宮主様。私が代表をさせて頂いてるアレクです。どうぞ私達をお救い下さい!」


いや、ダックスフンドって狩りで巣穴から獲物を追い出せるように手足を短くした犬だろ。

狩猟犬のはずだから、無理に2本足で立ってるから弱いだけで、本当は強いんじゃないか。


「保護対象は何名くらいいるんだ?」


「はい、全部で314名です。」


結構多いな。


「皆、魔王国へ戻るのは嫌だと言っています。どうぞ助けて下さい。」


う~ん、受け入れて平気だろうか?


「そういえば、ゴルド、俺のやった腕輪はつけてないのか?」


「ああ!友からもらった大事な腕輪だ、いつも大切にアイテムボックスの中にしまっているぞ!」


腕輪はつけていないだけか。

なら、まぁいいだろう。


「いいだろう。受け入れよう。お前達には2階層分の土地をくれてやろう。1階層は村を2階層は畑や畜産等で己が食い扶持を稼ぐがいい。」


「ありがとう、友よ!これで彼らに恩が返せる!」


「ありがとうございます。迷宮主様!」


「それでは、さっそく己が同胞を連れてくるがいい。ゴルドはそいつらの飼う鳥や豚、牛のまとまった購入を頼む。」


「心得た!すぐに揃えよう。」


「いえ、それは私の方で揃えましょう。領地も持たないゴルドが購入すると変に思われます。私なら何度購入しても言い訳がたちます。」


「そうじゃな、なら儂がしばらく1人で死刑囚の管理を行うから、ゴルドは保護する魔族をカージャが必要な物をそろえる事に集中すればいい。」


ゴルド達が帰って行ったのですぐに来ても大丈夫なように階層を追加する。

1階層から魔族しか通れない直通の通路を作っておいて不要な時は塞いでおこう。

ちょこちょこ追加してるから整理しておいた方がいいな。

今は・・・。


 1階層:Gの楽園(11階層への直通通路有り)

 2階層:酸素濃度1%の迷路

 3階層:酸素濃度1%の迷路

 4階層:酸素濃度1%の迷路

 5階層:酸素濃度1%の迷路

 6階層:酸素濃度1%の迷路

 7階層:酸素濃度1%の迷路

 8階層:オーク村

 9階層:召喚、ガチャ廃棄場

10階層:魔族の畑(草原)

11階層:魔族村(草原)

12階層:家庭菜園

13階層:コアルーム・大部屋・アリスの迷宮(闘技場のみ)

14階層:プライベートビーチ


だいたい3分の1が非戦闘階層か・・・。

いいのか悪いのかは分らんが少し独特な気がするな。

まぁ、困る事が起きたら考えよう。

魔族の畑には大量の土と肥料、それと果物の苗木をプレゼントして、しばらくドリアードを派遣しとこう。


夕飯時に嫁達に話し意見を聞く。


「わ、儂の神殿を作ってくれぇええ!!」


300名を超える避難民を受け入れる事を話すとチビ助が雄たけびをあげる。

どうやら信仰の力を我がものとしたいようだ。

子供に甘いキョウカがあっさりと承諾し、俺にはYESと言うしかない確認だけがきた。



そしてその避難民は3日後に大挙して押しかけて来た。

ある程度の道具やら食い物は持っているが皆、疲労の色が濃い。

避難民への話はキョウカがしてくれるというのでエンを護衛に丸投げする。

戻ってくると、水場と温泉を作ると言いだして遠慮せずにDPを使っていた。

やたらDPが減っていたので問いただすと家も作ったと白状した。

どうやら魔族の子供達もおり、それにほだされたようだ。


とりあえず1週間分の生鮮食品と3ヵ月分の小麦を渡し様子を見る事にした。

それと同時に神殿が魔族村の真ん中に建てられチビ助による洗脳のような宗教活動が始まっていた。

反乱起したりしないよな・・・。


その後はカージャが度々訪れ、牛、豚、鶏等から農工具や種や苗等を大量に置いて行ってくれた。

流石、領地持ちの子爵ともなれば金回りが違う。


3ヶ月もすぎると魔族村も落ち着きが出てきて、こちらが何かする必要もなくなってきた。

そもそも丸投げしていたため、アレク以外は知らないのだが、

下手に突いて仕事を振られたりするのは嫌なので、俺は貝のように口をつぐんでいた。



そして、事件はその日の夕飯時に起きた。

こういういい方をすると悪い事が起きた様に聞こえるが、まぁいいことだ・・・。

キョウカとシスとリアが懐妊した。

始めはリアが自身の体調を疑い検査したのがきっかけだったが、4人全員検査するとキョウカとシスも妊娠していたのだ。

まだ大きくないお腹に手を当て3人が笑顔で報告してくれた。

ミーシャは違ったが特に気にした風も無く、これでしばらく独り占め出来るとほくそ笑んでいるので平気だろう。

3人は抵抗したが今日からは絶対安静とし出産にむかってもらう。


嬉しい話の次は嫌な話だ。

キョウカ達が絶対安静となったので魔族の村の世話を俺がしなければならなくなった。

キョウカは頑なに自分がやると言っていたが妊婦を働かせるような鬼では無い。

それを言うと最後はキョウカも折れた。


「旦那様は威厳が足りないから、それをどうにかすべきよ!」


魔族の村に行くにあたりキョウカより受けた助言だ。

俺も女顔なのは正直気にくわない。

舐められないためにもゴーレムロボで乗り込むべきだろうか。


「頬当とかしたらどうかしら?」


頬当とは戦国武将等が兜と一緒に付ける目から下の部分のお面のようなものだ。

恐ろしい意匠で敵を怯ませると共に顔を守る防具でもある。

嫁達と一緒に一番恐ろし気な頬当を探す。


キョウカよりはこの世界の人から見たら恐ろしいと考えるものがいいだろうという事で、シスとリアが主体で選んでもらった。

ミーシャは興味がなく審査員側に周り、適当な寸票を言っていた。

ちなみに子供組に頬当ブームが訪れ、全員がお気に入りをしばらくつけるという珍事になった。

メメまでもが自らの意思かは分からないが頬当を付けて浮かんでいた。



魔族村視察当日


俺はシスと、リアがあり得ないと言っていた頬当をつけて向かった。

この頬当は天狗を模して造られており、鼻が馬鹿みたいに長く膨らんでいる。

牙などは種族によっては普通にあるので、このインパクトのある鼻で勝負したのだ。

子供組の4人とメメも勇ましく頬当を付け俺を先導する。

まずは神殿で顔合わせを兼ねて俺が挨拶をすることになった。


「皆の者!こ奴が我が下僕でありこの迷宮を管理する栄誉を与えられたシリアスじゃ。おこりん坊じゃから丁寧に扱うのじゃ。」


紹介なのか罵倒なのか分からない事をチビ助が喚き俺が挨拶をする。


「しばらくぶりだな!皆が壮健そうでなによりだ!妻のキョウカが懐妊したため、しばらく魔族村の仕事を離れる!

その間はこの俺が魔族村の面倒をみるので何かあったら言ってくるように!」


ビビらす為、全て大声で怒鳴る様に言ってやった。

全員が土下座するような勢いで頭を下げる。

俺の時代だ!

気分がいい!


「うむ!続いて魔族村村長アレクが話すのじゃ!」


「ははっ!本日は迷宮主様のご尊顔を拝謁できる栄誉を賜り、まことに有難う御座います。また奥方様方のご懐妊、おめでとうございます。

我等シリアス様のお情けで命をつないできた者と致しまして・・・・・・。」


・・・俺はチビ助に顎をしゃくる。


「そこまででよい!皆の者の感謝の意は充分伝わっておる!」


「分かりました。それでは本日はささやかながら感謝の意を伝えるべく宴の用意をしております。迷宮主様におきましては御笑納いたしていただければと思います。」


鷹揚に頷くと宴の準備が始まった。

これ、凄い気分いいな。

キョウカが良くやるのも分かる気がする。



俺を真ん中に上座に子供達が横に左右に並べられ、前方は偉そうなおっさん連中が固めて後方は若い連中が固まっている。

後ろの方に耳の長いエルフ?らしき奴等もいる肌が褐色だから、あれがダークエルフと言う奴等だろう。

何だかこっちを睨むような目で見ている。

いけ好かない連中だ。


「おい、チビ助。あそこの連中が俺を睨んでいるがなんか文句でもあるのか?」


「ん?ああ、ダークエルフの連中じゃな。戦える男どもは全て戦場に行ったが戻ってこず、女だけの集団になったからここにきた連中じゃ。

じゃが元から気位が高く美醜に酷く敏感なんじゃ。お主に手籠めにされると思うとるんじゃろ。キョウカがそう言って近づかないように言っておった。」


誰が手籠めにするか!

俺はそんな事をしたことは一度もないぞ!

激オコ状態だったため、横に座ったお菊に袖を引っ張られ、宴の準備が整ったのにようやく気付き、恐縮しているアレクに顎をしゃくり先を促す。


「では、本日は迷宮主様の健康と奥様方のご懐妊を祝い・・・。」


う~ん、腹が立つ!

キョウカもキョウカで俺を貶めるような真似をしやがって・・・。

気付くと既に子供達は料理とジュースを食べ始めていた。

とりあえず、俺も頂こう。

頬当が邪魔だな。

左右を見ると子供達は机の上に上向きで飾る様に大事に置いている。

作法など知らんが同じにしておけばいいだろう。

俺も天狗の頬当を外し机に置く。

改めて見ると凄い鼻だ。


用意されたどぶろくのような酒を一口やってみる。

癖が強いがそこまで不味くはないな。

地方の名物って感じの酒だ。


俺が酒を飲み干し、辺りを見回すと魔族の連中が目を見開いてこちらを見ている。

文句でも言われると思ったのか。

食事中の人の顔を眺めるのはあまりいいマナーじゃないぞ。


アレクが酒を注ぎに来た。

このダックスフンドは初め見た時より毛並みが良くなってる気がする。


「アレクだな。住むに何か不足はないか?」


「ははっ!昔から比べたらここは天国で御座います。これもひとえに迷宮主様のお陰で御座います。」


俺の気分を良くしてくれるから、こいつはいい奴だ。

っと、マズイ!料理を平らげテーブルに触手を伸ばしたメメをつかまえ、俺の料理を与える。


「すまんが、メメが料理を気に入ったようだ。お替りをもらえないか?」


アレクが差配するより早く、ダークエルフの女共が自分の料理を持って近づいてきた。

さっきは豆粒くらいの距離にいたはずなのに、いつの間に来やがった。


「迷宮主様、どうぞこちらをお召し上がり下さい。」


「いえ、私のをどうぞ。」


「私が食べさせて差し上げます。」


「なら、私はお酒のお酌を致します。」


5~6人にステレオで喚かれると何を言っているのか分からん。

食事を邪魔され怒ったメメが触手を振り回し、女共の尻をペチペチ叩きだした。

キャーキャー言いだすが、チビ助には効果抜群なのにこいつらには効いていないようだ。


「あいた!何故、儂が叩かれるのじゃ!」


勢いあまってチビ助もペチリと尻を叩かれ、こちらは痛みを感じている。


「お前、メメに嫌われてんじゃないのか?」


「ふん!そやつとはとうの昔に和解しとる。儂は勝てない戦いはしないのじゃ。」


それだとメメの方が強いってことか・・・。

アレクが女共を散らし、その日の宴はつつがなく終わった。


「ふぅ~・・・結構面倒だな・・・。」


「じゃろ?儂がしっかり手綱を握っておるから、あれで済んでるのじゃ。感謝しても良いぞ。」


「あ~、本当なら感謝するわ。」


「ほら、チビ共、家までもう少しだぞ。寝るのは歯を磨いてからねるんだ。ザキとルドはお姉ちゃんなんだから、お菊の面倒をちゃんとみてくれよ。」


「中々大変じゃろ。」


「そうだな・・・・、リアには感謝だな。」


子供部屋に4人を放り込んで久しぶりに1人でゆっくり風呂に入る。


「帰ってきたな。じゃあ、風呂で燗酒にして飲もうぜ!2人だしいいよな。」


俺の夜はまだ終わらない・・・・。

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